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3.


「暑くないですか?」

「はい」


 案内されたガゼボは、周囲に大きな木があり、とても涼しい。サワサワと葉の音、風に乗ってフンワリと香る花。あ、ガゼボにも蔦が絡みついていて、そこにも花が咲いている。


 何処かで見たわ。あぁ。昔の私が好きだった花の一つ、確か藤の花。


「素敵なお庭ですね」


 つい物珍しさもあり周囲に気をとられ目の前のお見合い相手を見ていなかった。


「室内にしようかと思っていたのですが、此処を選んで良かった」


 お庭も素敵だけど、目の前の方は更に存在感があるわ。プラチナブロンドの髪の色、良いなぁ。睫毛も長くて羨ましい。


「シェリル嬢?」

「あ、髪の色などが羨ましいなと。ジロジロ見てすみません」


 先程からの私の様子は、失礼極まりないわよね。


「社交の場が苦手なのもあって。上手く話も出来なくて申し訳ございません」


 言葉にしていくうちに自分が出来損ない過ぎて悲しくなってきた。でも、事実だから仕方がないわね。


 夜会など人の集まる場を避けてきた結果であり、いわば自業自得なのは分かっているの。


「来ていただけてよかった。きっと断られると思っていたので」


 負のループに浸かり始めていた私は、出された紅茶に自分の顔が映るほど俯いてしまった時、驚くほど柔らかい声にびっくりして顔を上げてしまえば、声とは違い感情は読めな……ちょっとだけ笑ってる?


 出迎えてくれた時もだけれど訓練場で見かけるピリッとした空気を纏う彼とは違い過ぎて、どう返して良いのか困惑してしまう。


「あの、何故私なのでしょうか? もしかしたら別の令嬢の方と間違っているのではないでしょうか?」


 この空気なら会話が続くように思えたので今日まで疑問に感じていた事を尋ねてみた。


 少し目を見開いた彼は、否定を示すように首を軽く左右に振った。


「訓練場に来ている貴方で間違いない」

「あ、あの、邪魔をしてしまい申し訳ございません」


 休憩時間の時とはいえ、いつもカレンとはお話をしているので周りに迷惑だったのかもしれない。


「カレンは、悪くないんです」


 私が勝手に心配し過ぎているだけで、彼女はそれに付き合ってくれているのよ。


「彼女の事が大切なのですね」

「え?」

「いえ」


 今、大切と言った後に何か話していたけれど、声が小さ過ぎて聞こえなかった。


「急な話で戸惑っているかもしれませんが、私が貴方に会いたかったのです」


 何故どうしてと不思議でしょうがない。氷の騎士様とは挨拶くらいはしたかもしれないけれど、今日までまともに話をしたことがなかったのに。


 いくら考えても接点は騎士団の練習場のみなのよね。


「ご迷惑ではなければ、また会う事は可能ですか?」


 飾らない真っ直ぐな言葉と強い眼差しにどうしたら良いのかウロウロと視線を彷徨わせてしまう。


「最近、周囲からは貴方が私に好意をという話を聞きます」


そんな噂があるの?!


 いや、流したのってカレンかしら……。


「あの、それは」


 偶然、指を差した先にラングレイ様がいたんです!でも、そんな失礼な事を言えない。


「好きでもない訓練場に来ているのは、私ではなく彼女の為ですよね。少し気になるのが、貴方が頻繁に訪れたのは最近だ」


 ひぇっ! これは何かの尋問なのかしら。だとしても前世の話とか言えるわけもないし。


「私は、彼女に会いにいらしている貴方に惹かれたんです」


 眩しいモノを見るような目で笑みを浮かべた騎士様は、完璧な美しさで一瞬、見惚れてしまった。




*~*~*





「はぁ、疲れた」


 早めに辞して帰宅したはずなのに疲労感が凄いわ。


『よかった。では、また近いうちに』


 別れ際、断れなくてまた会う約束をしてしまえば、嬉しさが滲み出た笑みを向けれて。


 それが他の方にならば、まぁ、素敵ねと思えたのに。


「氷の騎士様と怖がられているみたいだけど、家柄、本人の騎士としての技量、あの容姿よ。婚約者なんて選び放題よね」


あぁ、どうしましょう。


「あんなに詰められて断るなんて無理よ」


なにより、これからよ。


「カレンに会いに行きづらいのが本当に困るわ」


 なによりも今日の話を彼女に報告してしまったら、更に事態が不味くなるのは確実よ。


「もう、嫌だわ」


 頭を抱えて悩むも良い案が全く浮かばなかった。



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