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【500万PV】織田勘十郎異伝〜自重しなかった結果、別家を立てて生き残ります。〜  作者: 八凪 柳一
第四章 坊丸東進

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第十五話 北条の覚悟

いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。

楽しんでいただけると幸いです。


また、いつも誤字報告をしてくださる皆様、とても助かっております。自身でも確認はしておりますが、また間違うこともあるかと思います。その時はよろしくお願い致します。(ただし、誤字報告だけで、お願いします。)


なお、送り仮名は、どちらでも良い場合は、分かりやすくする為、多めになっている事がありますが、誤字では無い事もあります。誤字の場合は修正し、誤字じゃない場合は、ルビで対応しようと思います。

 本来なら十年後、善徳寺の会見において甲斐武田と駿河今川と相模北条が結んだ甲相駿三国同盟は、攻守軍事協定・相互不可侵協定・領土協定・婚姻の四つの要素から成立し、甲相駿三国においても戦争・和平を繰り返しながらそれぞれの要素を満たして同盟関係の成立に至り、東国情勢に大きな影響を及ぼした同盟として機能したという論文を読んだことがある。


 だが、この度の織田三河家による、甲斐信濃遠江駿河四国への侵攻で、この歴史的な同盟はなくなった。武田晴信は死亡し、今川義元は虜囚となった。武田と今川の血縁が途切れたわけではないので、家名は残るが大名としての芽はなくなったのだ。そして北条は、これからの織田家との関係次第では、家名を残すだけの武家の一つとなるか、大名家として存続出来るかが、この坊丸との会見で決まる。


「左京大夫殿、この度は今川を河東の地に引きつけて頂き、ありがとうございました。」

「いえいえ、三河守殿も初陣で四国取りとはなかなか。」


 などと挨拶を交わした後に、今回の御礼である均等植え、草刈りなどを手軽にする農具、塩水法など、正条植えでの取り高をさらに増やす方法をまとめた書を渡す。しばらく、北条左京大夫殿や農政に関わっているであろう諸将が目を通しては唸っている。「こんな事が」「このような方法で」とか聞こえる。均等植えなど、コロンブスの卵みたいなもので、誰でも気づきそうなのに長年誰も気づかなかった方法だからだろう。


「いや、失礼した。それにしても、三河守殿、このような重要な事、本当によろしかったので?」

「構いませぬよ。左京大夫殿はこちらのお味方でござろう?」


 しん、と場が静かになる。坊丸も軽い気持ちで聞いただけなのに、北条方が息を呑む状況になるとは思っておらず、内心慌てているが、考えてみれば嫡男二人に小姓の真似事をさせている時点で、北条家は進退をかけて臨んでいるという考えに至った。姿勢を正し、優雅さを感じさせる事を意識しながら、謝罪し河越野戦に向けての手札を切ることにした。こちらの失態なので、後ほど厳かに出すつもりだった情報も出しておこう。


「左京大夫殿、失礼致した。北条家の覚悟を察する事が出来ず、申し訳ない。」

「あ、いや、三河守殿の気になさる事ではござらぬ。」


 史実では、今川が関東管領上杉憲政に内通し北条の背後を突く事で、「河越の戦い」は始まったとされてる。しかし、今川はもういない為、謀略により焦燥を煽り、油断している(風に擬態した)河越城を奪還する為の連合軍を起こしてもらう。


「お詫びに来年の関東の動きをお教え致そう。」


 誰かがごくりと唾を飲み込んだ。


「これには、上総介殿の助力が必要となり申すが、よろしいか?」

「某で良ければ何でも致そう。」


 何故か、上総介綱成が誇らしげに胸を張っている。左京大夫殿を始めとした北条方が羨ましそうにしている。


「気張る必要はござらん。河越城で油断している風に振る舞っていただければ、こちらで舞台を用意致そう。」

「はっ、承った。それで、その・・・、三河清酒などは・・・(ごくり)」

「融通致すが、戦中はあまり呑まれないように。」

「慣れれば何ともござらんよ!」


 いいキャラだなぁ。でも、こんなイメージなかったよ。そう言えば、商人たちが言ってたな。玉縄と河越はよく売れると。え?それって?などと思いつつ、続きを語る。


 鎌倉公方の後身である古河公方は、本来、関東十ヶ国を統べる存在である。その十ヶ国とは「相模・武蔵・安房・上総・下総・常陸・上野・下野・伊豆・甲斐」を指す。もっとも、室町末期にあたるこの時代の古河公方は完全なる傀儡でしかないが、古河公方自身は傀儡からの脱却を目指しているつもりの無能である。


「この度の織田三河家と北条の同盟は、関東管領ならびに古河公方の関東における影響力の弱体化に繋がります。そこで、その焦燥感を最大限に引き出し、集められるだけの関東の兵を河越に集中させるつもりです。」

「ど、どれくらいになりそうでしょうか?」

「恐らく十万弱。」

「か、勝てますか?」

「北条だけでも勝てましょうが、三河からも兵を出します。」

「北条だけでも勝てる?!」

「十倍二十倍の兵で相手をしている、死兵を知らぬ愚物たちが率いる軍ですぞ?夜襲で一発潰走でしょう。」

「な、成る程。」

「まぁ、河越城又は援軍の兵には死兵になってもらいますが、まぁ、大して死人はでないでしょう。油断しなければ。」

「むむむ。分かり申した。」


 この後、謀略と戦略について詰め、同盟については目出たく、締結となった。その夜、宴会となった。

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