閑話休題1、若様のいない時(アネウット視点)
若様のいない空間。
広い大食堂でスチールさんと二人きり。
「ハァ〜〜〜」
「なんだよ。ため息なんてついて」
「せっかく若様と二人きりの逃避行だったのに………」
「なんだよ………俺に文句があるってか?」
アネウットはスチールを見つめる。
「ハァ〜〜〜」
「だからなんだよ。そのため息は」
「アイアン様と若様は、あんなに魅力的なのに………」
ヤレヤレと
スチールさんに向かって左右に首を降る。
「おい! なんだよ。俺に何が言いたい?」
「顔と………何より性格が………」
「俺の顔と性格に文句があるってか?」
「私はアナタじゃトキメかない」
「知るか! トキメカれてたまるか。ふっざけんな、お前」
スチールさんがキレた。
「私は、まじめです」
「お前のせいで俺の遺伝上の父と弟は、○兄弟になってんやぞ」
「その言い方ヤメてもらえます〜。なんかヤダ」
「お前も嫌かも知らんが。俺のほうが嫌だわ。俺まで巻き込まれてたまるか。頭おかしなるわ。アホサキュバス」
「だから、サキュバスじゃありません」
「オマエの行動はサキュバスも真っ青だわ」
「オンナなんて皆こんなもんです。頭が恋愛で出来てるんです〜」
一般論でスチールさんの女性への幻想を破壊する。
が………
「全女性に謝れ」
「どうして?」
「たまにお前みたいな女がいるから。俺は女は狼だって。怖い生き物だって。警戒しなきゃならないんだ」
「ハァ〜〜〜」
スチールさん。
何もわかっていない。
「だからなんだよ。そのため息は」
「若様とアイアン様は顔も性格も良いのに。その遺伝子つながってる男性。それが女性に夢見ガチな童貞。しかも………なんて」
大袈裟にため息をついてみせる。
「いや、もうわかったよ。俺が悪かったよ。なんかイロイロ謝るから。もうやめてくれ」
「何をですか?」
「ボンはともかく。アイアンと比べられると、心にくるわ」
「………若様、早く起きてこないかな〜」
話をそらしてるようで、話題は変えない。
アイアンさんを追撃する。
トドメをさす。
「テメェ〜。俺が謝ってもやめない気だな。昨日ディスられた事を、まだ根に持ってるな?」
「顔の良い男が近くにいると、テンション上がるのって、なんででしょうね?」
「しらね〜よ」
少し話をそらしつつ
側面からの会話で攻める。
スチールさんにキレられた。
「私は今、めっちゃテンション低いです」
「お前………お前さ〜〜〜。ボンといる時と別人じゃね〜か」
「若様がいるとテンション上がるから」
スチールと会話する時はけだるそうに
若様の話題になるとハキハキと。
「………コイツ声まで変えやがった。そうまでして俺を貶めたいか?」
「え〜。そんなつもり無いよ。本当の事を言ってるだけだよ〜」
「て、テメェ」
「テンション下がるわ〜」
本音である。
がスチールをからかうつもりもある。
「きっつ〜。心が痛いわ。張り裂けそうだ」
「張り裂けちゃえば?」
「お前………」
「若様早く起きてこないかな〜。そうすればテンション上がるのに………」
大食堂にはいくつもの机と椅子がある。
その中にはソファーの様な長椅子もある。
私はそれに寝そべり中。
そして………
料理を作ってるスチールさんをディスってる。
「俺は何故、こんな女の為に食事を作ってやらなきゃいけないんだろう?」
「顔が悪いからじゃない?」
「なに?」
「顔が良ければ、私のテンションが上がるから、私が料理を作ってあげるよ〜」
「テメェ〜」
「いっそ私がアナタの顔を作ってあげようか? 顔が壊れたあなたの為に」
「顔が作れるか! この、馬鹿にするな」
「え〜。顔はつくれるよ。髪と、何より眉毛で印象全然変わるよ」
「そうか?」
「ハァ〜眉毛のていれをしないから、アナタは顔が悪いんだよ〜。手入れしなよ」
「そりゃどうも。でも、俺は力と頭で生きるのさ。顔なんぞ………」
スチールさんは何もわかってない。
「力よりも頭、頭よりも男は顔だよ〜」
「男は顔じゃね〜」
「顔だよ〜」
「男は顔じゃね〜。女こそ顔だ!」
スチールさんから凄い暴言が飛んできた。
「………最低」
「あぁ、お互いにな。最低な事を言ってるよ。自覚はあるよ」
「………だね。最低だね私達」
「達をつけるな。オマエのがなんぼか酷い。俺を巻き込むな」
そうかなぁ?
