思い出の中の君
石段を見上げると走っている子供の後姿を捉えた。
やっぱり間違いない。
「ユウ・・・。」
勇也だ。
一緒に、ずっと遊んでた勇也だ。
まさか本当にタイムスリップ?
そんなことあるわけない。でもあれは勇也だ。
衝動的に石段を駆け上る。
僕の、たった一人の親友で、あの頃は大人になってもずっと一緒にいると思ってて、僕が下らない遊びを持ち掛けたせいで・・・、学校を何日も休んで、それで疎遠になって、中学が別になってからは全然会わなくなって。
僕、ずっと嫌だった。
本当はそんなことで疎遠になるのが。
だって、僕・・・僕っ!
息が切れる。体が重い。さっき立ち眩み起こしたばかりだっていうのに我ながら何をやっているんだ。
口の中に鉄っぽい味が広がる。
目が、鼻が、少し内側から押されているような感覚。
気を抜いたら涙や鼻血が出てしまいそうだ。
久しぶりに感じる喉が白くなるような苦しさ。
石段もあと少し・・・。
「おとーさーん。」
目前から聞こえた勇也の声。
石段を登り切り見えたのは勇也と、大人。親、か?
すると親らしき人が石段を駆け上ってきた僕を見て
「あれ?もしかして・・・ヨウちゃん?」
懐かしい呼び名で僕を呼ぶ。もう僕のことをそう呼ぶ人なんていない。
そうだ。勇也と親なんじゃない。勇也と、子供なんだ。