第36話『海獣イッカク』
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カムイ一行が港に着くと、とても大きな船が目の前に停泊しており、カムイとルナを除いた全員が大きな口を開けてポカンとしていた。
「なんと奇遇な事かヒガシに向かう船の中に、ヒノカミ一族が乗船する船を見つけ、ワシらが警護するために乗ると打診すると、この船の船長が快く引き受けてくれたわけじゃな」
「本当に大丈夫? 貴女いつもめちゃくちゃ適当に依頼を受けたかと思えば、損する羽目になるのに」
「大丈夫大丈夫! ワシらにかかれば海の魔物なぞ、脅威になりゃせんよ!」
大きな笑い声を上げるカムイにルナは呆れ、唖然としていたアレクたちも横目でカムイを見つめていた。
と、そこに図体の大きい男がやってくると、カムイがそれに気づき、笑うのをやめる。
「紫電のカムイさんよ! 片道切符の船の警護よろしく頼んだぜ! あと、その子らも乗るのか?」
「ワシの弟子たちじゃ」
「ははっ! そーかい! 紫電のカムイさんに合わせて月光のルナさんまで警護に参加するとなると、片道じゃなくて往復したくなっちまうな」
二つ名で呼ばれたルナは恥ずかしそうに頬を染める。
「あの人が船の船長ですか?」
「そうじゃ。名はドン・ホセイ、ヒノカミ一族に終身雇用されとる専属船長じゃ」
ドンは黒いツバがある白い帽子を深々と被り、肩に羽織るように白と青の上着を着ており、その下にはボーダー柄の服を着ていて、白いズボンを履いていた。
「冒険者ギルドには依頼として通しておいたから、報酬はまた後で受け取ってくれや」
「ありがたい。では乗船させてもらおうかの」
「いいぜ、こっちだ」
ドンに案内される形で船に乗り込んだ一行。
甲板には船員が十数名いて、ドンの姿を捉えると敬礼をして挨拶をする。
「この人らが警護に当たってくれる紫電のカムイ一行だ」
「し、紫電のカムイですか!? ほ、本物だぁ……!」
船員たちはカムイの二つ名を聞くと、カムイに握手を求めたり、サインをねだる者もいた。
「師匠ってヒガシじゃ有名なんですか?」
「ええ、紫電のカムイの二つ名が付いたのは、ヒガシで挙げた功績の数々があったからこそなの」
「何年前の事なんですか?」
「そうね……確か人魔大戦が終わったその後かしら」
「ひ、百年前ぐらいですか」
ふとアレクが年数の話をすると、ルナが顔を真っ赤にしてしまう。
なぜそうなったのかとアレクが不思議に思っていると、アリシアが脇腹を突っついた。
「そういうとこ、デリカシーってものを学びなさいな」
「え、えぇ……?」
アリシアに怒られた理由がピンと来ず、アレクは理不尽に怒られたようにしか思えなかった。
「出航の準備は済んだ! 錨を上げろ! 野郎共! 出航だー!」
ドンの一声で船員たちが慌ただしく帆を広げ始め、後ろから錨が引き上げられる音が響く。
そしてドンは操舵輪の前に立ち、船を操る。
「面舵いっぱい、ヨーソロー!」
カムイたちを乗せた船はヒガシに進路を取り、帆で風を受けて進み始めるのであった。
天候も風も良い航海に、カモメが鳴きながらついて来る。
それを見上げながらアレクはカムイに、
「ヒガシじゃ有名だったんですね。西側だとあんな反応されなかったし」
「んあ? 別にワシがヒガシで有名になっとるのは知らんかったぞ」
「でもルナさんが数々の功績を挙げたからって」
「一つ言えることがあるとすれば、ただの力比べがいつの間にかヒガシを助けていただけ、かのう」
アレクが空から視線をカムイに向けると、カムイは船首先に見えるヒガシではなく、右舷の先を見ており、指で輪っかを作り、何かを眺めている。
「どうしたんですか? 師匠」
