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第八話 攘夷の先魁

いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。

楽しんでいただけると幸いです。


また、いつも誤字報告をしてくださる皆様、とても助かっております。自身でも確認はしておりますが、また間違うこともあるかと思います。その時はよろしくお願い致します。(ただし、誤字報告だけで、お願いします。)


なお、送り仮名は、どちらでも良い場合は、分かりやすくする為、多めになっている事がありますが、誤字では無い事もあります。誤字の場合は修正し、誤字じゃない場合は、ルビで対応しようと思います。

 戦国時代、茶々と言われて思い浮かべるのは、おそらく浅井茶々または織田茶々または柴田茶々と呼ばれたあの女性だろう。しかし、弘治元年の現在、その茶々の母親織田市は、数えで八歳だ。もちろん、婚姻もしていなければ、子どももいない。


 では、今長島城にいる茶々は誰かと言われれば、史実の本願寺顕如にほかならない。いや、いたらおかしい人ではある。てか、つい武家のくせで、茶々と心の中で呼んだが、すでに得度して本願寺の法主である。光佐または顕如と呼ぶべきなんだろうが、坊主頭のせいか幼く見える。どこぞの当主みたいに女の子じゃなくて良かったとかホッとしてはいけない。そう見えなくもないから。


「いや〜、ご本尊様に会えるなんて嬉しいわぁ。」


 おかしい。本願寺顕如と言えば、織田信長の最大の敵のはずだ。どうしてだろう?あの宗教の人みたいなことを言っている。


「南蛮人らを追い出してくれはるんやろ?それも嬉しいわぁ。」


 なぜだろう。エセ関西弁が聞こえる。大坂弁(大阪弁)が成立したのは、江戸元禄期のはずなので、これは摂津弁だろうか?この時代の中央語(標準語)は関西弁(京都弁)なのだが、似非っぽい。坊主だからか?


「あちらに座り〜な、これからのこと話さなな。」


 おかしい。上座を案内された。官位も立場も顕如の方が上のはずなのに。なぜ上座?


 悶々と色んな思いが交錯しているが、上座を案内されたのだ。こちらが上ということなのだろう。理解は出来ないが。


 目の前には、こちらを拝んでる阿呆がいる。あの宗教の拝む姿勢に規定は無いから、拝んでも敬礼しても祈っても良いのだが、てか、なぜ拝む。まさかとは思うが信者なのか?さっき編集でステータスを除いた時、状態なんて見ていない。願証寺証恵と証意の状態が、長勝教信者だったなんて見ていない。なんでやー!とエセ関西弁を心の中で叫んでいたりしない。


「いや〜、否定してはるのに、めっちゃ神さんの加護もらてはるやろ?そないな人見たことないから、拝んどかなと思てな。わい、これでも、生まれた時から修行させられてるから、見えるんやわ。」


 何がとか言わない。ええ、加護だけですよね?とかも聞かない。墓穴を掘りそうだ。


「それで、今後のこととは?」


 とりあえず、顕如の行動はスルーだ。本願寺と織田。史実とは違い、すでに戦端は開かれている。加賀の一向一揆と三河尾張伊勢北近江摂津の一揆とは別物だと言われれば、はいそうですね。と頷く準備はできているが、すでに三河の浄土真宗信者は消滅している。ええ、本当にいつのまにかいなくなってましたとも。伊勢と尾張の総本山的な願証寺も今日なくなる予定だ。あ、いや寺は残るけれども、本願寺ではなくなる。


「わいがここにおるから期待させてしもうとるかもしれんけど、さすがに、法主やから、本願寺派ごととというわけにはいかんのや。」


 全く、これっぽっちも、一厘もそんな期待はしてませんでしたが?加賀のことは置いておくとして、願証寺のことは、織田と本願寺の戦の始まりやな!くらい言われると思ってましたけども?え?違うの?


「あー、宣戦布告されると思てた?いやな、最初はそのつもりやったよ?でも、あんさん、神さん十柱も加護もらってますやん?そんなん反則やで。そんなひとと争って、こちとらただ人ですえ?勝てませんわ。」


 人外扱いやめてもらえます?加護の数当てられて、あなたこそ怖いと思うてますけど?ん?微妙に関西寄りで訛ったな。おかしい。


「それにきいてまっせ。南蛮夷狄を追い払ってくれるんやろ?坊主やから日ノ本の言葉で説法は説けても、討ち払うなんて無理やさかい、嬉しいですわぁ。」


 過激攘夷派か。尊皇攘夷という言葉は江戸幕末期の藤田東湖が記した『弘道館記述義』から取られているが、この時代にも「そんのー」という言葉はある。ただ、字が違う。鎌倉・室町時代は「尊王」で江戸幕末期は「尊皇」だ。だから、私自身もどちらかと言えば尊王の士だし、顕如も九条家の猶子なわけだから、尊王の士だろう。だが、私自身は南蛮人全てを追い払う気はない。基督教だけを除けばそれで良い。いや、正確には奴隷売買しなければ、政に口を挟まなければ、いてもいいとさえ思っているが、この時代の基督教とそれらはセットだ。実は国さえ選べば、貿易だけできるところもあるが、その為にも精査は必要だ。


「せやから、本願寺は、織田家とは出来るだけ争いまへん。加賀のは、もう本願寺側から何言うてもいうこと聞かんさかい、好きにしてや。大内裏みたいに、修行出来る寺さえ用意してくれたら、石山かて譲りまっせ。」


 嘘だろ?信長があんなに大兵力で包囲して、やっと講和直後に焼失したから手に入れた石山をか?何を求めている?あ、親鸞の墓所のあった大谷を復興して欲しいってことか?山科は無理だが、大谷ならなんとかなるか?公家衆と要相談だな。


「あいわかった。」

「良かったわぁ。負けると分かってて、信徒を突っ込ませるなんて、阿呆らしいし。神さんぎょーさん連れてる人と戦わんといかんなんて死ぬほど厭やしな。」


 なんか気が抜ける。顕如の印象変わるわ。おろ?また関西寄りで訛ったな。

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