秘密の演劇 二人の台本
文化祭が近づき、クラスでは出し物の準備が始まっていた。翔のクラスは「ロミオとジュリエット」の劇をやることに。あやはクラスの推薦でジュリエット役に抜擢され、ロミオ役には、なんと——転校生の涼が選ばれた。
「ま、マジか……」
翔は思わず机に頭をぶつけた。あやも戸惑いを隠せない。
涼は台本を手に、にこやかに言う。
「僕、本番に弱いから、あやちゃんといっぱい練習したいな」
その言葉の裏にあるものが、翔には見えていた。
翔は悔しさを噛みしめながらも、演出係として演劇に参加することにした。あやのそばに、少しでもいたかったから。
夕方、誰もいない体育館の舞台裏。涼とあやは発声練習の合間にふと話し出す。
「君さ、翔くんとどんな関係なの?」
涼の問いに、あやは言葉を詰まらせる。
「……まだ、わかんない。でも、大事な人」
その一言が、静かに涼の胸に突き刺さった。
リハーサルの日。ロミオがジュリエットに愛を告げる名シーン。
涼の視線が真っ直ぐあやに向けられる。
「俺は……君を本気で好きになったよ」
リハーサルなのに、涼の言葉はアドリブだった。
観客席で見ていた翔の拳が、静かに震えた。
その日の夜、翔はあやを呼び出した。
「……ちゃんと気持ち、言わせて。俺、お前のことが好きだ」
言葉は不器用で、でも真剣だった。あやはその場で何も答えられなかった。
少女漫画あるあるその39:
「文化祭の演劇で恋の三角関係が火を吹く」
少女漫画あるあるその40:
「アドリブ告白でドキドキ展開!」
少女漫画あるあるその41:
「練習のふりして距離が縮まる二人」
少女漫画あるあるその42:
「本番よりも、心のセリフが本物だった」
ジュリエットの答えはまだ出ていない。けれども舞台の幕は、もうすぐ上がる。