第十六話 鉱物からの特産品
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なお、送り仮名は、どちらでも良い場合は、分かりやすくする為、多めになっている事がありますが、誤字では無い事もあります。誤字の場合は修正し、誤字じゃない場合は、ルビで対応しようと思います。
東海探題家領内にはたくさんの鉱山がある。これを全て直轄地にしており、各鉱山ごとに代官が取り仕切り、近くには元山の民が住んで採掘作業をしてもらっている。最も過酷な作業や有毒性のある鉱山での仕事は、服役中の重犯罪者がしている。重犯罪者たちは、関東攻めの際に、国に戻らず、盗賊になったような輩ばかりで、できるだけ更生するように働きかけたが、すでに無辜の民を殺していたり、無辜の民から略奪をしていたりした者たちである。
なお、重犯罪者には不倫した者とかも含まれているが、女性は鉱山にはいない。不倫をした場合、前にも述べたが江戸時代みたいな不平等な処罰にはならない。男女問わず、不倫をした方が悪い。だから、加害者側は、裁きの場で多額の借金を背負わされて、鉱山や過酷な重労働の現場に回される。加害者が負った借金は、要は被害者への慰謝料や子どもがいた場合の養育費である。年齢にもよるが、平均寿命まで共にいたとして、その間に稼ぐ金子と子どもがいた場合の養育費が人数分加算される。その金額が加害者二人に同額(均等に二分の一ではない)罰金として科される。その金は、東海探題家が出し、被害者は先に計算された金額の二倍の金額を渡され、加害者はそのまま鉱山などに送られる仕組みだ。
さて、東海探題家には、関東に七十三鉱、東海甲信越(北陸を含む)に百八鉱も有している。なお、佐渡ヶ島はそれを一つとして数えてるので、本当はもっと多い。先に述べた北条臣従が成るともっと増えるであろう。伊豆・相模・武蔵も金山・銅山で有名なところが多い。
ところで、この時代にこんな数の鉱山は本来採掘されていない。佐渡金山もそうだが、織豊時代後期から江戸時代にかけて発見された鉱山や江戸時代になって発見された鉱山、明治以降に発見された鉱山も稼働中だ。
これは、日吉の持っていた【前世の記憶】に由来する。日吉の前世の人はどんな職業だったのか。または、どんな趣味をしていたのか。日ノ本にある鉱山は北は北海道から南の沖縄だけではなく、日ノ本の領地だったことがあれば、令和の時代には日本の領土でなかった島の鉱山知識まで記憶していた。ただの位置情報じゃない。含有鉱物から毒性とその処理方法まで知識がある。地質学者か掘削業者かとても気になるが、マンガンとか使い道のない鉱物以外は、掘削している。
さらに、掘削方法の知識も的確で、例えば石炭や鉄鉱石は露天掘りだし、金銀鉛は坑内採掘、錫や砂鉄などは砂鉱採掘を採用した。
鉱山知識と掘削知識もさることながら、単一鉱物の純度を高める製錬も、不純物の多い金属から不純物を取り出し、さらに純度の高い生成物を抽出する精錬も素人じゃ違いの分からない、製錬と精錬の方法まである。
神からの依頼でなければ、仲良くしておきたかったと思うほどに、違うジャンルでの確度の高さに、尊敬さえ覚える。これが趣味だったら気が合いそうだし、これが仕事だったら高学歴過ぎて嫉妬してしまいそうだ。
日吉の前世の人に感謝しながら、その知識を適切に使って、たくさんの鉱山を運用している。
閑話休題
金銀銅鉛はよく聞く鉱物だから、よく精錬して、きちんと製錬したうえで、金銀鉛は国内で、銅は輸出用で利用している。銅の製錬に関しては、長勝自身の特殊特性の効果で、完全なる純度の製錬が出来ている。これをよく買ってくれるのは、唐の国だ。おそらく、灰吹法で金を抽出するつもりだろうが、無駄なことをと思って黒い笑みを浮かべて輸出している。彼の国からは文句を言ってこようと、希望通り「銅」を売ったのだ。知らぬ存ぜぬを通そう。そのうち、日ノ本から銅を買おうとは思わなくなるだろう。
長勝が注目している鉱物は幾つかあるが、その中でも、これは朝廷に献上しようと思っているのは、滑石を使ったお土産品だ。知る人ぞ知る勾玉の材料が、滑石なのだ。常陸で採れる。他にもチョークの原料でもある。熱で消えないので、溶接や製鉄に使える。また、乳幼児用の肌の異常を癒す薬でもあり、猪苓湯や防風通聖散などの漢方薬の原料の一つであり、玩具、医薬品、化粧品などにも使える万能鉱石だ。
この滑石は稀に石綿を含有することがあるので、精錬と製錬を重ねて、十分に安全なものを原料にする必要があるが、これでさまざまなものを作ろう。まずは、勾玉を作って、朝廷に献上しておこう。問題は、誰を通して献上するかだが、今では、東海探題家には多くの公家が働いてるし、摂関家をはじめとする殿上人たちとも深く交流できている。まぁ、よく来られる内蔵頭様か、三条様か近衛様を通すのが筋だろう。