6.5ドクダミ茶後編、なし崩れる(BK3.P16)
自家製の雑草茶かドクダミ茶かよくわからないモノ。
それを母上に飲ませて怒られた。
だが………
アネウットには褒められる。
ワイは上機嫌や………
もっと褒めて欲しいで。
無能なワイ君は、人様に褒められる事などあまりないからな〜。
しかし母上は………
「アネウット!!!」
「は、はい。なんでしょうか。当主さま」
「私は貴方に、この馬鹿息子の教育を頼みました、そうですね?」
母上が念をおすように確認する。
「は、はい」
「なのにどういう事です?」
「え? え?」
母上の剣幕に
アネウットは困惑していた。
何が悪いのかと、オロオロしとる。
なぜ怒られているのか
わかってないんやな。
アネウットは全くわかっていない様子で混乱しとる。
モチロン。
ワイにも母上が何故プンスカしているのか、わからん。
賢いアネウットにわからん事。
それが無能なワイ君に、わかるわけ無いんやけれども。
「アネウット」
「は、はい!」
「貴方には、馬鹿息子が少しでも賢くなるように、教育を任せたのです」
「全身全霊を尽くして、誠心誠意、教育をいたしております」
「ならば、コレは一体どういう事です?」
「???」
怒る母上。
怒られる意味がわからない。
と小首を可愛らしく傾げるアネウット。
美人でスタイルの良いアネウット。
そう言うポーズをすると見とれてまうで〜。
最近は特にな。
最近はイロイロあって特にな………
見惚れて目が離せなくなる時があるで〜
「馬鹿息子が賢い貴方に似て、賢くなるのを期待したのに」
「………」
「だから教育を任せたのに。それなのに貴方が馬鹿息子に似て、馬鹿になってどうするのです!」
え?
母上。
今なんて言うた?
「ファ〜〜〜。母上。それはいくらなんでも言い過ぎや。ワイ傷つくで」
「黙りなさい! 馬鹿息子!」
「ば、馬鹿息子やと!」
「そうです馬鹿息子!」
「ワ、ワイは………百歩譲って、馬鹿息子かもしれんが………」
「百歩譲らなくても、一歩めから馬鹿です。貴方は! 黙ってなさい!」
「いいや、言わせてもらうで母上。アネウットは悪くない。最高や」
「あぁ………」
口論するワイ君ら。
アネウットは可愛らしく、喧嘩する母子の間でオロオロする。
母上はワイ君を無視して、そんなオロオロするアネウットへ。
「アネウット! いつもはあんなにも、さっそうと凛としていた貴方がなんですか」
「え?」
「さっきからの、そのなよなよした有様は。わずか数日で女々しいその変わりよう」
「そ、それは………」
オロオロして、
何かを言い難そうに口ごもるアネウット。
「ソレでは、まるでうちの馬鹿息子のように女々しい!」
「ファッ? ワイは、なよなよなんてしてないで!」
「馬鹿息子。貴方は男の癖に、なよなよして男らしさが足りません!」
「あんまりや母上。今日は攻撃力高すぎるで〜。ワイ君、泣いてまうで」
「く………この馬鹿息子が!」
「百歩譲ってワイは、ワイは、馬鹿かもしれんが、母上言い過ぎや」
「馬鹿と言われたくなければ、努力して賢くなりなさい」
「馬鹿だって生きてるんや。人間なんや。必死に生きとるんや。それを酷すぎるで」
「あぁ〜〜〜。なんて可愛そうな若様」
必死に言い返すワイと
すかさず、ワイ君を慰めるアネウット。
やっぱり持ってて良かったアネウットや。
アネウットがいれば、母上にも勝てる気がするで。
「ア〜ネウット! 馬鹿息子を甘やかすんじゃありません!」
「でも………当主様」
「でも、ではありません!」
「でも………」
「貴方は一体この馬鹿息子に、どんな教育をしているのですか?」
母上は、ますます激高する。
どんどん母上の怒りが高まっとるのがわかるで。
怒る母上。
ワイ君への教育方針を聞く母上。
でも………
聞かないほうが………
アネウットは言う。
「それは………………とりあえず。この世界では、男は強くないとと思いまして」
「まぁ、それはそうです」
「ですよね」
「しかし、すでに紋章持ちで強い我が子には、強さよりも賢さが………いえ。せめて、もう少しだけまともになって………」
母上の言葉は
ワイへの愚痴になりかけたが
アネウットは母上の言葉を無視して
「なので………若様には………
若様の父君。アイアン様から私が教わった。アイアン家直伝。夜の男女の合戦法を………」
「え? ちょっと待ってアネウット。今なんと言いましたか?」
「はい?」
「今なんと? なんと言いました?」
「若様には夜の戦いでも強くなってもらおうと」
「待った。ちょっと待ちなさい………」
慌てる母上。
しかし、アネウットは止まらない。
「若様には、夜の男女。ベッドの中での戦い方を一通り伝授しておきました」
「な、なんですって!」
あぁ。
母上が動揺しとる。
「若様に夜の戦い方を、教えて差し上げました」
「う、嘘ですよね?」
更に動揺する母上。
「アイアン様はおっしゃいました」
「あの浮気馬鹿アイアンが何と?」
「男は昼も夜も戦いだ。女にも強く無ければいけませんっと」
「何を……何を言っているのです? アネウッ〜〜〜ト!」
丁寧に頭を下げお辞儀をするアネウット。
その状態で淡々と報告するアネウット。
アネウットの言葉に恐れ慄く母上。
先ずは立ち上がり………
顔面を蒼白にした母上は………
ブルブルと震え………
ガチャンと………
母上お気に入りのティーカップを取り落とした。
ティーカップは………
音をたてて砕け散った。
あぁ、ワイ君が精魂込めて育てた草?
雑草………………じゃない。
たぶんドクダミ茶が〜〜〜。
「嘘ですよね? 嘘だと言いなさい。アネウ〜ット!」
「さぁ、どうでしょう?」
アネウットは微笑んだ。
………
アネウットは邪悪に微笑んだ。
………
凄く邪悪な笑顔に見えた。
◆◆
問題を抱えた異性とは寝てはならない。
問題を抱えた異性と、関係を持つという事。
それは………その者の抱えた問題。
それを抱え込むと言う事だから。