ターゲットNO.1 最強のチートキラー
「はい雑魚乙~」
「うーわwざこすぎwやめちまえよw」
「マジセンスねぇwww〇ねカスwww」
―――EPEX―――
RDS(Real Dive Shooting、通称RDS)では名の知れたゲーム。
プレイヤー総人口、50万人オーバーの超有名ゲームである。
男女問わず、プロゲーマーから配信者、老いも若きも名を連ねている。
しかし、それだけプレイヤー数が多ければ当然のように湧き出てくる存在がいる。
『チーター』
もはや有名ゲームの宿命といっても過言ではない存在かもしれない。
どれだけ運営側が対策をしてもまるでイタチごっこだ。
悪知恵というものはよく回るもので、日々あれやこれや手法を変えてチートは生まれてくる。
まるでウジ虫のようだ。
オートエイム、ウォールハック、無限リロード、無限体力・・・etc
ゲームの種類が変わればまだまだでてくるだろう。
本当にきりがない。
もはやゲーム上でチーターが存在せず、ゲームを正々堂々と楽しんでプレイすることなどできるのだろうか?
いーやできるね。
ていうか絶対に根絶やしにしてみせる。
俺はこういうズルする奴らが大っ嫌いなんだ!!
つーことで。
これはそんなチーターを根絶やしにしている俺の物語である。
エピローグおわり。
―――EPEX管理会社の一室―――
「いやぁ今日もチーターが元気に暴れてんなぁ」
「本当に困ったものだよ…」
「とくにこいつ、ID:oretueeeeは本当に手を焼いているんだ…」
「どれだけBANしても新規のアカウントをすぐに用意してゲーム内を荒らすんだ。」
「こちらもずっと見張っているわけにもいかなくて常に後手後手でね」
「そんなわけで君に助力をお願いしたいんだ。」
運営の人の顔の蒼白さよ。
よほどこの悪質プレイヤーに悩まされているんだろうな。
もはや死相すら見える。
「おk、おk。まかせてよ。」
「どうせこのまま次のラウンドも開始するでしょこいつ。」
「俺も同じラウンドに混ぜてくれりゃあとはばっちりヤッテあげるよ」
「それは大助かりなんだが…本当に大丈夫なのかい?」
運営の人の怪訝な顔がこちらを覗いてくる。
「なにがぁ?」
「いや、なにがぁ?って…!」
「相手はチーターだよ?こいつが使っているのは今はウォールハックだけだけど」
「実際目撃証言ではオートエイムも使ってたっていうし…」
「追い込まれたら絶対ほかのチートも同時使用してくるよ?!」
まぁ十中八九でしょうね。
追い込まれたネズミは何とやら。
使ってこないわけがない。
「うーん…まぁ大丈夫っしょw大船に乗った気でいてよw」
「いやそんな!不安しか残ら…!」
「ってあぁ!ラウンドが終わった!やっぱりそのまま始める気だ!」
「よし!予想通り!」
「じゃあとは同じラウンドにいれてくれたらゆっくりしていってね!」
「いや!ゆっくりできるかぁぁぁぁぁ!!」
さてさて…
後ろで運営さんが叫んでいますがこっからは本気で安心してほしい。
なにせこの…ブギーマンが狩るからさ。
Real Dive開始――――
―――ラウンド開始から20分経過―――
「あーマジつまんねー全員ザコすぎー」
「てか俺が強すぎ?wwwプロゲーマーも余裕じゃね?www」
「てかプロもザコだし、プロゲーマーなんて大したことないじゃんwww」
「へぇ…言うねぇ…」
「じゃ、俺とも戦ってよ?」
「は?だれだてめぇ?きっしょ」
(いやつかなんだこいつ?どっから現れた?)
(このスキンもみたことねーし、運営か?)
