第十八話 軍師山本勘助
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また、いつも誤字報告をしてくださる皆様、とても助かっております。自身でも確認はしておりますが、また間違うこともあるかと思います。その時はよろしくお願い致します。
勝幡でしばらく平和な日々を過ごしているうちに、半三が一人の片目片足のおっさんを連れて戻ってきた。
---よっしゃ!
---よくやった半三!!
半三に頼んで、駿河を探してもらっていた牢人は、山本勘助である。山本勘助は駿河国富士郡山本の吉野貞幸の四男に生まれた。その後、三河国牛窪城主の牧野氏の家臣大林勘左衛門の養子になっていた。しかし、勘助が元服し武者修行の為、諸国を漫遊している間に勘左衛門に実子が生まれた。大林家を廃嫡になったものの、実家吉野家に戻る事も出来ない。その為、生まれた地の山本を姓として名乗った。今川家に仕官する為、天文五年に実父先室の実家である庵原氏を頼った。しかしながら、諸国漫遊の際に受けた傷のせいで、今川義元に忌避され武田信玄の重臣板垣駿河守に見出されるまでの九年間を無聊を託つ事になる。
今は天文七年、今川義元に二度三度断られ失意のうちにいるか、後北条氏との戦いで武功を上げるも仕官に繋がらず鬱々(うつうつ)としているかどちらかだと思っていた。しかも今なら九英承菊(還俗して庵原左衛門尉を名乗る)も危険視していない。また板垣駿河守も知らないこの時期なら、無難に連れて来れるはずだとも思っていたのである。
「半三、良い武者ぶりの者を連れてきたの。そちらはどなたじゃ?」
「良い武者ぶり?どういう事じゃ、童」
「これ勘助殿。」
「良い半三。勘助殿と申されたか?勘助殿は確かに片目で片足も無い。公卿かぶれなどが見れば、醜いと言うやもしれぬ。しかし、それは名誉の負傷なのでござろう?ご自身の傷に嫌悪感がござらん。ならば、良い武者ぶりでござろうよ。」
「くふ。嬉しい事を言うてくれる。そうじゃこれは名誉の負傷じゃ。」
「強い武者なら、傷がある事でさらに強みが増す事もあろう。無傷ののっぺり顔に凄まれるのと傷だらけの顔に睨まれるのでは怖さも違う。良い武器ではござらんか。」
「ふはははは。良い武器か。さようさな。ところで、童、あ、いや、すまぬ、坊丸様であったかの?」
「構わぬ、三歳児じゃ、童で間違いない。好きに呼べば良い。して、何か聞きたいことでも?」
「もしもじゃ、五体不満足で武者働きが叶わぬと言う者が仕官して来たら、坊丸様はどうされる。」
「肉体労働が無理なら頭脳労働をしてもらう。出来ない者に出来ない事をさせるなど上役失格じゃ。なら出来る事をさせれば良い。作事をする際に、使う場所に適した木材を選ぶであろう?あの行為を適材適所と言うそうじゃ。ならば、人も適材適所で働いてもらった方が効率が良かろう。」
「適材適所。良い言葉ですな。某、義足を使えば、生活にも戦場でも問題ござらん。某を適材適所に使っていただけまいか。」
「分かり申した。先日傅役が変わったばかりですが、武においては土佐守、智においては勘助を頼るという事でいかがであろうか。」
「某を傅役の一人に?!流石に無理ではござらんか?」
「それは父が決める事。頼んでみます。子煩悩な父ならば、おそらく大丈夫かと。」
しばらく勘助と話をしていると、吉法師がやってきた。相変わらず愛くるしい。
---やばい
---シスコン化している
吉法師は勘助を見て一瞬固まった後、壮絶に叫びながら褒めちぎっている。吉法師はあれだ、傾奇者やら厨二チックな者をやたら気に入る性格をしている。勘助の姿は、右足に義足をして、右目に包帯を巻いている状態だ。言わば、「右目が疼き、右足は闇の力に取り込まれた」感じなのだろう。こんな表現をすると、いい歳したおっさんが厨二病患者に早変わりだ。勘助は褒められ慣れていない為かわたわたしている。そろそろ助けるか。
「兄上どうどう」
「坊丸、わしは馬ではないのじゃ」
「兄?」
---おぅふ
---勘助さん、あなたもですか
先日、土佐守と吉法師が出会った際にも、土佐守の剣豪っぷりにいたく感動した吉法師が、土佐守に纏わりつくという事件が起きた。その際に、土佐守も同じ反応をしており、どうやら吉法師が姉である事に気づいたようだった。そして、今も勘助が気づいている。
「勘助、それ以上言うなよ。」
「お、なんじゃ?土佐守と言い勘助と言い、優れた御仁は儂の本性に気付くのが早いの。じゃが、坊丸の為にも黙っておいてくれると嬉しいの。」
「失礼致した。吉法師様、坊丸様の為に、そのお言葉、しかと守り通して見せまする。」
「良き良き。」
〜織田花side〜
うふふ。私の可愛い坊丸が勝幡に帰ってきたわ。吉法師も可愛いは可愛いのだけれど、あれは違うの。私の大事な三郎様を取ってしまう存在。だからダメ。でも、坊丸も最近おかしいの。吉法師に取られてしまったのかしら?それはダメよ。私のものだと、刷り込んでおかないと。
やっと大学允がいなくなったと思ったら、怖いおじーさんがいるし、でもでも、今ならあのおじーさんはいないはず。武練場の方にいる時間だもの。さぁ、そこの角を曲がれば、私の坊丸が・・・、ひぃ!
「母上、それ以上その態度ならば、いかに坊丸と言えど許しませぬぞ」
「良いのです、坊丸様。私が下がりましょう。」
「それはなりません。勘助は私の頭脳。頭と体が別々なのはおかしいでしょう?」
「若!」
ああ、なんて怖い存在でしょう。また一段と坊丸が遠くへ行ってしまったわ。あれは怖いわ。坊丸もなんだか怖かったわ。私の可愛い坊丸はいなくなってしまったのね。仕方ないわ、やっぱり三郎様に次の可愛い子を作ってもらわないと!
〜信秀side〜
最近、花がおかしい。いや、坊丸が自分の思うままにならぬと分かって、次の子が欲しいのであろう。だからと言って昼間っから雰囲気もなく迫ってくるのはどうかと思う。いや、あの腰はたまらんのだが。まぁ、良い。今日も坊丸が面白き御仁を連れてきたらしい。吉法師がやたら喜んでいた。会いに行かねば。
ふむ。凄まじい御仁であった。武略から作事知識、あの様な傑物を見た目で近づけぬとは治部大輔も大した事ないのぉ。あの御仁は織田家のこれからの為には欠かせぬ存在となろう。
しかし、坊丸の周りには傑物が集まるのぉ。彼奴は吉法師の影として生きるつもりでいる様だが、やる事もなす事もとても影武者で済む存在ではなかろうに。まぁ、好きに生きて良いようにしてやるのも親の努めよ。傅役に望んでいるのだし、そうしてやるのが良かろう。坊丸の傅役二人が他国者ならば、次期当主にと思う者も減るだろう。坊丸ならば、それも利用して全て排除してしまいそうで怖いところはある・・・か。




