第2話 井戸端の囁き
翌朝の寺は、冷え切った空気に覆われていた。
井戸の前には警察の規制線が張られ、鑑識が残された血痕や足跡を丹念に調べている。
藤堂修一は命を取り留めたものの、意識は戻らず、病院へ搬送された。
倒れた状況から、単なる転倒事故とは考えにくい。寺の檀家衆は口々に囁き合い、古井戸の前に立つことすら恐れていた。
「やはり祟りや……武士の亡霊が出たんや」
「この井戸は封じられるべきやった」
その噂を耳にしながら、天城遼真は現場を観察していた。
――藤堂が握っていた紙片。“井戸の中、真実は”と書かれていた。
もしそれが遺書でないのなら、何を意味するのか。
「天城様」
声をかけてきたのは住職・雲水和尚だった。
「昨夜の件、どうお考えですかな」
「井戸そのものが、事件の鍵でしょう。ですが、それ以上に人の思惑が絡んでいるように思えます」
和尚は黙り込み、深い皺を刻んだ眉を寄せた。
その後、遼真は宿坊に集められた関係者に目を向けた。
◆登場人物(容疑者候補)
- 雲水和尚 …寺の住職。温和だが、井戸について語るのを避ける。
- 藤堂家の妻・藤堂佳代 …夫の倒れた夜、別室で休んでいたと証言。どこか冷ややかな態度。
- 寺の古老・川村喜兵衛 …幼少期から井戸を知る人物。亡霊の話を繰り返す。
- 考古学研究者・早乙女隼人 …取材のため滞在中。井戸の発掘を熱望しており、藤堂と衝突していた。
それぞれが井戸に関心を持ち、また藤堂に対して何らかの確執を抱えていた。
「昨夜、井戸の近くで人影を見たという方は?」
遼真の問いに、古老・川村が震える声で応じた。
「……見たんや。甲冑を着た武士の影を。井戸の中から這い出てきよった……」
場の空気が凍りつく。
若い研究者・早乙女は鼻で笑った。
「ただの見間違いですよ。井戸の中にあるのは史料と遺物。亡霊なんてナンセンスだ」
正反対の証言が飛び交う中、遼真はじっと井戸を見つめていた。
――亡霊か、仕組まれた幻か。
いずれにせよ、この井戸の底に“真実”が隠されているのは間違いない。
冷たい風が吹き抜け、井戸の蓋がぎしりと鳴った。
その不気味な響きが、人々の不安をさらに煽るのだった。
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