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剣と魔法が交わる世界で  作者: 天望
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第8話『カミサマとカムイの因縁』

 かつて、栄華を誇った国にカムイは産まれた。

 国の長と、供物の巫女との間に生まれた子であった。

 カムイはとても凄まじい成長力を見せ、どんな技や知識でさえも、一目見ただけで会得してしまうような才女であった。

 だが、その二人の間にはもう一人、子が生まれていて、それが今、カミサマとして存在する、始まりの子であると、カムイは口を溢した。

 その二人に生まれた子――もといカミサマは、口は回るが動きはぎこちないような、頭でっかちの性格であったと言う。

 しかし、ある時を境に、カミサマは力を手に入れてしまった。

 それは、同類であった子供を殺害することによる、力の移動であった。

 カミサマは口が回り嘘をついた。

 カムイはそれを見破ってはいたが、周りは嘘を見破れず、その話を信じてしまう。

 そんな嘘つきのカミサマを許せなかったカムイは、ある時、カミサマを呼び出してその事を問い詰めた。

 どうして嘘をついてまで力を欲するのか、と。

 カミサマはこう答えた。

 同族殺しは追放だ、ここは自分にとって生きやすい場所だから、そんなのはまっぴらごめんだ、と。

 それを平然と答えたカミサマに対して、カムイは剣をふるい、体勢を崩した相手の首に刃をかけた。

 出来損ないであったカミサマに勝ち目はなかった。

 しかし、そこになんと母親である供物の巫女が現れ、その光景を見て咄嗟にカミサマを庇ったのだ。

 そしてこう言い放った。

 同族に刃を向けるなど言語道断、あなたは追放されるべきだ、と。

 母親からそう言われたカムイは、当然反論した。

 そいつは嘘をついている、同族殺しをしたのはカミサマ自身だ、と。

 しかし、母親である彼女は、子の言葉を天秤にかけてしまい、嘘をついているとはにわかには信じがたいと思い、カムイではなくカミサマの言葉を信じてしまった。

 そうして間も無く、カムイは国から追放されて、下界と呼ばれていた、この世界に降り立ったのだと言う。


 下界――この世界はとても自然に溢れていた。

 聞いたこともない動物の鳴き声や、見たこともない生物に目を輝かせてカムイは歩き回っていた。

 茶色い色で構成された太いものが、地面にへばりついているように生えていて、空に向かって枝から緑色の丸みを帯びた物を伸ばしていた。

 それらは、群生しているが、どれも同じように生えていて、見たところ、元いた国にあった()のように見える。

 体力には自信があったので、カムイは走って木々の群れを抜け、開けた場所に出た。

 眼下に煙が上がっている家が見え、そのまま、丘を下っていくことにした。

  石造りの家が一軒、煙突から白い煙が上がっていて、カムイは扉を叩き、声を上げる。

 そうすると扉の奥から返事があり、扉が開かれた。

 あら、見ない顔、と現れた人物はカムイを見てそう言う。

 カムイは元いた国から出て、旅に出ていると伝える。

 女性は名を名乗り、カムイも名を名乗った。

 女性――シン・バットはカムイを快く家に招き入れ、昼ごはんの支度をしていたのだと言った。

 そして、旅の目的地は? と言われて、カムイは返答に困ったが、シンが腰に差した剣を見て、王都シーンレーンの騎士団に入団するのを目指しているのかと聞かれ、カムイは、王都とは? と、確認がてら話を進めた。

