第十四話 ゲーム感マシマシ
いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけると幸いです。
また、いつも誤字報告をしてくださる皆様、とても助かっております。自身でも確認はしておりますが、また間違うこともあるかと思います。その時はよろしくお願い致します。
「ほぉ、面白い」
五十代くらいのじーさんが面白いものを見たように微笑むと、伊勢守の肩に手を置いた。伊勢守は戸惑いつつも姿勢を正す。
「失礼。某は上野国長野家家臣、大胡伊勢守と申す。神童と噂の坊丸殿で御座ったか。その齢で鋭き眼力、お見それ入り申した。」
---───キO(≧∇≦)Oター───
---剣聖上泉信綱!!
「ふむ、儂も名乗るか。鹿島の住人、塚原土佐守と申す。北畠侍従に剣術の手解きをした帰りに御座る。」
---伝説の塚原卜伝!
---無敗の剣鬼!
「やはり、高明な剣術家で御座ったか。失礼な目を向けてしまい申し訳御座らぬ。」
「ふむ、何をしたかお尋ねしてもよろしいか?」
「はい、土佐守殿。某、人の能力を見る目をもって生まれました。それゆえ、不躾ながら、気になる人にその力を行使しておりました。今まで誰からも気づかれませんでしたので、お二人に気づかれ驚いておりまする。」
「ほぉ、噂の熱田明神の御力ですな。であれば、儂らは名乗らずともお分かりであったか。」
「あ、いや、土佐守殿。誠に情けなき事ながら、振り向かれたお二人に驚き、何も確認出来もうさなんだ。」
「いやいや、坊丸殿は数え年三歳なので御座ろう?情けない事は無かろう?」
「有難きお言葉、感謝します伊勢守殿。さて、ここで立ち話も店主にご迷惑でござろう。店主これから刀を買うから安心せよ。土佐守殿、伊勢守殿御近づきの印に気に入ったものはこちらで買いましょう。店主、その二本を除きほかに十本ほど見繕ってくれ、そちらも合わせて払うゆえ。」
「「良いのか?」」
「問題ござらん、土佐守殿、伊勢守殿。土佐守殿は歴史に名を残す無敗の剣鬼。噂とは言え、幼名を覚えて貰えるなど望外の喜び。御礼に刀一本で良いのかと迷うほど。伊勢守殿は本姓を名乗られた。剣術家として諸国を回られる時は、別姓だと聞いたことのある剣豪殿で御座ろう?それに未来の剣聖殿で御座る。そんな方に礼を尽くされたのだ、当然で御座る。」
「ほぉ、儂は【無敗の剣鬼】か。」(ニヤニヤ)
「け、【剣聖】で御座るか?!(テレテレ)失礼、礼を尽くされたのは、坊丸殿が先。あの見事な立ち謝礼に最善を以て返しただけのこと。」
また長話が始まりそうになったが、なんとか抑えてもらい刀を選ぶ。備前伝の良い刀ばかりだが、出処の怪しい物もある。ここもゲーム感が否めない。理由は簡単だ。この時代のこの時期ならどこかの神社に奉納されているはずののちの国宝とか、とある時代の将軍に献上されたのちの重文とか、この時代にあったとされる備前伝が揃っていた。
特に福岡一文字派の刀が十五本もある。一つ一つ鑑定すれば名前から性能まで出るのだが、百本以上ある状態で全体に鑑定をかけると流派と呼名が出てくる。これは人の集団でも同じで、人の場合は氏名が出てくる。ちなみに呼名が無い時は銘になるようだ。これがさらにゲーム感を増す。この時代にあり得ない呼名なのだ。どう考えても江戸時代か明治期以降の鑑定書に書かれた名前だ。ここにある十五本のうち三本は信長が武家や部下に与えたと言われるもので、呼名も「浅井」「樊噲」「長篠」となっていた。全部買わないとダメな気がしてくる。
---でもお高いんでしょう?
前世の記憶では、個人所有の名物をん千万円で某美術館が買上たとかニュースで見た記憶があった。とりあえず聞いてみるか。
「店主、呼名付と呼名無はいくらだい?」
「呼名有は銭十貫で、呼名無は銭五貫だな。」
意外と高くない。いやいや、一貫文は令和の時代なら百二十五万円くらいだから高いだろうと言う方もいるだろう。だがそれは江戸時代の銀一貫だ。ここで話に出て銭十貫とか銭五貫とかは永楽銭などの銭である。つまり銅銭なのだ。永楽銭1000枚が銭一貫となる。令和の価値に直せば、銭一貫が一万二千円くらいだろうか。まぁ、六万円も十二万円もいいお値段なのだが、銀五貫・銀十貫とした時の千二百五十万円や二千五百万円と比較して「意外と高くない」となるのだ。
「全て買うといくらだ、店主。」
「「「「は?」」」」
「ここにあるだけでよろしいか?」
「まだあるのか?」
「近くに借りた空き家に残りがあるぞ。全部で三百五十六本、あ、いや三百五十六振りか?」
---多いわ!
---『名刀大全』の備前伝全て揃うぞ
「ふむ。銭十貫のものだけなら何振りある?」
「百三十四振りだの」
「買ったぁ!!」
「「「「ええ〜」」」」
最終的に百三十三振り購入した。どうしても買えない一振りは古備前派延房のとある剣とだけ言っておこう。静原衆か八瀬童子のどちらかを通して返上しても良いが、何を言われるか分かったものではない。




