第九話 なかなか危なかったようだ
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9/12 12時頃のランキング
【歴史(文芸)】
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【総合】
日間107位、週間116位
また、いつも誤字報告をしてくださる皆様、とても助かっております。自身でも確認はしておりますが、また間違うこともあるかと思います。その時はよろしくお願い致します。(ただし、誤字報告だけで、お願いします。)
なお、送り仮名は、どちらでも良い場合は、分かりやすくする為、多めになっている事がありますが、誤字では無い事もあります。誤字の場合は修正し、誤字じゃない場合は、ルビで対応しようと思います。
日吉が凧糸が切れたように、眠りに落ちた。生命を奪ったつもりはないが、前世に読んだラノベのように前世の記憶が魂に結びついていたりしたらかなりまずい。廃人になっていないか不安で、再度鑑定したがステータスは奪ったもの以外、特に変化はなかった。特殊特性と称号は、強欲の影響で復活しないが、普通の特性は成長によっては復活する。とりあえずホッとした。
「あらあらまあまあ、日吉が寝てしまいましたね。お前さまも嬉しいのは分かりますが、日吉をいつまでも坊丸さまの膝の上に置いていてはダメでしょう?」
眠っている日吉をなかさんは抱っこして、部屋を去って行った。弥右衛門は先程までの気恥ずかしさからか、顔を真っ赤にして平謝りしてきたので、「よいよい」と許し、夕食の時間はお開きとした。
戻って来たなかさんに寝室を案内される。普段は子ども部屋らしい。申し訳ない。長女のともは両親と寝られるので嬉しいらしい。先程の夕食時にともとは少しばかり話をした。ともは伐採時に最後まで手伝いたいと抵抗していた女の子だった。薪拾いだけだったが、村の役に立ったことが嬉しかったと話していた。
部屋で寝るのは私だけだ。大学允と美作守と蔵人は宿直番、交代で廊下で寝る。この時代、布団などない。板間に寝るだけだ。当然ながら掛布もない。着替えに持ってきた服か茣蓙を掛ける。いずれ綿花に着手するつもりではいるが、綿花は肥料を選ぶ。干鰯がふんだんに手に入る環境でないと無理だ。色々考えなければなるまい。
三通目となるあの手紙を見る。どうせ、他人には聞こえないと分かっていても、気配察知に引っかかっている者どもがこちらに来る前に済ませておきたい。
いつものようにボカロ風だった。それによれば、大変危険な事をしたのだと自覚することになった。何が危なかったかと言えば、称号奪取である。称号が進化した際についた[Ⅱ]は、何人分の記憶を有しているかを示すもので、最大でⅦまで進化する。そして、ここからが重要なのだが、奪う側への影響だ。固有スキル「前世の記憶」を有していない場合、奪取途中でこのスキルが生えれば、良くて疲労困憊、悪くて衰弱と、生命は取り留めるもののぐったりする。生えなかった場合、良くて廃人、最悪の場合は死に至っていたようだ。事前に取得していればなんともない。取ってて良かった「前世の記憶」である。
また、奪われる側には覚醒状況が影響するらしい。覚醒していない場合は、良くて疲労困憊、悪くて気絶。覚醒している場合は、良くて廃人、最悪の場合は死に至るようだ。この覚醒は人によってまちまちで、衝撃的な事が起こった場合に覚醒しやすくなる為、いつ覚醒するかも分からないようだ。私のように覚醒状態で転生する場合もあるのだから。元服時か婚姻時には必ず覚醒するらしい。手紙ではそう締め括っていた。
さて、まずいことになった。美濃で今年生まれるであろう転生者にいつ会えるかが分からない。運が良ければ、聖徳寺会見だろうか。あたりをつけている美濃のあの人は、昨年生まれるはずだ。そして聖徳寺会見の時は、斉藤利政の小姓として、近臣の猪子兵助とともに街道沿いの小屋からうつけた信長の様子を見ていたという俗説もあるくらいだし。年齢的には、斉藤義龍の小姓の方がしっくりくるが、実家が利政寄りだった事を考えればそうなるのだろう。だが、絶対に元服後だ。おそらく覚醒しているだろう。だいぶ歴史が変わるだろうが、仕方ない。
三河の方の転生者にあたりをつけたあの人は、六歳の時に尾張に運ばれてくるだろう、見聞して受入拒否して追い返す予定だが。まぁ、衝撃で覚醒していたら、やむなしだ。