「弟子共! 来たぞ! 魔物じゃ!」
甲板にいたアレクとアリシア、トトとルナの四名がカムイの見つめる先を見ると、水平線に日光を反射してキラキラと輝く物を捉えた。
ハーフェッドとフリジールはおらず、船員が異変に気づき、二人を呼んでくるとカムイに言って、船の中に入って行く。
「なんですかあれは」
「海獣イッカクじゃ。ハーフェッドがいなくても分かるぐらいにポピュラーな魔物じゃが、目立つ点とすればツノがあることじゃな」
水平線上でキラキラと光を反射していたのは海獣イッカクのツノで、船から見える範囲で数えると、十数匹の群れがこちらに向かっているのが見えた。
「アリシア、第五階位魔法は使うな、船にはお偉いさんも乗っとるからの」
「言われなくても」
「アレク、お主は海獣イッカクが甲板に来たら応戦せい」
アレクは頷き、アリシアは第一階位の魔法の詠唱を始める。
トトには海獣イッカクを引きつけてから弓を使えと伝え、カムイは帆にある物見台へと登って行く。
「アレク君、私も応戦する」
「分かりました、二人が撃ち漏らした個体を倒しましょう」
撃ち漏らした個体、とアレクが言うと、アリシアとトトは険しい顔をする。
「来た!」
ツノの先で割れた白い波が船に近づいてくると、アリシアとトトが魔法と矢を放つ。
魔法と矢が刺さるものの、イッカクたちは怯むことなく船に体当たりしてくる。
「ちょっと! 甲板に上がって来ないじゃない!」
「アタイらの矢と魔法じゃ痛くも痒くもにゃいって事かにゃ」
「だったらムカつくんだけど!」
イッカクたちの体当たりで船は大きく揺れはしたものの、立て直す。
すると船員がアレクの名を呼び、そちらを見ると、フリジールと物凄い剣幕でこちらにやってくるハーフェッドがいた。
「アリシアとトト! 今すぐ攻撃をやめなさい!」
「何を言って……! 襲撃されてるのよ、見たら分かるでしょ!」
「襲撃されてる理由があるから甲板まで来たの!」
「理由も何も、海獣イッカクは海の厄介者なんでしょ? 気まぐれに船を襲ってるのかもしれないのに」
物凄い剣幕のままのハーフェッドは、アリシアとトトを強く睨んだため、二人は萎縮して、言われた通りに攻撃をやめる。
「海獣イッカクの子供が積荷の中にいたんです! 許せない……! 許さないぞヒガシ人……!」
「海獣イッカクの子供が積荷に!?」
「これが証拠です!」
船員が金属製の箱を甲板に置き、蓋を開けてみると、中にはイルカのような姿にツノを生やした魔物が水の中に横たわっており、かなり弱っているのか浅い呼吸をしていた。
「今すぐ回復魔法を……!」
「待ちなさいアレク! 魔物には回復魔法では駄目よ、魔獣と一緒で治療魔法じゃないと」
「使える人は?」
アリシアとトト、フリジールとルナは首を横に振るが、ハーフェッドが勇みよく前に出て、アレクと代わるように海獣イッカクの子供に手をかざす。
「こう言う事も想定して治療魔法を学んでいた事が役に立って嬉しい」
「そういえば魔物博士だったわね、ハーフェッドは」
治療魔法を掛けると、海獣イッカクの子供の顔色が段々と良くなっていき、狭い箱の中で泳ぎ始めようとする。
「ダメですよまだ動いては」
「海獣イッカクには私たちの言葉は分からないんじゃ」
「大丈夫です! 魔物と意思疎通がとれるように魔物言語も学んでいたので!」
「そうかそうか」
酷い剣幕だったハーフェッドは、海獣イッカクの子供が元気になると、それに釣られて笑みが溢れる。
海獣イッカクの子供は横たわる体を起こし、箱から出ると、ペタペタと甲板を歩き始める。
「海獣イッカクは陸でも海でも活動出来るようにヒレが進化していて、エラ呼吸と肺呼吸を使い分ける事が出来るんです」