 王都はここから歩いて一ヶ月程の距離で、長旅をするのだと言って、カムイに昼食を振る舞ってくれた。

 騎士団に入れば、安定した収入が得られるとシンは言うが、ふとカムイの姿を見てため息をついた。

 女の子じゃなければね、と口を溢したシンだったが、カムイは全く気にする様子はなく、自身に性別の良し悪しは関係ないときっぱり言い放った。

 出された料理を美味しく頂くと、カムイはその家から出て、シンに別れを告げて王都へと歩みを進めたのである。


 王都シーンレーンに着いたのは、一ヶ月ではなく、その半分ぐらいの月日だった。

 なぜならば、道中で貴族の乗る馬車を、盗賊から助けたからだ。

 貴族の存在がどうであるのかは知らなかったが、助けてくれた恩に、と、王都シーンレーンまで馬車に乗せてもらう事が出来たのだ。

 謝礼を、と重たいものが入った袋を手渡されたが、それよりも騎士団に入る伝手(つて)がないと、貴族に伝える。

 そうすると、騎士団に入るための養成所に入る手伝いまではしよう、と快く引き受けてくれたのであった。

 そうしてなんやかんやあって、騎士団に入る事が出来て、安定した収入が得られるようになり、騎士団長にまで上り詰めた頃。

 ふと、シンの事を思い出し、もう一度会いたいと思い、休暇を申請した。

 一ヶ月かかると言われた距離でさえも、カムイは魔法にも長けていたため、独学で学んだ転移魔法で一気にあの家へと向かう。 

 しかし、着いて早々にある事に気づいた。

 そこは星なる者たちに占拠されており、かつて王都に行くように勧めてくれた人間でさえも、カミサマに心酔してしまっていた。

 元凶が奴であると分かったことにより、カムイは騎士団を率いて星なる者たち根絶を誓う。

 だが、組織を逸脱する行為は認められず、やりづらさを感じたカムイは騎士団を抜け、王都からも去ることにする。

 一人でカミサマと戦おうと考えていたが、ある時、冒険者、もとい何でも屋として活動する、フレイム達に出会うのである。


 冒険者――何でも屋として活動する彼らは、とても生き生きとしていて、見ていて清々しい物があった。

 忘れかけていた物を取り戻すように、彼らと行動を共にするカムイ。

 そこで、女遊びや酒、ギャンブルを学んだとも言う。

 そうした上で、やはりカミサマを野放しにしてはいけないと、カムイの意志が固くなり、何でも屋の活動の中で、星なる者たちが不利になるような仕事を率先して引き受けた。

 一人でカミサマ探しに突っ走る最中、やれない事やれる事、の仲間同士での助け合いを学び、カミサマの居場所探しも進める。

 そして、カムイはカミサマの居場所をついに突き止めるのであった。

 そこは、かつてカムイが追放された、栄華を誇る国だった。

 星なる者たちが一堂に会する祭りが、初めて出会った人間の村で行われ。

 供物である、巫女が運び込まれる場所が、そこであると分かったのだ。

 それを追いかけるようにして、再び舞い戻ったカムイは、国の変わりように思わず目を見開いた。

 何もかもが、一人の王であるカミサマに捧げられてしまい、痩せた土地、寂れた建物、同族たちの姿さえもなかった。

 ここが、かつて子供時代を過ごした国と同じとは思えず、フレイム達に正気を取り戻してもらうまでは、頭の整理がつかなかった。

 頭の中の整理がついた途端、カムイはカミサマに対する怒り、憎しみを爆発させてしまい、一人、カミサマの元へ向かう。

 奴の姿はとても異様な物になっていた。

 半透明の透き通ったような色をした人型を成して、そこに佇んでいた。

 昔に見た姿とはかけ離れており、カムイは一瞬、偽物ではないかと疑った。

 しかし、その声や話し方を聞いて、偽物ではないと断定する。

 だが、カミサマに対する知識が、その当時無かったのが1番の悪手だったとカムイは言う。

 どんな攻撃も魔法も、カミサマにダメージを与えることができなかった。

 その上、声を聞けば惑わされ、話に同意すれば手駒にされるのだ。

 フレイム達はそれによって、奴の手駒になってしまった。

 なすすべなく蹂躙される感覚を味わされたカムイは、なんと、逃げ出したのだ。

 故郷の同志を奪われ、家族も奪われ、仲間も奪われ、敵わない相手とはどんなものかも味わされたカムイは、息を潜めるようにして下界の辺境の地へと逃げたのだった。


 辺境の地で、世界の異変に気づきながらも、見て見ぬ振りをしていたが、ある時、魔族の一団が逃げ込んでくる。

 カミサマとやらに祝福を授かった人間達から逃げてきたのだと、魔族達は言った。

 故郷だけでなく、この世界までもが奴の手中に収められるのが気に食わなかったカムイは、奴自身に対抗する力を蓄えるために、魔族を率いて人間と戦争をする事を選んだのであった。

 そして、カミサマの祝福を授かった人間達との戦争は、カミサマが(やぶ)れることで、この世界に平和が訪れたのであった。

 とカムイは綴り、話を終えたのであった。

次回は3月31日の18時に投稿します

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