表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

第8話

 翌日。いつも通りに食堂を訪ね、キノコを渡して定位置に収まる。

「注文は」

 ぶっきらぼうに尋ねてきたのは、ダークエルフの若い女性。それとウェイトレスの姿がミスマッチで、一瞬言葉を失う。

「……シチューと、パン。それと、猫耳の人は?」

「2号店の準備で忙しい」

 店長もだが、このウェイトレスも相当。というかあの猫耳のウェイトレスだけか、愛想が良かったのは。

 少しして、こればかりは丁寧にパンとシチューがテーブルへ並べられる。

「……どうかしたのか」

 俺が食べる所を監視でもしていたのか、ダークエルフが大きな胸越しに俺を見下ろしてきた。

「味が違うなと思って。これはこれで美味しいけど」

「昨日まではあの子が作ってたから。それに気付いたのは、お客さんが初めてだ」

「……追加で何か、辛い物を。それとジュース」

「待ってろ。すぐ持ってくる」

 斬新な接客のダークエルフを見送り、シチューを飲み干す。彼女に答えた通り美味しい、ただ俺にとっては味気ないシチューを。


 朝食用のパンとチーズを受け取り、いつもより早く食堂を出る。

 元幽霊屋敷の前を通ると、その周りに人が集まっていた。目に付くのは勇者とその一行。そして猫耳のウェイトレスも、その輪の中で笑っている。夢へと近づき不安と、それを上回る期待に満ちた顔で。

 俺は早足で通り過ぎ、無論声を掛けられる事も無く街を後にした。


 その後も毎日食堂へ通うが猫耳のウェイトレスは姿を見せず、やがて2号店開店の話が伝わってくる。

 話がスムーズに進んだのは勇者の力も大きく、何しろ今やこの土地の領主。許認可については彼が指示をすれば、それが全てまかり通る。

「野菜も食べろ」

 俺が注文したのはパンとシチューだが、ダークエルフはそれとは別に生野菜が山盛りになった皿を運んできた。

 ドレッシングが掛かっていて食べられなくは無いが、喜んで食べたい類いでも無い。

「2号店は、今どうなってる?」

「先週開店して、勇者達も手伝ってるらしい。あいつも、お前に来て欲しいと言っていた」

「分かった。明日、向こうに顔を出す」

 寄らば斬るみたいな雰囲気を漂わせたダークエルフのウェイトレスを見送り、食事を食べ進める。

 全ては俺の書いたシナリオ通りで、自分で決めた話。誰でも無い、俺自身が望んだ事だ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