16 本業
ヒューネちゃんとの名残惜しげなお別れのご挨拶を済ませたマリモちゃん、
迎えにきてくれたサイリさんの『転送』トライク『ロージー』に僕と同乗、
そして、エルサニア王都にあるアシュトさん宅の屋上、『転送』車両発着場へ。
「……ばいばい……フォリスさん、サイリさん……」
今日はありがとう、マリモちゃん。
またね。
お見送りしてくれたアシュトさんご一家にご挨拶。
それから、サイリさんとふたり、ちょっとだけ、エルサニア王都城下街を散策。
「いつもご苦労さまです、フォリスさん」
いえいえ、サイリさんこそ、いつも送迎ありがとうございます。
「ヒューネ湖湖畔は静かで落ち着いた場所なので、僕も大好きなんです」
「湖畔の向かい側の観光地はアレですけど」
アレですか。
アランさん主導で開発されて一大観光地化したそうですが、まさかロージュさんが絡んでいたとは。
「もしかして僕たちが気付いていないだけで、こっちの世界にも精霊さんたちが関係していること、結構多いのかもしれませんね」
リスト爺ちゃんとかを見てると、楽しいことのためなら努力は惜しまないって感じですもんね。
戦争とかの揉めごとじゃなければ、あっちの世界と交流するのはすごく良いことだと思います。
「ただ、あまりなんやかんやに巻き込まれないよう、お互い気をつけましょうね」
えーと、僕の方はもう手遅れみたいです……
「……心中お察しします」
サイリさんの優しさが、心に沁みるのです……
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王都商店街でおみやげのお菓子を買って、一路我が家へ。
「おかえり、フォリスさん」
「おかえりなさいませ、ご主人様っ」
ただいま、
フォリス先生、今日もがんばってきましたよ。
「幼な子ふたりとの湖畔デート、お疲れ様、だな」
えーと、あのふたりは静かに楽しんでくれていましたが、
ロージュさんとのアレコレが……
でも、いろいろあったけど、やっぱり我が家がイチバンです。
いえ、シュレディーケさんがイチバンですっ。
甘えられるより、甘えたいお歳頃ですからね、僕。
「馬鹿もの……」
うん、今日もシュレディーケさんは、凛々しいだけじゃなく可愛らしさ満点。
「もう、おうちに着いて早々らぶらぶ全開って、さすがのルルナさんもお手上げですっ」
ルルナさんの素敵な満開笑顔も、お疲れ家長への何よりのご馳走ですよ。
「もうっ、ご主人様ったら……」
うん、今日もルルナさんは、元気いっぱいな上に可愛らしさ満点。
このふたりとの生活こそが、僕にとって幸せ家族の方程式への解答そのもの。
我ながら贅沢極まれり。
こんな感じでのんびりできるのも、
日々がんばってお仕事してるから……
……あれ?
最近仕事してたっけ、僕。
本業の狩人の方……
あとがき
シリアス話しが続くほど、より強い反動が襲ってくるのは当然の帰結。
おかげで呑気にも程があろうってくらいのアレなお話しに。
つまりは、これからもこんな感じでよろしくお願いします。




