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プロローグ

新連載です。

なろうでは久々の新作ですので、できれば応援してほしいです!

皆様、どうぞよろしくお願いします。

※もう完結まで書いている作品なので、安心してお楽しみください。

(くそっ! 盛られた!)


 オルテガルド帝国のヴァレンティノ侯爵、ルーク・ヴァレンティノは、口元を押さえながら身体をくの字に曲げた。

 宵闇を溶かしたような黒髪がはらりと頬を撫でて、金色の輝きを秘めた瞳がテーブルランプの光を受けてちらりと煌めく。力の弱くなった彼の手から、中身の入ったワイングラスが落ちて転がり、床の上にいびつな形のシミを作った。

 ルークは形の良い皺を寄せながら低く呻き、腰掛けていたベッドに背中から倒れ込んだ。

 すると、薬を盛った張本人が、四つん這いで彼の上に覆い被さってくる。


「ふふふ、ようやく効いてきましたね」


 そう、満足げな笑みを浮かべ、ルークに迫るのは、シェリル・ロレンツ、十六歳。

 つい半年前まで戦争をしていた隣国・エルヴィシア王国からやってきた、ルークの花嫁である。

 シェリルは少し癖のある銀糸のような髪を、まるで二人だけを囲うカーテンのようにルークの方へ垂らしながら、薄い唇を引き上げ、妖しい微笑みを浮かべた。


「特製の媚薬です。……ほら、身体が熱くなってきたでしょう?」


 苦痛に耐えるような表情で荒い呼吸を繰り返すルークの身体を、シェリルの指先がつつー……となぞる。

 シャツ越しの細い指の感触にルークが小さく息をのむと、彼女はまた笑みを強くした。

 そうしてシェリルは、ルークの顔の横に突っ張っていた両腕の肘を曲げると、彼に顔を寄せる。

 お互いの呼吸が唇に感じられるほどに顔を近づけた彼女は、そのまま――


 ころんと、ルークの隣に転がった。


 そうして、お腹の上で手を組むようにしながら、シェリルは瞳を閉じる。


「……」

「……」

「……」

「……」

「……シェリル?」


 呆れたような声でルークがそう呼びかけると、彼女はかっと目を見開いた。

 そうして、先ほどとはうってかわったような、いつもどおりの元気な声を出す。


「私が先日読んだ本によると、媚薬というものを男性側に飲ませたあと、一緒のベッドで眠ると、翌朝、爆発的にお互いの好感度が上がっていました! 理由は描写されていませんでしたのでわかりませんでしたが、その前に読んだ三冊の本でも同じような場面があり、これはほぼ間違いないと考えました!」

「……なんてもん、読んでんだよ」

「ちなみに、先ほどの『ほら、身体が熱くなってきたでしょう?』という独特の呪文ですが、薬を飲ませた側の約三割が同じような言葉を発していたことを考えて、何か効力のある言葉だとは思うのですが、なんの効力があるのかはまったくわかっていません!」

「『わかっていません』で胸を張るな。あと、それは呪文じゃない……」

「さぁ、ルーク様! 一緒に寝ましょう! そして、私にメロメロになってください!」


 どこか雄々しくそう言った後、シェリルは再び瞳を閉じる。

 そのまま彼女がぐっすりと寝入ってしまう前に、ルークは再び声をかけた。


「シェリル……」

「なんでしょうか? はっ! もしかして、もう私にメロメロに!?」

「これは、媚薬じゃな、く、て、……しびれ、薬」


 身体だけではなく、舌の方にまで回ってきた痺れを堪えながら、ルークはなんとかそれだけ言う。しかし、襲ってきた脱力感には抗えず、彼はがくっと身体の力を抜いてしまった。


「え? ルーク様!? ルーク様!?」


 ようやく事の重大さに気がついたシェリルは、慌てて起き上がり、ルークの身体をゆする。しかし、意識を失ってしまったルークは一向に目覚めない。

 シェリルは彼の様子にこれでもかと顔を青くする。


「――ル、ルーク様!!」


 結婚を控えた二人がこんな奇妙奇天烈な関係になった理由は、一ヶ月ほど前に遡る。


面白かった時のみで構いませんので、評価やブクマ等していただけると、

今後の更新の励みになります。

ツイッター等で宣伝もしてもらえると、本当に助かります。

皆様、どうぞよろしくお願いします!

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