第六話 領地経営の構想
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今回の関東の動きは、完全に史実外の出来事と言って良い。確かに河越城の戦いが起こったのは天文十四年ではあるが、それは秋の収穫期を過ぎた頃から起こったもので、少なくとも田植えが終わった頃ではない。また、きっかけは今川義元が河東の地を取り返す為、古河公方と通じて起こした戦がきっかけである。日本三大奇襲戦の一つと言われる「河越夜戦」は天文十五年のことである。
しかし、今川も武田ももういない。さらに言えば、坊丸と長野家とのやりとりが長かった影響もあり、忠臣として有名な長野信濃守の独立性が高くもなっている。現に、上杉五郎(憲當)は信濃守を疎んじ、今回の河越城の戦いには参加させたくないらしい。それが、今回の坊丸たちの勝ち戦を加速させているとも知らずに。
東海探題家としては、戦続きとはなるものの、勝ち続けた結果、士気も低くない。流石に、甲斐・信濃・三河を空にすることは出来ないが、その三国に一万ずつおいても十二万は動かせる。先の四国切り取りで、鉄砲を五百丁しか使っておらず、あと二千ほど未使用である。もとの五百と合わせて、信濃路から上野に入る部隊に千、戦艦・南蛮船を使って、江戸・鹿島・常陸太田に上陸する部隊に五百ずつ持たせる予定だ。
植松の鍛えた鉄砲隊は、主君の無茶振りにより、ある程度は機敏に動ける為、馬防柵を建てるなり、塹壕を掘るなりすれば、すぐにでも戦場で役に立つ。ここでも、作事研修が役に立つ仕組みだ。
なお、三河では兵学校に行かない住民にも、年齢的な兵役を課しており、十二歳以上になったら二十歳までの間の一年間は軍事訓練に参加させている。その後も、毎年年貢としての兵役が毎年三十日(十日三回か十五日二回かを選択できる)を課しており、主に作事か警邏に従事している。職業軍人でない者たちは予備役扱いとなり、三十五歳までは希望すれば出兵可能だ。さらに三十六歳以降も六十五歳までは攻められた際の守備兵になる事もできる。だからか、今回の関東攻めに際して、常備軍以外からも出兵希望が多かったようで、先戦で動いた兵を休ませることもできそうである。とは言え、開戦前三ヶ月はガッツリ訓練して生き残れる人数を増やす予定だ。
内政を好む坊丸としては、民が減る戦に好んで職業軍人ではない者たちを出したいわけではないのだ。その点は、戦時休暇となる先戦の出兵者たちに、戦の経験談を聞かせたり、鍛錬を手伝わせたりしている時に口酸っぱく言わせるつもりだ。
坊丸はその期間は、遠江・駿河・南信濃・甲斐を巡って、主城と主要地域に館を建てたり、国ごとの政務庁舎や各学校を建てたり、構想中の農政・職人・産業や特産に関する施設も建てようと思っている。職人学校や商業学校の卒業生で後継でない者に仕事を与えないと、この地を離れてしまうかもしれない。三河を離れても良いと言っている者に働く場所を作ってやるのも為政者の仕事であろう。
そのためにも、作事衆で賄いきれなかった地の整備をしていく。開戦が田植えの終わった五月頃と考えると三ヶ月しかない。実際にその地を見てから関東制圧後の内政も考える必要がある。多少無理はするがチート増し増しでやれば、四国一周は可能だろう。
さて、構想中の各施設だが、農作物の種植えや品種改良と育成方法の指導と流通・販売の代替業務を行う農業協同組合と、技術の共有や資材調達や新技術開発と新技術の指導と織田家・東海探題家からの依頼を各職人に仕分けする職人(工業)協同組合と、新しい産業を生み出して流通・販売したり、さらに特産にして国ごとの特有産物を生み出す産業協同組合を作る予定だ。また、各地の川並衆や海賊たちなどを一つにまとめ、運搬・代理販売などを一手に担う運輸協同組合を興すつもりだ。そして、それらの上に、農職工運連合会を頂点に置き、領国全てを賄える組織を作ろうと思っている。
話が逸れるが、川並衆と言えば、蜂須賀小六正勝か前野将右衛門長康が浮かぶかもしれないが、この時代に生まれ、三河の領主となって初めて知ったことだが、各地の川には川賊がおり、海賊同様、金銭で流通の担い手をしていた。川賊のままだったり川並衆と名乗ったりとさまざまだが、全国津々浦々に川並衆がいると言って良い。尾張から美濃にかけての川並衆が有名なのは、豊臣秀吉に従って大名になったからで、木曽川沿いにいる者の固有名称ではなかったのだ。そもそも、川並衆の由来となる『武功夜話』も史料としては信憑性の薄いものだと学生時代に学んだ。だから、各地にいても、まぁ、そうなのかと納得している。
話を戻すが、この農職工運連合会ならびに農業協同組合、職人協同組合、産業協同組合、運輸協同組合は東海探題家の政務省の麾下に置く。具体的には各協同組合と農政方、経済方、経済方から独立した流通方が複雑に関連してくる。もちろん、癒着させないために農職工運連合会に監査役も置く。癒着によって仕事が増えて領民たちが潤い、癒着した者たちが私財を投げ打って頑張ってくれるなら目を瞑っても良いが、まぁ、人間のやることだ、そんなことにはなるまい。
組織を作るなら、法もと考えてしまうのは坊丸が、為政者ゆえだろうか?
2023/1/25 徴兵制の適応期間を変更
【変更前】十五歳以上になったら二十歳までの間の一年間
【変更後】十二歳以上になったら二十歳までの間の一年間
第十九話(2/22更新分)に出てくる養童院の説明との整合性のため。なお、倫理観的にアウトだと思われるかもしれないが、この時代の成人(元服)は十二〜十五歳のため、このような年齢になっており、天下統一されたら変更前の状態になる予定である。