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後悔という絆を時が押し流す

「ユウ・・・なのか?」

「やっぱヨウちゃんか、久しぶりだな。何年振りだろ。」

そう言って笑顔でこちらに歩いてくる。

顔こそ大人になってはいるが思い出の勇也と全く同じ笑顔だ。

「ユウ・・・。そう、だな。久しぶり。」

「珍しいな、最近帰ってきてないって聞いたぞ。どうだ?元気にやってるか?」

「ああ、まあ、普通かな。ところでその子、」

「ああ、息子の恭也。ほら、挨拶。」

「初めまして・・・。」

思い出の勇也にそっくりな子が小さく頭を下げる。

その他人行儀な仕草、当たり前のことなのに胸がザワつく。


「昔の俺に似てるだろ?性格も似ててさ、親の苦労がわかったよ。」

「ああ、似てる。しかしそれは大変だな。ユウのヤンチャっぷりはわかってるだけに同情するよ。」

「ははは。ところでヨウちゃんは最近どうなんだ?」

「俺?俺は、まあ、普通だよ。」

俺が歯切れ悪くしていると、

「ねえ、あっちで遊んできていい?」

恭也君は退屈な空気を感じたらしい。

「ああ、いいぞ。ただし三十分くらいで戻ってきて水を飲みなさい。後、お父さんの目の届かないところにはいかないようにな。」

「わかった。」

そう言って恭也君は道なき場所を下りていく。



「あれ、危なくないのか?」

「いいんだよ。俺が見てる時はいいって言ってあるんだ。」

「怪我したらどうするんだよ。」

言ってついチラと勇也を見る。

あの頃に負ってしまった傷を。

「子供は怪我くらいするもんだよ。それに、ダメって言ったってどうせ止められない。俺らがそうだったろ?」

「まあ、・・・確かに、な。」

「ここには友達と来たことがあるらしいからさ、だからまず遊び方を教えてやるんだ。なにが危ないのかってことを。」

「・・・そうか。・・・そうだな。俺も年を取って子供に対して過保護になってたのかも。どうにも危なっかしく思えちゃうんだ。・・・信用、してないんだろうな。やっぱり親になると違うな。」

「そんな大層なもんじゃないよ、俺が子供なだけだって。」

そう言って笑う勇也。

違うよ。

本当に子供のままなのは、僕だ。

あの頃を悔やんだまま、子供のまま、大人になろうとしない。

勇也の傷跡はもう随分と薄くなっているようだ。

勇也はもう気にしていない。

乗り越えたんだ。

それを見るとまるであの頃の日々が、僕たちの思い出までもが薄まっていくようで。

・・・でも、それはきっと、普通のことなんだ。

僕が勝手に、僕の心に僕自身で傷をつけた。

その傷口が十年経ってなお未だに。いや、更に深く膿んでしまった。

それはもしかしたら僕自身が願ったことなのかも知れない。



「どうかしたか?」

「あ、ああ、いや、ちょっと感傷に浸ってたって言うか。」

「そっか、そうだよな。俺にとっては昔からただの近所ってだけだけど、ヨウちゃんにとってはここは思い出の場所になったんだな。」

言われて気づく。

俺は何をまるで被害者のように、弱者のような気持ちでいたんだろう。

ここから、離れていったのは俺の方だった。

気まずくなってユウから距離をとっていたのは僕の方だったのに。


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