「やっぱり顔の良い男が側にいないと、私テンション上がらないから駄目だわ」
「お前さ〜〜〜。ホントにさぁ〜〜〜。俺をイジメてたのしいの?」
「楽しくない。若様、早く起きてこないかな〜」
「あ、ボン!」
急に………
私アネウットは、キビキビと立ち上がる。 綺麗なお辞儀をして振り向く。
「若様お早うございます」
完璧な笑顔で挨拶をした。
しかしそこには誰もいなかった。
「嘘だよ。つ〜か騙して悪いが、アネウット。お前さん、ボンがいる時といない時で態度変えすぎ」
「すち〜〜〜る。騙したな〜〜〜」
「ついに俺を呼び捨てにしやがったコイツ」
「私を騙す悪い男なんか呼び捨てで十分だ」
「あ〜もう。そんなにボンに会いたきゃ部屋に行って起こしてこいよ」
「でも………」
「もうすぐ朝飯できるからさ」
ナルホド。
食事と言うおこす口実があれば………
「………スチールのくせに、良い事に気がついたね」
「スチールのくせにって……お前さ〜〜〜」
「ふんふんふ〜ん。顔の良い男の部屋へ行くと考えるだけでテンション上がるわ〜」
私ことアネウットが若様の部屋へ向かおうとすると、すち〜るが後ろでボソボソと一人で呟いてる。
「アイツ………玉の輿狙いと思ったが、ちがった。ただの重度の面食い患者じゃね〜か」
「顔さえ良ければ、頭の出来はボンレベルでも良いって、かなり怖いぞ」
「顔だけで、あの態度のちがいよ。これだから女は………アイアンもボンも顔だけは良いからな〜」
「俺も眉毛の手入れくらいはしてみるか? 遺伝子は二人とそう変わらんし。多少はマシになるよな?」
すち〜るがブツブツと言ってるのが聞こえた。
なのでついでにアドバイスする。
「すち〜る。まゆげだけじゃ無く爪の手入れもしなさい」
「また呼び捨てにされただと! しかも………爪の手入れ? そんなのするかアホ」
「アナタは何もわかっていない」
本当に若と血がつながってるとは思えないがさつさ。
人は環境次第でここまで変わるのか?
若様は身だしなみは貴公子前として完璧。
優雅。
スチールは………野盗?
しょうがないから少し教えてあげる。
「何がだよ?」
「指は男の色気のミナモトですよ」
「………え? マジで? なにそれ?」
「女は男の指に色気を感じます」
「マジ?」
「その指で触れられたら………とか妄想するのです」
「マジカ〜」
マジを連発するスチールさん。
本当に知らなかったのかな?
「その指の爪が汚かったり、爪が伸びてたらどう思います?」
「そりゃそんな指に触られたくないわ。幻滅するわな。………あ!」
「そういう事です。若の兄上ならしっかりなさい」
「あぁ。わかった。忠告ありがとう」
「変な所だけ、若に似て素直ですね」
「うるせ〜。そろそろ食事が出来るから、ボンをおこしてこい」
ヤレヤレ。
それにしても、
可愛げのある男をからかうのは、面白いものですねぇ。
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恋人に愛をささやく理由
相手への愛を確認する為じゃ無い。
より相手を好きになる為でもあり
より相手から好きになってもらう為だ




