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繰り返される夢
「おとーさーん、喉乾いた。」
俺の気持など意にも介さず恭也君が駆け寄ってくる。
「おう。」
勇也が水筒を渡すと恭也君は勢いよく飲み干した。
その姿は何度も見た懐かしささえ感じるものだった。
ああ、そうか。
僕の夢は今もこうして生きているんだ。
「いいもんだな。」
思わず口をついた言葉。本当はこんなこと言いたくなかったのに。
「ヨウちゃんは結婚とかしないのか?」
「今のところそのつもりはないかな。そもそも、相手がいないし。」
「そうなのか?俺はヨウちゃんは結婚早いと思ってたんだよな。学生の時もモテてたじゃないか。今だってそれなりにモテてるんだろ?」
「俺なんて全然だよ。」
この歳になるとよく言われる話だ。
家庭はいいぞとか、そういう話。聞き飽きた。
しかもそれを勇也にされるなんて。
そんなのつらい。
つらすぎる。
俺の気持ちも、知らないで・・・。
夢を絶たれた俺に、新しい夢を見せつけるみたいに。