別視点 あれはあかん
いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけると幸いです。
また、いつも誤字報告をしてくださる皆様、とても助かっております。自身でも確認はしておりますが、また間違うこともあるかと思います。その時はよろしくお願い致します。(ただし、誤字報告だけで、お願いします。)
なお、送り仮名は、どちらでも良い場合は、分かりやすくする為、多めになっている事がありますが、誤字では無い事もあります。誤字の場合は修正し、誤字じゃない場合は、ルビで対応しようと思います。
〜信樂院顯如side〜
昔から良いものも悪いものも見えてしまう体質やった。人には「生まれた時から修行してる」とか物理的に不可能な説明をして法主になるための勢力を固めてきた。
わいや證如は兄弟おらへんけど、円如の兄弟や実如の兄弟は多い。だいたいは寺を継いではるけど、そうでない従兄弟や再従兄弟やひょっとこはぎょーさんおる。あ、ひょっとこはなんやろ?なんで出てきた?まぁ、ええか。
つまり、わいに本願寺を継ぐ資格無しと見られたら、ほかの者が継いでまう。農民に生まれとったら、土蔵に押し込められて一生を終えてしまうような「見える」異能も法主の一族なら、親鸞様かお釈迦様の権能みたいに崇めてくれる。ぎょうーさんおるひょっとこどもから一歩前進や。ん?ひょっとこ?もう出てこんでええよ?
円如もそーやが、證如も長男作ったら精が尽きたのか早死にしおった。とりあえず、證如と同じように九条家の猶子になって、法主を継いだが、浄土真宗の信者がどんどん減りおる時代になっとる。
一番の敵宗派は、新興勢力の坊丸教や、いや、わいが五歳の頃に長勝教に変わったところや。あそこはご本尊はんが、現世に顕現されとる厄介なところや。やれ予言が当たるだの、やれ声をかけてもらえば力が湧くだの、やれずーっと豊作が続いてるだの、やれ神さんみたいに慈悲深い人だの、ほんまに困るくらいええ話しかない。
ええ話しかないところなんかあるわけないやろ。うまく隠してるだけやで。本願寺に諜報を売ってくれよる小角衆の元締や。小角衆が隠してるんやで。まぁ、売ってくれよる言うことは、まだ、本願寺にも価値があるんやろな。あそこが関東を落とす前には売らんなったって聞くしな。本願寺の諜報網は修行行脚の信徒さんやから、買わんでもある程度はやっていけるが、東海探題家の情報はほぼ無しや。
しかも、修行に行って帰って来んなる信徒さんの多いこと多いこと。あ、死んだなんちゅー話やないで、改宗しますっちゅう、最後のお手紙もらうからな。涙ちょちょぎれるわ。
本願寺だけやないけども、浄土真宗の一大勢力のあった三河国もあの宗教のご本尊はんが国主になってから、どんどん減っていき、今では廃寺や。そして、誰もいなくなったや。まぁ、住職やら信徒さんが寿命以外で死んだって話は聞かんから、まだ生きとるかもしれんけどな。
宗教家からしてみれば、信者奪われとんのやから戦争みたいなもんやけどな?奪い奪われが普通の宗教界において、無人になるまで奪われるなんて話は仏教伝来から今日まで聞いたことないで?そら、数百年かけて無人になるって話はあるで?やけどな、数年は無い。そんなん無理やで。
ご本尊はんの話をこんなぎょーさん知っとるかちゅうと、手元に小角衆が諜報売りに来るたんびに置いていく語録・行動記録っちゅう名の経典が数十冊あるからや。面白い読物として読ましてもろうとる。予言も全部当たっとるわけや無い。ご本尊はんが先に攻め落として無かったことにしたり、人物を引き留めて巻き込まれんようにしとるもんもある。それも含めて怖い話や。
こちとら見えるっちゅうても、悪しきもんは亡霊やったり生き霊やったり、良きもんは守り神やったり加護やったりするだけやで?しかも当人が目の前におらんと見えへん。ご本尊はんは目の前におらんでも、やれどこどこで謀反が起こるだの、今年中には誰それが死ぬだの、どこぞの誰それが病気や攻め時やぁだの。ありえへんありえへん!ホンマもんやん。やばいで。
実は、今年になって、小角衆が最後の諜報です言うて、お寺ん屋根の上でサボ・・・休憩しとるところに飛んできた。小角衆飛んだ、屋根まで飛んだ、屋根まで飛んで、話して逃げた♪みたいなこと思い浮かべながなら、逃さへんかった。お金払わなあかんやん?加賀を攻める?あそこは言うこと聞かへんところやし、素行の悪い坊さんたちの島流し場所やから、下間も苗字与えただけの譜代やない下間なんかもおる。たかが本願寺ん中でずっと付き従うとるだけの坊官なだけで威張っとる、扱いづらい坊官の掃き溜めになっとる加賀がどうなってもええと、説明して、諜報売買の関係を続けて欲しいと粘った。
ご本尊はんが売るか売らんか決めとるんやな。初めて知ったわ!ご本尊はん、忍び衆に真の棟梁と思われとるんやね。どんだけすごいねんな。この場で答えが出せん言うから、切り札切らせてもらったわ。実は尾張伊勢の本願寺派である願証寺が改宗したいらしいねんて。そこ譲るから、まだ付き合うてやって。
まぁ、譜代当主全員引き連れて会いに行ったけれども。あれはあかん。加護ぎょーさん持ってるやん。一、二、三、四、五、六、七、八、九、十?!無理やで、敵に回したらあかんやつやん!なんでもするから、滅ぼさんといて!
私の地元では、親類縁者の有象無象を指す言葉として「従兄弟も再従兄弟もひょっとこも」と使います。それを使っただけで、摂津方言ではありません。また、2回使ったのは天丼しただけで意味はありません。