「海獣イッカクたちがこれで帰ってくれれば良いんだけど」
先程から海獣イッカクたちの体当たりが続き、上からカムイの声が聞こえていたが、甲板にいた全員が海獣イッカクの子供に興味を示していたため、今更になってカムイの声が届く。
「なーにやっとんじゃおぬしら! 早う迎撃せんか!」
「海獣イッカクの子供が積荷にいたみたいです! それが今襲われてる理由だとハーフェッドが言ってました!」
海獣イッカクの子供が甲板の上から降りようとすると、長い鳴き声を上げて、海中にいる海獣イッカクたちに自分がここにいると示しているようであった。
「聞きましたか!? 海獣イッカクの長い鳴き声を出せるのは群れのリーダーだけなんです! ……と言う事はかなり位の高い子供って事でしょうか」
海獣イッカクの子供が振り返ると、短い鳴き声をハーフェッドに向けて発すると、ハーフェッドは胸を抑えてうずくまる。
「ど、どうしたんだい?」
「『お姉ちゃん、ありがとう』ですって……! こんなに嬉しい事はありません……!」
「あの短い鳴き声だけでそこまで聞き取れるんだ」
海獣イッカクの子供が海に身を投げると、海獣イッカクたちの体当たりが止み、アレクたちは右舷の縁から見下ろすと、先程の海獣イッカクの子供が顔を出してこちらを見ていた。
『あの! 名前は?』
ハーフェッドが海獣イッカクの鳴き声を真似するように上げると、海獣イッカクの子供が返事をするように鳴き声を上げる。
「ふむふむ、トリトン十三世ですか……」
「大層な名前ね」
『私はハーフェッド・ドラゴニクス。また合間見える事があれば、いつでも呼んで下さい!』
「キュイしか聞き取れないんだけど」
ハーフェッドを側から見れば、海獣イッカクの鳴き声を真似して騒いでいるようにしか見えないが、意思疎通は取れているのだろうとアレクたちは思った。
そうして、海獣イッカクたちが海へと姿を消すと、カムイが物見台から降りてきた。
「魔物言語を話す奴は初めて見たわい。それも完璧に意思疎通が取れていて、発音の完成度の高さに脱帽するのう」
「えへへ、それだけが取り柄なんで」
「さて、脅威は去った。あとはヒガシに着くのを待つだけじゃが……」
カムイは先程まで海獣イッカクの子供――トリトン十三世が入っていた箱に近づき、舐めるように見る。
「この積荷の存在は知っておったのか?」
「ハーフェッドさんが、魔物の声が聞こえると言って船倉に入って見つけたので……」
「なるほどのう」
フリジールはハーフェッドをちらっと横目に見ると、ハーフェッドは、
「わ、私が捕まえて箱に入れてませんよ。魔物が好きならそんな酷い積み方なんてしません」
「海獣イッカクたちは積荷として積まれた子供の存在に気づき、救おうと体当たりしとったわけか」
「そうだと思います。けど不思議ですよね、わざわざ箱に詰め、海獣イッカクたちに船を狙うように仕向けたみたいで」
「乗っておる客人がヒノカミ一族と知った上での犯行かもしれんのう」
カムイは立ち上がると、船員たちに尋ねる。
「今乗船しておるヒノカミ一族の名は?」
「ええと確か、アマテラス様だったかと……」
「アマテラス……か」
カムイは顔に影を落とし、甲板の先を見据えて押し黙る。
「アマテラス様って一体?」
「ヒノカミ一族の最高位に鎮座する者につけられる名前じゃよ」
「海獣イッカクの体当たりを防げず、かなり船を揺らしちゃいましたし、怒っているんじゃあ」
「怒っとるなら全員首が飛ぶのう、物理的に」
「ひぇ……」
アレクたちと船員が青ざめた顔をするが、船長であるドンが高笑いをする。
「怒りゃしてねぇさ。あのまま体当たりが続いていりゃそうなるだろうが、紫電のカムイの名を聞きゃ怒りも冷めるさ」
「そうだと良いんですが……」