「君相当自信あるみたいじゃん?プロ余裕wwwみたいな?」
「俺とも戦ってほしいなぁ」
「はぁ?wまじきもw」
「てか勝手にボイチャつないできて何様?まじうざいんだけど?」
「いやぁあんだけ盛大にあれやこれやと暴言吐きながらキルしてて、勝手につなぐなは無理くない?」
「それともなにかい?負けるのが怖いのかい?」
「は?まじなにこいつ」
「調子乗りすぎだろ。うざ。」
「いいよ。余裕で殺してやるからかかってこいよ。」
「いいねぇ…そうこなくちゃ…」
「…The Boogieman is Coming…!」
―――戦闘開始から10分経過―――
「…な…なんだよ、あいつ…!?」
「ちくしょうがぁ!チートなんて使ってぇ!ずるいぞぉ!!!!」
―――EPEX管理会社の一室―――
(いやどの口が言ってるんだ。草。)
久々に笑みがこぼれてしまった。
あ、いや運営として公平な立場としてこれはよくない。
だが笑いたくもなる。
チートを実際に使っている人間とチートを使っていない人間の戦いでここまでの差が開くとは…!
戦闘は終始ブギーマンの優勢…というか劣勢の場面などない。
戦闘開始からウォールハックでブギーマンの位置を把握していたoretueeeeだが、弾はかすることもなく当たらず避けられる。
ブギーマンはその間も攻撃することなく避け続け、煽りに煽りを重ね続けた。
とうとう痺れとイライラが頂点に達したのか、予想通り他のチートも使用し始めたのだ。
次に使用を開始したのはやはりオートエイムだった。
オートエイムを使用し始めたことでまた調子が戻り始めたoretueeeeだったが、すぐに口を紡ぐことになる。
ブギーマンに弾が当たらないのだ。
すべて寸でのところで遮蔽物へと吸い込まれていく。
なんという反射神経と身のこなしなのだろう。
弾を跳ねるように避け、少しづつ近づいてきて遊ぶように一撃だけ当てて離脱。
それを短い間隔で延々と繰り返すのだ。
最初こそまぐれまぐれと笑っていたoretueeeeだったが、回数が重なるともはやまぐれなどではないと馬鹿でも気づくのだろう。
笑みは消え、もはや支離滅裂な暴言と弾の嵐である。
これが本当の荒らしってか?んなあほな。
―――EPEX内―――
「くそがぁぁぁぁぁ!!!」
「正々堂々正面からたたかえええええぇえぇぇえぇえ!!!!」
もはやウォールハックの意味もないほどに四方八方に弾を乱射しやがる。
「いやぁwさすがに正面切っては疲れるよw」
「んで、お前にするほどじゃないなぁ」
言いながら後頭部に一発。
「ひきょうもんがぁぁぁぁぁぁ!!!」
「後ろからねらうんじゃねぇぇぇ!」
続けざまに前腹部に一発。
「やめりろあらぁぁぁぁぁあ!!!!!」
一発。
「bふゅせbsヴいえdbさ!!!!!!」
一発。
「……vぶdしあvbす…ばp…うばぴs…!!!」
もはや意味不明。一発。
「………!!!!……」
一発。
「…………。。。。」
一発。ついでにおまけ。
「……………」
完全に沈黙。
「いい子にしないとまた喰いに来るからな」
―――Real Dive終了
―――EPEX管理会社の一室―――
「ふぅ……。」
(やはり現実は体が重く感じるな…)
「おつかれさま!!」
ダイブするまえの蒼白な顔はどこへやら。
まるですごいものでも見たかのように満面の笑みである。
「いやぁ噂に違わずとはまさしくだったね!」
「ブギーマンがあんなにすごいとは!!」
「いやぁ照れるなぁw」
「あーでも。マジで俺の正体は秘密だかんね?」
「このご時世どんな輩に狙われるかわからないんだからさ」
「うんうん!わかってるよ!」
「本当にすごいからこそ危険度も増すからね!」
「いやでも本当にすごい!」
語彙力よ。
もはやすごいばかりで笑える。
でも本当に気をつけなくては…
平気でチートを使って暴言を吐く輩を相手にしているのだ。
仕返しになにをしてきてもおかしくはない。
ミイラ取りがミイラに…なんてね。
