03 助っ人
サイリさんの不吉な予言、"フラグ"
さすがは"占い師"モルガナさんの現在進行形ツネツネパートナー。
僕のワヤな運命航路なんて、水平線までお見通しだったのです。
平和を謳歌するか弱き凡人に、ぬるりと忍び寄る騒動の種、
それすなわち……
「おはよー、フォリスちゃん」
おはようございます、リスト爺ちゃん。
今日は早いですね。
っていうか、僕が早朝から狩りしてたのは一目瞭然なのですから、
声掛け、もうちょっと遠慮してくれないと。
ほら、逃げちゃったよ、魔たぬき……
「済まんの、フォリスちゃん」
「わし、ちょっと急ぎの用事なの」
ほう、この呑気極まりない爺ちゃんがこれほどの大急ぎ、とな。
で、ご用件は?
「精霊のお姉さんが大ピンチ!」
「フォリスちゃん、助っ人、よろしくっ」
なぬっ、素敵な精霊お姉さまが超ピンチ!
急ぎましょう、リストお爺さまっ。
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ちゃんと話しを聞いた途端に、大荒れテンションが凪まくりっす。
えーと、ピンチな精霊お姉さんとは、
誰あろうローガンフージュさん、でしたよ……
いえ、がっかりとか思ってませんとも。
"ピンチの乙女に貴賎無し"
それこそがまさに、僕の生涯ポリシーにして人生スローガン。
いえいえ、ローガンフージュさんを"賎"だなんて、
全然思ってませんってば……
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精霊乙女のローガンフージュさん。
自ら巻き起こしたやらかしへのおしおきで、
ご実家のジコハ山にて、今まさに謹慎生活中。
ところが、これまで良い感じだったご近所にお住まいの精霊さんたちとの関係が、
なぜか突然冷え冷えに。
お姉さん悲しくて、ご自慢の精霊パワーも衰える一方。
乙女にだけはむやみやたらと優しい爺ちゃん、見るに見かねて、僕に相談、と。
えーと、リスト爺ちゃん。
それってがっつり、精霊さん界隈の問題でもありますし、
ただの人族の僕が首を突っ込んじゃっても良いのですか?
「だってフォリスちゃん、いっつもみんなに爽やか笑顔で言っとるじゃろ」
「"森での揉めごと厄介ごとなら僕にお任せ"って」
「それに、こっちの世界でのロージュちゃん関連の一番の関係者 兼 良き理解者だし……」
……分かりました。
森の狩人フォリスとしても、
乙女ふたりの暮らしを支える一家のあるじとしても、
困ってる精霊乙女さんをほっといたらいかんっ、ってことですよね。
「さすがはフォリスちゃんっ」
「それでこそ"精霊王"のマブダチ!」
あー、また都合のいい時だけ"精霊王"しちゃって……
まあ、ほかならぬローガンフージュさんの件でもありますし。
でも『転移』で直行する前に、
我が家の乙女たちにきっちり事情説明してから、ですよ。
そういうのって、どんだけこじれてるかによっては、
解決までの時間の見当もつかないし。
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ってな経緯で、揉めごと解決な出張狩人に。
いや本当は、僕なんかに期待されても困っちゃうんですけど、
早いうちにやることやっとかないと、後々こじれまくってから巻き込まれちゃって、
にっちもさっちもどうにもフルボッコ、みたいなことになりかねませんので……
うん、乙女事案でもありますし、まずは家族の了承を得ねば。