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【500万PV】織田勘十郎異伝〜自重しなかった結果、別家を立てて生き残ります。〜  作者: 八凪 柳一
第二章 三河侵攻

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第三話 三河を奪る為に

いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。

楽しんでいただけると幸いです。


また、いつも誤字報告をしてくださる皆様、とても助かっております。自身でも確認はしておりますが、また間違うこともあるかと思います。その時はよろしくお願い致します。(ただし、誤字報告だけで、お願いします。)


なお、送り仮名は、どちらでも良い場合は、分かりやすくする為、多めになっている事がありますが、誤字では無い事もあります。誤字の場合は修正し、誤字じゃない場合は、ルビで対応しようと思います。

()()()()()() 元服式翌日、父の政務室に呼び出された。やはりかと思いながら、静々と政務室に向かう。途中、信広兄上と合流した。昨夜はあまり挨拶が出来なかった。初めての酒で酩酊していたのだから仕方ない。濁り酒ではない、密かに作らせていた清酒を大和守が帰ってから献じた。濁り酒を濾して酒精を上げたものだ。今まで10%以下の酒しか飲んだ事ない人がいきなり40%以上の酒を飲むとだいたいこうなる。それが初めてならば尚更だろう。清酒は他にも濁り酒に灰を混ぜたものも作っているが、まずは酒精の強いものをと思って出した。失敗したかもしれない。昨夜の酒宴は蟒蛇うわばみしか生き残らなかったと言っておこう。


 信広兄上は律儀にも、昨夜お渡しした刀剣の御礼を言ってきた。相州伝の名刀を渡した。これから五郎三郎兄上には何かと活躍の機会があろう。その祝いに大量にある正宗の一つを渡した。前世で読んだ『名刀大全』では「青龍月影正宗」という名前だったと記憶している。ちなみに次郎介兄者には、同じ相州伝でも銘広光の短刀を渡してある。


 そうこうしているうちに、父の政務室に着いたので、室前の小姓に入室の許可を取ってもらう。ままあって「入れ」と言われたので入室すると、平手・林などの家老衆と信康叔父上・信光叔父上・信正叔父上がいた。これは、何かが起こるのは間違いなさそうだ。


「五郎三郎、坊丸よう来た。」

「秀兄上、五郎三郎は分かりますが、坊丸は?」


---なるほど、信康叔父上は

---父を「秀兄上」と呼ぶのか


「苅谷の水野から岡崎の動きが伝わってきた。五郎三郎にはそこで初陣を果たす。岡崎の動きは水野からだけではない。知多の佐治からもだ。坊丸宛だったぞ。何をしている?」

「必要になると思い、調略を少々」

「本当に少々か?忍び衆を任せてから、旺盛的に動いているようだが?」

「成功せねば、調略は意味をなしますまい。寝返りの予定を伝えても、実行されねば大言壮語に如かず。」

「ひ、秀兄者?齢五歳の坊丸に忍び衆を任すのは如何かと思いますが?!」

「仕方なかろう。坊丸の性格のせいだろうが、武家の者が蔑むせいで坊丸の元に次々に忍び衆が集まり、役に立ちたいと働いているとか。忍び衆から忠誠を受け取る存在ぞ?任せるしかあるまい。」

「坊丸。お主の元に集った忍びはどれくらいいる?」

「はい、掃部頭叔父上。万を超えておりまする。」

「ま、万?!」

「尾張の山々では足りませぬので、山伏衆にお願いして美濃・三河・遠江・伊勢の山々に散らしております。」

「ま、まさか山伏衆もか?!」

「はい、父上。他にも河原衆も協力してくれますよ。」

「お前は何を目指しておるのだ。」

「吉法師様による日ノ本の静謐。」

「わ、儂じゃ無理なのか?」

「父上があと百年生きるので有れば、父上でも大丈夫かと」

「ひゃ、百年。そ、それでは吉法師でも無理ではないか?」

「吉法師様ならば、三十年から四十年も有れば可能かと。」

「ぐぬぬ。」

「まぁまぁ、秀兄者。吉法師はうつけと呼ばれて・・・すまぬ坊丸怒るな。お主の怒気はまずい。小姓どもが泡を吹いておるではないか。吉法師はそんなにか。」

「孫三郎叔父上、ここにいる者の皆が他の者には漏らさないのであれば、吉法師様の行動理由を話しますが?」


 父を含めた全員が「お願いしたい。」と姿勢を正してきた。


「楚の荘公の故事『鳴かず飛ばず』に倣って行動されております。」

「まことか!?確かにそれならば、あり得るか。日ノ本の静謐。我らは坊丸、ひいては吉法師を信じて公子(しょう)とならぬように行動せねばの。」

「流石は与次郎叔父上。その為には、早死はなりませぬよ。お子が間違う可能性もありまする。」

「それは神託か?怖いのぉ。熱田明神のお告げは守らぬとの。」


 その後、綿密な話し合いが行われ、三河侵攻の日程が決まった。安祥城のみならず、他の家も落とそうと密かに考える坊丸が不気味に見えたのは父信秀だけかもしれない。

鳴かず飛ばずの故事は下記の「 」の中が由来です。


〔十八史略、春秋戦国、楚〕

歴穆王至莊王。即位三年不出令、日夜爲樂。令國中、敢諫者死。伍擧曰、有鳥在阜。「三年不蜚不鳴」。是何鳥也。王曰、三年不飛、飛將衝天。三年不鳴、鳴將驚人。蘇從亦入諫。王乃左執從手、右抽刀、以斷鐘鼓之懸。明日聽政、任伍擧・蘇從。國人大悦。又得孫叔敖爲相、遂霸諸侯。


【書き下し文】

穆王を歴て荘王に至る。位に即いて三年令を出さず、日夜楽しみを為す。国中に令す、敢えて諫むる者は死せん、と。伍挙曰く、鳥有り阜に在り。三年「蜚ばず鳴かず」。是何の鳥ぞや、と。王曰く、三年飛ばず、飛ばば将に天を衝かんとす。三年鳴かず、鳴かば将に人を驚ろかさんとす、と。蘇従も亦入って諫む。王乃ち左に従の手を執り、右に刀を抽いて、以て鐘鼓の懸を断つ。明日、政を聴き、伍挙・蘇従に任ず。国人大いに悦ぶ。又孫叔敖を得て相と為し、遂に諸侯に覇たり。


ちなみに、本文に出てくる公子燮は

莊王の仮痴不癲(かちふてん。兵法三十六計の第二十七計にあたる戦術)をするに至った原因となる謀反人で、配下に裏切られて死んだとされています。

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