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06 限度


 ヒューネルミネアさんは、


 このジコハ山のすぐそばにある"ヒューネ湖"の精霊さん。



 とてもおとなしい娘さんで、ロージュさんとはこれまで仲良くやってこれたとのことですが、


 まあ、それってロージュさんサイドの言い分ですので。


 やっぱりこういう揉めごとは、片方だけではなく、ちゃんと両方の言い分を精査しないとね。



「なんか実感こもっとるのう、フォリスちゃん」

「もしかして、ディーケちゃんとルルナちゃんの間で、なんかあったのかのう……」


 なんも無いですってば。


 そりゃあ我が家だって、そこそこいろいろあったりしますけど、


 変にこじらすようなアレな乙女たちじゃないって、


 爺ちゃんも良く知ってるでしょっ。



「ごめんね、フォリスちゃん」

「やっぱり構い過ぎ、駄目じゃよね……」


 むう、それを言われると、


 フォリス、困っちゃう……



「あのう、私のことも」

「少しは構ってちゃん……」


 早いとこ問題解決しましょうね、ロージュさん。



 ---



 このお山近辺に張られたおしおき結界からは出られないロージュさんに代わって、


 交渉に向かうのは、勇猛果敢なふたりの男たち。


 僕と、リスト爺ちゃん。



 まあ、"ヒューネ湖"、歩いてすぐですし。


 って、ちょっとお爺ちゃん、


 なんで急にハグなんて、



 うひゃあっ ・ ・ ・



 ---



 ……マジ死ぬかと思った。


 ちょっと、爺ちゃん!


 飛ぶなら飛ぶって、前もって言ってくれないとっ。


 この間の落下事件を思い出して、おタマさんがひゅんってなったでしょっ!



「ごめんって。 フォリスちゃんも楽しんでほしかったんじゃよ」

「それよりどう、結構イケてるでしょ、わしの『飛行』術」


 いや、正直二度とごめんですわ。


 神さまが、ヒトを飛べるように造らなかった理由、心の底から理解できましたよ……



「残念じゃのう、いっしょにお空で浮き浮き出来るよう、これから修行編に突入しようかと思っとったんじゃが……」


 マジ勘弁ですって。


 僕は人間辞めたくないので、人としてヤッちゃいけない行為の無理強いとか無茶振りは絶対禁止!



「つれないのう、爺ちゃんさびしい……」


 それはともかく、そこで怯えたようなまなざしを向けている女の子、紹介してくれません?



「済まんのう、驚かせちゃって」

「久しぶりじゃの、ヒューネルミネアちゃん」

「元気しとったかの?」



「……元気……たった今、無くなった……」



 あー、めっちゃ怯えてますよ、かわいそうに。


 こんにちは、ヒューネルミネアさん。


 普通の人族のフォリスです。


 そっちのやんちゃ爺ちゃんはともかく、


 僕は怖くないですよ。


 見ての通りの平凡な男ですから、仲良くしてくださいね。



「……魔狩人フォリス……精霊乙女の天敵……乙女の貞操のピンチ………………(ぱたり)」



 うわっと、お嬢ちゃんが倒れちゃったよっ。


 どうしよ、爺ちゃんっ。



「急げフォリスちゃん、乙女のピンチを救うためなら、今すぐやることやらんと男がすたるぞいっ」

「お胸に耳を当てて心音確認、お口とお口で人工呼吸、お胸に両の手をあてがって心臓マッサージ」

「これぞ男の救命3点セット」

「今こそがんばれっ、フォリスちゃん!」



 えーと、合ってるけど……


 間違ってはいないけど……



 ---



 手首で脈を確認、吐息で呼吸を確認、おデコでお熱を確認。


 即行で組み立てたマイテントに、お姫さま抱っこでそーっと搬入。


 ふわりと寝かせて、とりあえず救難活動完了、と。



「手慣れたもんじゃの、フォリスちゃん」

「でも、爺ちゃん、ちょっとがっかり」

「物語り的に、いつも紳士が正解とは限らんのじゃ」

「いかに救難活動とはいえ、必要なシーンだってあるんじゃがのう」


 なんの物語りかは存じませんが、僕の物語りには必要無いです、そんなの。



 いや、真面目に聞いて、リスト爺ちゃん。


 普段のリスト爺ちゃんなら、倒れてる女の子をほっといて、そこまでおちゃらけたりしないよね。


 今日はいくら何でも度が過ぎてますよ、行動も言動も。




 ……リスト爺ちゃんだけじゃないぞ。


 シュレディーケさんも、ルルナさんも、サイリさんも、だよ。



 今日だけじゃない、


 最近、みんなの言葉使いとか態度が明らかに普通じゃないよ。


 もちろん僕も……



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