食卓の頂上決戦〜人間とドラゴンのお弁当作り対決〜
なろうラジオ大賞6への応募作品です。
かつて血と炎に包まれた激しい戦乱を繰り広げた人間と龍。その争いに終止符が打たれた日がある。いまやその日を記念するピクニックは、誰もが知る伝統的な交流行事として親しまれていた。
だが、これは単なる交流の場ではない。ピクニックの前には毎年、龍と人間の双方が手作り弁当を振る舞い、どちらが優れているか、熾烈なバトルが繰り広げられるのだ。
今年で百回目を迎えるその戦いが今日、行われることとなっていた。
草原に集まる龍と人間たち。次々と龍が翼をはためかせながら地上に降り立つたび、草木が風に揺れる。
「人間どもよ、覚悟はいいか! 我らが炎で焼き上げた弁当が、お前たちのひ弱な舌を焼き尽くすぞ! 」
赤い鱗をした龍の代表が、雄叫びを上げる。その声は空を震わせるほどの迫力を持っていた。
対する人間の代表――剛腕な料理長が、フライパンを振り上げる。
「龍ごときに、繊細な味の真髄が分かるか? 我らの弁当こそ、真の弁当にふさわしい! 」
両者の挑発を皮切りに、戦いの火蓋が切って落とされた。
龍たちは翼を広げ、広大な野外キッチンで調理を始めた。削り取った岩塩や、火山の熱で育った野菜を豪快に鍋へ入れる。炎のブレスで焼き上げられたその料理は、まさに自然そのものの力を凝縮した一品だ。
一方、人間たちは細やかな手作業を重ねながら料理を進める。食材を微塵切りにし、ひとつひとつ丁寧に詰め込んだ弁当は、まるで美術品のような美しさを感じさせた。
二時間後、審査の時間が訪れる。龍と人間、双方から選ばれた中立の審査員が、料理を一品ずつ口に運ぶ。
最初に登場したのは、龍側の弁当。火山ライスに溶岩ピザ、隕石ステーキが並ぶ。審査員の一人がステーキを口に運んだ瞬間、目から火花が散るような衝撃が走った。しかし、その奥深い味わいに、会場は感嘆の声を上げた。
次に運ばれたのは人間側の弁当。繊細な味付け、そして美しい見た目に、審査員の視線は釘付けになった。箸で持ち上げた卵焼きはふっくらと空気を含み、その美しい仕上がりが味わった者の舌を唸らせる。
審査員全員が両者の弁当を完食し、ついに結果発表の時。
「今年は……人間チームの勝利!!!! 」
こうして、今年のお弁当対決は人間側の勝利で幕を下ろした。人間側の勝利は2年ぶり66回目。
その後ピクニックが始まり、両者は楽しく盃を交わす。龍と人間の間に芽生えた友情は、まるで火花のように燃え続けるのであった。
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