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第三話「中学時代の真相と影」



◆回想――軽井沢旅行の朝


まだ朝の光が柔らかい頃、天城家の居間には少女たちの弾む声が響いていた。

真理亜、中学三年生。彼女の友人である苑香、茜、弥生、秋音――五人の仲良しグループが、今日は初めての軽井沢旅行へと胸を躍らせていた。


「ねえ、これ持っていく?」

茜が手にしたのはおそろいの小さなポーチ。


「もちろん!」と弥生が答え、秋音も「旅行の記念だよね」と微笑んだ。


その中で、苑香だけが少し落ち着かない様子だった。荷物をまとめながら、何度も窓の外を気にする。


「苑香ちゃん、どうしたの?」

真理亜が首を傾げると、苑香は慌てて笑みを作った。

「ううん、なんでもない。ただ、ちょっと眠れなかっただけ」


だが、その笑みはどこか張りつめて見えた。


遼真はその朝、家政婦の初枝と一緒に玄関先で彼女たちを見送っていた。

「みんな、気をつけてな。軽井沢は涼しいけど、夜は寒いから」


「はい!」と友人たちは元気よく返事をしたが、苑香だけは小さく手を振ったきり、言葉を発しなかった。

初枝がふと彼女を見つめ、眉をひそめたのを遼真は覚えている。


「……苑香さん、少し顔色が悪いですね」

「……ああ、気のせいじゃないと思う」遼真は心の奥にざらついた違和感を残した。


その違和感は、やがて彼女が“行方不明”になった日からずっと消えなかった。



◆現在――軽井沢の夜


ホテルに戻った遼真は、静かなロビーで携帯を握りしめていた。真理亜は泣き疲れて眠ってしまい、美佐子と初枝が彼女を部屋で看ている。


深呼吸をしてから、父・輝政へ電話をかけた。


「父さん……苑香ちゃんのことだ。白骨遺体で見つかった」


電話の向こうで、一瞬の沈黙が走った。

「……そうか」

低い声で答えた父の響きには、深い衝撃がにじんでいた。


すぐに兄の隆明も電話口に加わった。

「苑香ちゃんって……あの、何度か家に遊びに来た子だよな。真理亜と一緒に」


「ああ。父さんも兄さんも覚えてるだろ? あの明るい笑顔の……」

遼真の声が震えた。


すると輝政が静かに言った。

「遼真、落ち着け。……実は、長野県警察本部長は私の古い友人だ。事情を説明しておく。明日、彼が直接そちらに来られるはずだ」


「本部長が……!?」

遼真は驚きに目を見開いた。


「玲子に伝えておけ。信頼できる人間だ。……君たちが独りで背負う必要はない」

父の声には、警察官としての覚悟と同時に、父親として子らを守ろうとする強さがあった。


遼真は深く頷き、すぐに玲子へ電話を入れた。

「姉さん……父さんが長野県警本部長に話を通してくれるって。明日、こちらに来られるそうだ」


受話器の向こうで、玲子は短く息をついた。

「……やはり父上が動いてくださったか。助かるわ」


「父さんとは旧知の仲みたいだ」

「ええ、私も一度だけ会ったことがある。本当に信頼できる人物よ」


遼真はほっとしながらも、心の奥にはまだ重たいものが残っていた。

――あの朝の苑香の表情。窓の外を気にしていた仕草。

それは偶然ではなく、何かの“予兆”だったのかもしれない。


そして、その真実を掘り起こす時が、ついに来たのだと実感していた。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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