「今日は本当にありがとう!」
「このoretueeeeはあとこちらで処理しておくよ!」
「またなにかあったらお願いしていいかい!?」
「いいけど、予定次第なところはあるかなぁ」
「ほかのゲームでも呼ばれてるからさw」
「悪い子多すぎで大繁盛なのよw」
「そかそか。いやはや頭が上がらない…」
「できることなら君のようなすごいプレイヤーはこのような場ではなく、もっと公の場で公式に認められたほうがいいんだよな…」
「君に頼らざるをえない自分を不甲斐なく思うよ…」
「いやいやwきにしないでよw」
「悪い奴におしおきするのは好きだしさ」
「まぁでも運営さんたちもがんばってね」
「うん、そうだね。がんばるよ!ありがとう!」
差し出された手を握り返す。
うん、めっちゃ頑張ってる手だ。
―――帰り道―――
「いやぁ、しかしReal Diveのあとはやっぱ疲れるなぁ…!」
帰ったらこのまま寝たいなぁ…
でもブギーマンのデータも修正したいし…
やっぱもう少し指先と足のセンシをあげておきたい気が…
―――ドスッ
「…え?」
あ、これはダメなやつだ
なんとなくわかる
体から力が抜けていく感じ
「…お前が…悪いん…だ…」
だれだ、こいつ…
かおがよく見えない…
めが…か…すむ…
まだ…やら…なきゃ…
いけない…ことが…あるの…に…
「…あっちでも復讐してやる…」
―――リーヴェティア城、廊下―――
激しく廊下を歩く音が聞こえる。
「お気をたしかに!姫!」
大臣の言葉などもう耳にタコだ!
何度同じ問答を繰り返せば気が済むのだ!?
「だから!何度!同じことを!言わせれば!気が済むのです!」
「何度でもです!!」
「神がこの世界の理を不条理な力で支配し、捻じ曲げて遊んでいるからといって!」
「悪魔を召喚して頼ろうなど言語道断です!!」
「そんなことわかっていますわ!!」
「だからといって民をこれ以上不条理で苦しめて一体どうするのです!?」
「人では神に対抗などできません…」
「であれば悪魔に魂を売ってでも乞い願うしかないではありませんか!」
「だとしても!なにも姫自ら悪魔召喚をしなくてもよいではありませぬか!」
「臣下や民を犠牲にしろとでも!?」
「私は!あのリーヴェティア王の娘ですよ!?」
「そんな真似、お父様誓ってできませんわ!!」
あーだこーだと大臣と揉めたが、最後はもはや力ずくだ。
大臣が扉の前で上下左右と行く手を遮ってきたが、大臣ぐらいなら私にだって退かせる!
大臣を退け、城のとある地下の扉の鍵を閉め、前々から準備をしてきた悪魔召喚の儀式を開始する…
怖くないといえばウソになります…
本当はとてもこわい…
召喚をした代償になにを支払わされるのか…
私一人の命で済めばまだよいのですが、万が一臣下や民にも犠牲を強いることになればどうすれば…
なんの意味もなくなってしまう…
やはりやめたほうが…
いいえ…どっちにしてもこのままではただ悪戯に神に命を弄ばれて死んでゆくことになる…
これ以上お父様たちのような犠牲者をだすわけにはいかない…
悪魔に媚びへつらってでも私一人の命で済むように懇願しよう…
それしかない…
「来たれ、闇を纏いし者よ。我が名はマリア・ゼル・リーヴェティア。」
「汝、夜を旅する者。光の敵。十字路を支配する者。」
「狼の遠吠え。漆黒の羽ばたき。鮮血の涙。」
「我の願いに応え、我と契約したまえ。」
「サモン!!!」
地下室内の影という影がざわめき、なにかが室内の中央に描かれた陣に向かって収束を開始している。
暗闇はどんどん濃くなり、光を全てのみこんでいく。
蠟燭の明かりも徐々き消えていき、マリアが持つ蝋燭を残して全て消えてしまった。
ただ暗闇の中に陣が色濃く光り――――消える―――
次の瞬間
マリアが息をするよりも早く、陣があったであろう所に三つの弧を描く月にも似たものが浮かんだ。
そしてそれはゆっくりとこうしゃべった――――
「…The Boogieman is Coming…!」