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少女漫画あるある100小説  作者: 牧亜弓
あやの章
19/33

恋と進路とベンチの距離

文化祭の熱狂が過ぎ去って一週間。

秋の風が冷たくなりはじめたある放課後、翔とあやは公園のベンチに並んで座っていた。

木々の葉が風に舞い、彼女の髪がそのたびに揺れて、翔はそれを見ているだけで言葉を失っていた。


「ねぇ、翔くん。進路、どうするか決めた?」


「うーん、正直、まだ……。でも、舞台の仕事とか、演出とか、興味はある」


「そうなんだ」


あやは小さく頷いてから、自分のスカートの裾を見つめた。

そしてぽつりとつぶやく。


「私ね、東京の音大、受けようと思ってるの」


「東京?」


翔は驚いた。あやの夢は知っていたつもりだったけれど、それが現実味を帯びていることに、今になって気づいた。


「うん。本気で、歌の道、やってみたくて……。だから……」


翔は、続きを聞かなくてもわかっていた。


「だから、遠距離になるかもってこと?」


あやは静かに頷いた。


「そうか……応援するよ」


本心を押し込めるように、翔は笑ってみせた。


そこへ、涼からのLINEが届く。

「明日、話がある。屋上、放課後」


翔は画面を閉じると、あやに言った。


「俺、ちゃんと涼とも話す。三人で、変なままじゃ嫌だから」


あやは、ほっとしたように微笑んだ。

その笑顔を、翔はいつまでも覚えていた。


そして、翌日の放課後。

屋上には、三人がいた。

秋の風が強く吹いて、空は限りなく高かった。


「なぁ、そろそろ、はっきりさせないか?」

涼の声は落ち着いていたが、どこか震えていた。


あやは深呼吸して、一歩前へ出る。


「私、翔くんが好き。でも……涼くんのことも、大切。だから、ごめんなさい。選べないの、今は」


沈黙。風の音だけが、空を渡る。


翔は微笑んだ。


「じゃあ、待つよ。俺、今すぐ答えが欲しいわけじゃない。あやが決めたとき、それが答えだ」


涼も頷く。


「俺も、それでいい。でも、簡単には譲らねぇけどな」


三人は静かに笑った。

あの舞台の日の緊張も、今はもう遠い。


少女漫画あるあるその51:

「進路の話題が急に恋愛を加速させる」


少女漫画あるあるその52:

「ベンチに二人で座ると何かが始まる(or終わる)」


少女漫画あるあるその53:

「告白の先にある“保留”という選択肢」


少女漫画あるあるその54:

「三角関係、終わったと思ったら続く」


そして物語は、ついに最終章へ向かう。


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