カムイとドンを除いた全員がヒガシに着くまでの間、天に祈りを届ける者や海を眺めて一人ごちる者、魔物と喋れた事を喜ぶ者がいたりと、甲板の上に混沌の渦を生み出していたのであった。
――そして船がヒガシに着いたのは、海獣イッカクの襲撃に遭ってから数十分後である。
ヒガシの港に着くと、港には人集りがぎっしりと詰まっており、皆、口々に「アマテラス様」と名前を呼んでいた。
「なんですかあれは」
「ヒノカミ一族はヒガシを仕切る豪族なのじゃが、アマテラスがここまで人を集めるぐらい、人望があるとは思っておらんかったのう」
「これまでのヒノカミ一族はどうだったんですか?」
「そうじゃのう……権威を振りかざして威張り散らかしてたイメージしかないのう」
カムイは遠い目をしてそう言うと、何故か悲しそうに見えた。
そして今からあの港に降り立つのだと思うとアレクたちは萎縮してしまい、身なりを整え始める。
「大丈夫よね? 私たち、浮いてないかしら」
「大丈夫だと思うけど……」
西側の冒険者が護衛していたと聞けば彼らは怒るだろうかと思案を挟み、ヒガシ出身のルナが居るからと言って大丈夫だとは流石に思えないアレクたちは、船長であるドンに助けを求めた。
「なんでい弟子さんたちよぉ、アレを見て驚いたのか? アマテラス様は人望が厚くてな。もし嫌ってんなら小舟を貸してやるぜ、それを使って別の場所からヒガシに上陸すればいい」
「ありがとうございます」
アレクたちはドンに感謝の意を示し、アレクがカムイを呼んでこようとする。
しかし、カムイは、
「ワシとは別行動じゃ。お主らはルナと同行して、海獣イッカクがどうしてヒガシの厄介者かを調べておくのじゃ、依頼があるならその依頼主に話を聞け」
「分かりました。師匠も気をつけて」
どこか上の空になっているカムイにアレクは不安を覚えたが、なるようになると思い、アレクはアリシアたちと合流して、小舟のある場所までドンに案内してもらったのである。
ドンに別れを告げ、手漕ぎの小舟で少し回り込むようにして海岸線に到着すると砂浜に乗り出し、アリシアたちが降りるとそのまま海から小舟を引き上げた。
「ヒガシの冒険者ギルドに向かわないと」
「あの馬鹿はヒガシじゃ有名人らしいから、別行動だって聞いてせいせいしたわ」
「今僕たちがいるのは」
アレクは懐から冒険者カードを取り出し、地図機能を利用する。
地図が浮かび上がり、現在地である海岸線に赤丸が記されていて、縮小するとヒガシの全体像が把握できた。
「真ん中の島に着いたみたいだ。各方角にある島には冒険者ギルドは無いし、好都合だ」
地図機能で目的地までの道案内設定をして、アレク一行は冒険者ギルドへと向かう。
何の問題もなく冒険者ギルドに着き、早速、海獣イッカクの討伐依頼があるか探すアレクたち。
そうすると真ん中を陣取るようにして依頼が貼り出されているのを見つけ、その内容を読む。
「『海獣イッカクの繁殖期のため、成獣の海獣イッカクを討伐されたし。海獣イッカク討伐の依頼を受注された方はこちらに連絡を――』だってさ」
「ふーん、厄介者として認知されてるわけね」
「そうみたいだね、だけど話を聞いてみないと分からないな」
依頼の受注手続きを済ませ、アレクたちはヒガシの中央に陣取る島の東側にある、依頼主がいる漁港へと向かう。
「ルナさん、気になっていたんですけれど。師匠とは道場仲間っておっしゃってましたよね?」
「それは話すと長くなるけれど、漁港にたどり着くまでの暇つぶしになりそうだから、みんなに話してあげる。まだカムイが魔刃剣を扱えなかった時分――」
――今から数十年前、ヒガシにこんな噂が立ち始めたの。
若い女性が道場に現れては門下生全員をぶちのめし回っているって噂が。
