第十七話 那古野城謀奪
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熱田で伊勢守と別れ、ようやく勝幡に帰ってきた。自室で旅装を解き、寛いでいる。大学允は父に相談があると部屋を出て行った。しばらくすると、ドスドスドスとけたたましい足音が近づいて来た。父信秀だろう。城に戻って知ったのだが、しばらく父信秀は城にいなかったらしい。父は攻め立てるのは好きだが、迫られるのは好きではないらしい。父の性癖を話すのは虚しいものだな。
「坊丸、よう帰った。中村での事聞いておる。収穫が本当に上がるなら、儂の直轄領全てを開墾してもらうからの。」
---うげ
---マヂっすか?!
「ははっ、お任せ下さい。」
「ところで、そちらが塚原殿か。」
「は、土佐守とお呼び下さい。」
「相分かった。突然で申し訳ないが、大学允が傅役を辞した。土佐守殿に傅役をしてもらいたい。宜しいか?」
「ははは、まぁ、致し方ないかと。分かり申した。誠心誠意、御守り致そう。」
「さて坊丸、那古野に関して話があるとか?なんて目をするのだ。怖いわ。」
謀略に関われると知って、鋭い目になってしまったようだ。目を溶きほぐす。
「はっ、人払いを」
「良い。ここには儂とそちの傅役・家老しかおらぬ。」
「はっ、父上は和歌が堪能と伺いましたが間違いございませんか?」
「そうよの。去る天文二年に山科内蔵頭様と飛鳥井権大納言様が御下向された際に和歌と蹴鞠をお教え頂いたの。」
「その際、今川竹王丸、現在の今川左馬助殿も招かれておりませなんだか?」
「おお、おったの」
「であれば、旧交を深めると称して、那古野で連歌会を催してもらっては?」
「ふむ。して、どう奪る。」
「そうですな、三四日したら病気になってください。十日ほどしたら家臣に遺言を伝えると言って兵を引き込めば楽に落とせましょう。左馬助が躊躇うようなら私は泣いて縋る幼児を演じましょう。」
「そちもついてくると?いやいやまずかろう?まだ三つなのだぞ?」
「あくまで保険にござる。幼児がおれば、謀略があるとは思いますまい?」
「うぬ。まぁ、そうだろうが。」
「どうしてもついて行きたいと言われてと子煩悩ぶりを見せれば、油断も誘いやすいかと。」
「ぐぬぬ。吉法師が反対しそうだが・・・」
「そちらもお任せください。なんとでもしましょう。」
「はぁ、仕方ないの。しばらく、準備にかかる。用意が出来たら、連れてゆく。」
〜信秀side〜
坊丸がようやく中村から帰ってきた。村全体を碁盤の目のように作り直したらしい。中村で坊丸が図を見せながら語った事によれば、一定間隔を空けて規則正しく植える事で収穫量が増すという。また、種籾も選別し苗にした後、植える事でさらに収穫量が増えるそうな。眉唾な話だが、加護が本当ならそうかも知れぬと思えてしまう。
既に巷では、「熱田明神」と呼ばれているようだ。岩室の爺様は嬉々として話していた。もう懐柔され切っている。他にも忍び衆を手下に加えたとか。吉法師の影を担うつもりなら、影衆を任せるのも手かもしれない。三歳児のすることではないが。
熱田では、尋常ではない量の刀剣を手に入れたらしい。献上された長船景光の刀も素晴らしい。なかなか良い物を寄越す。他にも気になるが、まぁ、良いだろう。
大学允が傅役を辞したいと言う。大学允もまだ若い。様々な失敗をして、失意の様子だ。熱田から初老の剣豪を連れてきたと言うし、その者に傅役をさせてみようか。受けてくれれば、坊丸が喜ぶ気がする。
坊丸が怖かった。つい口に出してしまったが、三歳児のして良い顔ではない。と言うか、三歳児が考えて良い謀略では無い。人の興味あるものを利用するなど、謀略の基本ではあるが、それで城を奪われたら駿河には帰れまい。実行する側だが、今川左馬助に心底同情する。三歳児に嵌められたと知ったら、恥ずかしくて生きていけるかも不安だ。




