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【500万PV】織田勘十郎異伝〜自重しなかった結果、別家を立てて生き残ります。〜  作者: 八凪 柳一
第二章 三河侵攻

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第九話 三河出陣前夜

いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。

楽しんでいただけると幸いです。


また、いつも誤字報告をしてくださる皆様、とても助かっております。自身でも確認はしておりますが、また間違うこともあるかと思います。その時はよろしくお願い致します。

〜信秀side〜


 ここにいる面子めんつに自己紹介など必要はないが、率いる兵力などを説明させて軍議に入る。本日は武衛さまもお越しだ。普段会うことのない者たちは、武衛さまに顔と名前を覚えてもらおうと必死だ。大和守家を除かねば、武衛さまの下で出世など出来はしないのに。武衛さまの横で太田和泉守(いずみのかみ)が筆早に名を書き連ねておる。まめな事よ。


「それでは軍議を始める。弾正左衛門尉、地図を。」

「はっ、これより、我が情報方の用意した地図を見てもらいましょう。坊丸!」

「はぁっ」


 坊丸が幕間に入ってきた。一瞬、童と思って侮る目もあったようだが、坊丸のあとに入ってきた小姓たちの持った立体地図じおらまというものに釘付けじゃ。分かるぞ分かるぞ、その気持ち。儂もそうであった。ほうけるよな。そんな精密な地図を見せられたら、今まで紙に書いておった地図が落書きのようじゃからの。しかも山の高さとか川の流れとか正確に作られておる。情報の精度とか確度とか全部持っていかれるよな。武衛さまも芸術品でも見るように目を細めておいでじゃ。武衛さまは無いであろうが、大和守などが軍議の後に坊丸を誉めて、吉法師を貶して、坊丸の怒気に晒されるまでの一連の流れが目に浮かぶようだ。坊丸の家来衆や小姓衆は日々それに晒されておるからのぉ。哀れなものよ。わ、儂?そんな失態はせぬよ。たぶん。


 お?そろそろ始まるかの。


〜坊丸side〜


「さて、説明を始めても宜しゅうございましょうか?」

「ふむ。これは良いものじゃな。」

「ははっ、武衛さまにお褒めいただくなど望外の喜びにございまする。」

「うむうむ。では始めよ。」

「はっ。それではまず戦力情報の追加です。ここにおられる山口左馬助(さまのすけ)殿以外にも、知多木田の荒尾作右衛門(さくえもん)殿が四百五十、同じく寺本の花井惣五郎(そうごろう)殿が四百五十、同じく坂部の久松佐渡守殿が四百五十、西広瀬の佐久間九郎左衛門(くろうざえもん)殿が四百五十、東広瀬の三宅右衛門大夫(えもんだゆう)が三百、伊保の三宅周防守(すおうのかみ)殿が三百、三河苅谷、緒川の水野下野守殿が千加わります。」


 尾張三河のジオラマに色付きの将棋の形をした駒を置いてゆく。青色が大和守家、水色が伊勢守家(丹羽)、緑色が弾正忠家である。


「私は参戦しませぬが、ここにいる勘助らが私の兵を連れて参ります。数は九百。他に、直臣の稲熊・木下・小出が四百ずつ率いまする。また、知多大野の佐治八郎殿が三百加わります。これが現状の兵力となりまする。」

「おお、坊丸とやら。織田連合軍は七千八百か。勝てそうか?」

「はっ、三河の国境を越え次第、また、それぞれの城に近づき次第、こちらに旗色を変える兵力も用意しておりますれば、三河安祥家はもはや風前の灯火でござる。」

「ほう。返り忠もあると?大丈夫なのか?」

「既に五十六の家から人質を一人二人ひとりふたり、我が館に預かっておりまする。ほとんどが嫡子か嫡孫のようでしたので、裏切る事はないかと。」

「ご、五十以上も。」

「はっ。続きまして、攻め方ですが・・・」


 西三河の戦略として今川方の各個撃破と安祥城奪取の方法、安祥家の撃破と岡崎城奪取の方法を説明して、続けて東三河の戦略を説明した。東三河も内応が多いが、今川方が割と固まっている。ここを撃破出来れば、武衛さまに出陣して貰う、遠江侵攻も見えてくると言って、戦術説明を終了した。


「流石じゃ!弾正、これが成った暁には、そちの申す通り、坊丸を安祥城城代とせよ。」

「ははっ。ありがたき幸せ。」

「それにしても、弾正忠家は安泰ですな。こんな嫡子がおありとは、うつけな嫡男ではなく、聡明な坊丸殿を次期殿に据え・・・。」

「あ゛あ゛ん?」

「ひぃ」

「やはりか。やめよ坊丸?武衛さまは・・・?あれ?」

「どうした弾正。あゝ、大和守が吉法師殿を蔑んだか?さもあろう。儂は和泉に聞いておったので、そのような事にならんよう気をつけておったでな。」

「坊丸?何故、大和守とその家臣だけ?ん?坊丸の家来衆や小姓衆もか?」

「対象くらい選べます。家来衆はこれから戦です。気を引き締めてもらわねば。」

「小姓衆は違うだろう?」

「これはいずれきたる戦に赴く為の試練です。常在戦場の精神で鍛えておるのです。」

「小五郎と言ったか?そちも大変なところに、人質(・・)に入ったの。」

「いえ、安祥家に残ったところで、いずれは元服なされた坊丸様に滅ぼされていたでしょう。戦場にてこの脅威に晒されるよりはだいぶマシです。坊丸様の本気はこんなものではないので。」

「あれを知っているのか。」

「目の前で見ました。」

「そうか、励め。やめよ、儂に向けるな!」

「父上、余計な事を述べれば、本気で逝きますよ?」

「今、“いく”という字を変えなかったか?」

「勘が冴えているようで何よりです。父上、ご武運を。」


 翌日、織田連合軍は出陣した。

信秀が小五郎に人質と言っているのは、実情を知らないから、ではありません。対外的に人質と言っているので、誤字ではありません。

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