女性とは思えない剛剣の使い手だと、各道場に注意喚起を流布していたのだけれど、私の通う道場に彼女、カムイが現れたの。
当時、ヒガシにはヒガシ特有の剣、もといヒガシ刀と呼ばれる武器を使う前提の流派が根付いていたの。
まだ未熟な私たちが敵うはずもなく、カムイは門下生全員を負かしたのだけれど、一人、カムイを倒す事が出来た人物がいた。
『紫電流』、みんなは聞いた事はないだろうけど、ヒガシでは名の知れた流派で、それを代々受け継いできた道場主とカムイは勝負したの。
勝敗は朝から夜になるまで決着がつかなかった、けれど二人の殺陣を見ているうちに、素人でも分かるほど二人の剣術が優れている事に気づかされた。
決着がついた時、道場には冷めやらぬ熱気がこもっていた。
道場主の決まり手は、今のカムイが使う紫電一閃。
カムイは初めて敗北を経験したように見える顔をしていたんだけれど、道場主はカムイにこう告げる。
『剣術が極まっていても勝てない相手がいる。必殺の技を身につけろ、我が紫電流ならそれを叶えられる』、とね。
カムイは道場主に深々と頭を下げ、門下生の一人として紫電流を学び始めたのだけれど、嵐のような人だったわ、カムイは。
カムイはたった一週間ほどしか紫電流の道場に在籍しなかった、その一週間だけで紫電流の全ての技を覚え、勝てなかった道場主に勝負を挑み、勝つ事で道場を去った。
その後、カムイが冒険者として頭角を現し始め、ヒガシの治安が良くなったり、ヒガシに降りかかる火の粉を払うような活躍をしたりと、とにかくカムイはあらゆる依頼を受け、至る所で雷のような音が聞こえればカムイが現れたのだと噂され、自然発生する雷でさえ悪党が怯え怖じけるぐらいの存在になっていたの。
二つ名はそこから付いた名前。
ヒガシには青天の霹靂って言葉があるんだけど、まさしくそれね、当時のカムイはそんな感じ。
魔刃剣を会得したのは、刃こぼれせず、自分の匙加減で斬れ味を自在に変えられる武器を欲していたから会得したものね――
――ざっと昔話を聞いたアレクたちは各々で反応が違い、アレクは感心し、アリシアは当然ね、と鼻を鳴らし、トトはあくびをしていたものの、カムイの多彩な技術を会得する努力の塊な事に動揺する。
ハーフェッドとフリジールはあまりピンと来なかったみたいであったが、トトと同様に努力の塊である事に興味を示していた。
「なんでそんにゃに努力を惜しまないのか不思議で仕方ないにゃ。剣術、魔術、弓術に召喚術、魔法盾、この世に存在する技術を会得するにゃんて異常にゃ」
「異常なまでに技術を会得する中で、私にだけ吐露した話があるの」
「きっとカミサマって奴の話にゃ」
「そうそれ。カミサマって一体誰なんだろう……」
ルナが思案をする中、道の先を見ていたアレクが漁港を捉える。
「漁港が見えましたよ!」
「ん? ああそうね」
ルナの意識が漁港に向かい、アレクたちは漁港へたどり着いた。
漁港に着いた頃には日が天高く登っており、潮風がアレクたちの肌を撫でる。
「『ヒガシ東漁港』って名前だけど合ってる?」
「合ってるよ、依頼主は漁港を仕切る頭目、カエデ・リョウシって名前の人だね」
漁港の事務所に向かおうとすると、事務所の扉が大きな音を響かせ開く。
背が高いのか、ドアの仕切りをくぐるようにして現れたのは女性であった。
深い色合いの黒髪をバンダナで抑え、瞳は青、耳飾りをつけ、薄手の布であつらえた衣服を身につけていて、アレクたちの存在に気づくと、手を大きく振る。
「待ってたよー! 事務所で話しをしまーす!」
女性に誘われるようにして、アレクたちは漁港の事務所へと入っていくのであった。
次回は5月4日の16時半に投稿します




