別視点 このままでは滅ぶ
いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけると幸いです。
また、いつも誤字報告をしてくださる皆様、とても助かっております。自身でも確認はしておりますが、また間違うこともあるかと思います。その時はよろしくお願い致します。(ただし、誤字報告だけで、お願いします。)
なお、送り仮名は、どちらでも良い場合は、分かりやすくする為、多めになっている事がありますが、誤字では無い事もあります。誤字の場合は修正し、誤字じゃない場合は、ルビで対応しようと思います。
〜斉藤山城守side〜
三年前、隣国の太守織田弾正殿が亡くなるまでは良かった。辛うじて、美濃の南側は安全であった。一応、娘婿がおる。婿ではないんだが、まぁ、おる。問題は、娘の本当の婿よ。対外的には義弟殿となるわけだが、あの鬼才は、謀略の天才よ。
我が長子高政は、庶子とは言え、優れた才覚の持ち主であった。嫡子重政・重定・重堯はどれもこれもパッとせぬ。まだ新吾郎の方が幼い分、賢く見えるわ。
その嫡子の一人があの鬼才の策と思き、離間の計にまんまと引っかかりおった。当主になるにはまだまだ早かったものを、あやつのために遠山を滅ぼしたものを!
確かに、血のつながりの無い大納言が継ぐよりはましぞ?ましじゃが、傀儡に成り下がるとは、何事ぞ!西美濃四人衆に良いように使われおって!しかも、此度は、二虎競食ノ計にはまで引っかかりおって!父親を攻めるとは何事ぞ!
思えば、高政が出奔してから、色々狂った気がする。あやつは真っ直ぐ過ぎたのだ。だが、あやつに継いで貰いたかった。今の斎藤家は、父政利から数えて三代目。
三代目は繁栄するか没落すると昔から言われておる。古代の蘇我馬子や鎌倉殿もそうじゃ。重政の代で滅ぶのか?可能性は高いのぉ。こちらは、重政勢の三分の一未満の兵しかおらんのに、拮抗しておるとは何事か?こちらの豪族は明智と竹中と久々利だけよ。重政には、西美濃四人衆に飛騨勢が合力して、拮抗?才能無さ過ぎではなかろうか?よもや、これも、あの鬼才が?
な、なんじゃー?!山津波がこちらと稲葉山にぃ?!
〜酒井左衛門尉side〜
久方ぶりに、殿と出陣かと思いきや、いきなり、殿がやらかしてくれおる。剣二振りで、山津波を二つ起こすとは。あれでは稲葉山城も鷲山城も土砂に埋もれてしまうわ。あーあ、案の定じゃ。
まぁ、始末しやすくはあるがの。弾正大弼の大殿が亡くなって三年か。ようやく、美濃・飛騨を落とせるわい。まぁ、手伝い戦じゃがの。とは言え、某は斎藤家当主への手伝い戦で、殿は舅山城守への手伝い戦。要は、斎藤家の内紛に託けた美濃切取りよ。某の大義名分は妻の前夫の敵討ち、殿の大義名分は舅の美濃太守への返り咲き。そんなつもりは一切ないがの。
離間の計からの二虎競食とは畏れいる。ついでに、飛騨とも戦火を交えて、飛騨攻めの大義名分再びとは・・・。飛騨は山しかなくて旨みは薄いが、飛騨があれば、東を綺麗な形で一周できるから物流が回転しやすくなる。飛騨を押さえたら、北の長城から打って出る。朝倉の九頭竜は?とお聞きしたところ、「すでに床の上よ、今年中かの?」と言われた。小角衆からそんなことは聞かぬが、この手の予言に外れなしの殿であるから、もうしまいなのであろう。
前大殿の時も、「今年中か来年夏前には儚むよ。」と言われた矢先に突然身罷られた。小角衆も驚いておったのぉ。三条様や二条様をこちらに留めた時も理由を聞いたら、「大寧寺と陶晴賢が危険なのよ。」と言われ、陶謀反と大内殿が大寧寺にて自害と聞こえてきた。何か策を授けられたと思われる孫九郎と勘六郎が震えておったわ。
九頭竜さえおらねば、朝倉などたいした敵ではない。ただ、殿は九頭竜が生きておる間は、朝倉に手を出さなんだ。怖いとかではなかろう。敬意をもって文のやりとりもしておったらしいし。未だ、手取の長城に本願寺派からの攻撃がある。それを討ち払う名目で、南征されるのかの?
問題は足利よ。争うつもりなら、若狭を取ったあと、京に向かわれるだろうが、そのまま西に向かえば、足利とは争わぬのかもしれぬ。大義名分がない。まぁ、その気になれば、朝廷から何かしらの討伐令は引き出せると思うが、どうなさることやら。