第十五話 収穫量の差とその要因
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なお、送り仮名は、どちらでも良い場合は、分かりやすくする為、多めになっている事がありますが、誤字では無い事もあります。誤字の場合は修正し、誤字じゃない場合は、ルビで対応しようと思います。
関東攻めから二年も経つと、各国出身者の八割は研修が終わり、大名・大身豪族クラスは領国と遠江を行ったり来たりする生活をし始める。さらには、各国でも学校が創業し始めた。それに伴い、各国でも領民のうち、成人者向けの研修が執り行われ、未成人者には就学の義務が施行され始めている。その頃になれば、各国の石高も上がり、収穫量が年々増えつつあった。
そんな中、北条家が東海探題家に臣従するのでは?という話が長勝の下に舞い込んできた。先に臣従したいくつかの元大名らが北条左京大夫を煽っている。「先に臣従したのだから、こちらが先輩だぞ!」的な中学生みたいな煽り方だが。
この煽りを受けて、西堂丸くんを中心に北条臣従に向けての説得行動が起こっているのだ。嫡子がそれで良いのかとツッコミたいが、たったの二年で、東海探題家領と北条領で収穫量の差が如実に出てきているからでもある。
東海探題家領と北条領に農政による格差はない。東海探題家領内で育てた苗を北条領内に持って行って、東海探題家農政方の指導の下、育成収穫をしているので、本来なら収穫量は変わらないはずなんだが、多いところだと倍は違う。
となると、何が違うのかという話になるのだが、季候かと言えばそうでもない。土地の差は、東海探題家領内で作られた肥料が追肥されているので、痩せた土地も徐々に回復しているくらいで、これも違う。灌漑については、作事衆が治水湖や河川浚渫などを充実させているので、ここにも差はない。
西堂丸くんたちが提唱しているのは、君主の差ということらしい。長勝は、城で踏ん反り返って、年貢が上がってくるのを待っていられるような君主ではない。三河遠江駿河信濃甲斐の地元隣国のみならず、各国回って、民に感謝を述べながら、各地に追加施設を作ることをしている。これを毎年田植え期と収穫期に行っている。小五郎や吉右衛門の話では、「殿にお声がけいただくと力が上がるんです(我らはそれを加護と呼んでいます)」という心の声ダダ漏れなことを聞く。
長勝による加護が領民につく、ということは無い。無いのだが、長勝が持っている特殊特性や長勝が受けている九神の加護による影響だと思われる。特殊特性【百万石礎】では自身が治める領地での収益が三倍になり、特殊特性【君臣豊楽】では国守、領主から下人・賎民に至るまで全ての人民が、他の国より三倍豊かになる。
加護の効果は多い。神名は畏多くて出さないが「国土安泰・開運・勝運・福徳」「産業発展・武芸向上・国家鎮護」「学業成就・農業振興・安産」「五穀豊穣・産業振興」「良縁祈願・子授・夫婦和合・五穀豊穣・養蚕守護・医薬・病気平癒・産業開発・交通・航海守護・商売繁盛」「医療・医薬・健康・厄除け・医学系学業成就・国土安泰・諸産業の繁栄・安産」「豊漁・航海安全・漁業繁栄・水難除け」「五穀豊穣・国土安定・事業隆盛・交通安全・開運福徳・延命長寿・武運・勝運」「商売繁盛・試験合格・家庭平安・安産・厄除け・山林業守護・鉱山業守護・商工業守護・酒造業守護」の加護を持つ。
そして、小五郎らの言う「力が湧く」とは、長勝が声をかけると、どうも数日間のバフがつくようなのだ。その仕事に見合ったバフがつくので、異世界魔法にあるような○○力上昇など選択しなくて良い。だから、長勝は年に二回は各地を回っているとも言える。
閑話休題
しかしながら、北条臣従は非常にまずい流れである。西堂丸くんが廃嫡されるとか粛正されるとかいう物騒な話ではなく、どうも義父左京大夫をはじめとした北条一門や御由緒家の者たちがその説に賛同し始めた点だ。何がまずいのかと言えば、長勝の長期戦略の中に、北条家臣従がないわけではないが、もっと後なのだ。できれば、伊達・南部・安東あたりと争った後とかが良かった。その頃なら、「うん、いいよ」くらいの簡単な返事で了承できるのだ。