ペット5、無能こそパワー
ワイとスチールはゲラゲラ笑っとるが。
アネウットは何やら神妙な顔をしていた。
「スチールさん。貴方はアイアン家の紋章保持者だと、名乗り出ないのですか?」
「ん? 意味ね〜だろ。アイアン、アイツが認知する気がね〜んだからさ」
「そうではなく。紋章保持者は国に管理されると、当主様から聞きました。国に保護を頼めば………」
「あ〜〜〜それな。紋章保持者が国に保護されると。準子爵の貴族の地位と、毎月ごとに金を貰えんるだけども………いざ戦争って時の兵役義務もついてくるんだ」
「良いじゃないですか。地位もお金もついてくるなら」
「良くない。準子爵って言ったら、貴族とも言えぬ最下級の地位だし」
「平民よりはマシでは?」
「受け取れる金も、最低限の食費に足りるかどうかの低額だ。やってられるか」
「わがままな」
呆れるアネウット。
「割に合わんわ。国にバレない様に紋章の力を使えば、肉体労働でも山賊退治しても、金にもそうそう困らんし」
スチールの返答は、脳筋の見本みたいな答えやが羨ましい。
ワイには無理な生き方やから。
ワイが真似しようものなら、まずアッサリ騙される。
間違いなく山賊の一味になるやろうな。
過去それに近い状態になりかけた事あるし。
母上にバレたら………ただではすまん事件やった。
ワイには兵役のほうがマシや。
「貴族の地位には兵役の義務がセットやからな〜。スチールは兵役を避けとるんや」
「国の為になんぞ戦ってられるか! 俺は俺の為に戦うんだ」
スチールの力強い回答。
「スチールわがままなんや」
ワイはポツリと呟く。
「気族のボンボンとして育てられた、お前と俺は違う」
「ボンボン? あ、それで若様のことをボンと呼んでるのですね?」
アネウットは納得したようにポンと手をうった。
「そうだ。平民の俺と、コイツのボンボン人生。遺伝子半分同じなのに、エライ違うからな」
スチールは何か遠い目をした。
「ワイにはスチールのほうが羨ましいやけどなぁ」
「どうしてですか若様?」
呟くワイとワイの答えに首を傾げるアネウット。
「ワイにもスチールくらいの頭脳があれば………イロイロ上手くやれたやろうに」
「………若様」
「ま、この通り。この話をすると、いつも平行線なんだわ。不幸自慢やら幸福自慢やら」
「どっちなんですか?」
アネウットの問。
「どっちやろ? アイアン家の紋章を宿す者は、基本的には呑気で大雑把やからなぁ」
「だなぁ」
「ワイ等、紋章で体が強いから。あんまり真剣に物事を考える必要が無いからな〜」
その点、ややスチールは、おいたちが恵まれてないせいか、アイアン一族に比べて頭が良い。
何が幸いするかわからんでホント。
「賢くなるには、事前の準備とトラブルを察知出来れば良い。と、いつもボンに教えてるのに。呑気なコイツは少しも賢くならね〜」
とスチールが愚痴る。
「ワイもスチールに、無能になるには恥を捨てろ。恥知らずでノンビリのんきになれば良い。と言ってるのに、全然スチールは無能になってくれないんや」
ワイも愚痴る。
「そりゃあ、わざわざ無脳になりたがる奴はおらんて」
「ファッ? そうなんか?」
「そうさ」
「でも、たまに無能になると、魂は開放されて、何かしら精神が高揚するからオススメやで」
「若様………」
「………ボンが言うと異様な説得力あるなぁ。カッカッカ」
スチールは変な声で笑う。
「無能こそパワ〜や。無能になればなるほどにアイアン家紋章の力は増すんや」
「この紋章、呪われてね〜か? なんかヤダな〜」
スチールは自分の紋章を見ながら、顔をしかめる。
なんちゅう罰当たりな。
紋章は誇りや。
子供のうちからそう教え込まれるのにスチールときたら………
この国の誰もが羨む力の源、紋章。
それをこんなにも軽く扱うスチールが、うらやましくも、うとましい。
「無能こそパワー。それがわからんうちはアイアン家の紋章は、つかいこなせんで〜」
「そこまでして力はいらんて、無能にならずとも、俺にはこの優れた頭がある」
アイアン家親族に、頭の良い人間はいない。
が………
アイアンの血を引いてるのに、スチールは頭が良い。
少なくともワイよりは。
スチールは賢いから………
だから父上に認知されなかったのでは?
そして無能ワイは父上に好まれたのでは?
ワイは、そう睨んどる。
父より賢い子供、スチールを………
あの父上が好むはずが無い。
そのくせ父上が頭の良い女を好むのは、なんやろな?
母上、アネウット、あと………
会った事は無いけれども、たぶんスチールを見る限り、その母上も賢いやろ。
ん?
でも………ワイ君家等、三馬鹿兄弟は、賢い母上から産まれた。
なのに、みんな頭残念やけども………
ま、ワイの考察力と眼力はポンコツやから、予想もポンコツ。
全ての予想があたってる保証は無いんやけどな。
ハハハ。
ワイ君の頭ポンコツでも………
それでものんきに楽しく生きとるわ!




