俺だけに見えるもの
第1章 ようこそリドルチームへ
第6話 俺だけに見えるもの
鳴滝さんにメモを貰った翌日の土曜日、俺と永愛はそこに書かれた場所へと足を運んだ。
「ここか......思ってたより重い事件のようだな」
そこは少し田舎にある駅だった。メモと貰った写真に写っていたエレベーターの前にはニュースで見るような黄色のテープが張ってあり、立ち入り禁止の看板が立ててあった。
「リドルチームの掛橋です」
「そちらの怪しい方は?」
と、警察の人が俺へ視線を移す。無理もない、あの後手錠だけでなく雰囲気が出るからと永愛に白と黒のしましま模様の囚人服のようなものを着せられた。
勿論、はじめは反抗したのだがそれは無駄に終わった。
「こっちは私のペットです。入れては問題ですか?」
「ペットでしたか。いいえ問題ありません。お入りください」
おいおい、ツッコミどころしかないじゃないか。そもそもペットじゃないし、ペットと言われて納得する警察官もおかしいだろ。この扱いはなかなかにムカつく。
「ワンワン」
俺は煽るようにそう言ったが「うるさい。おもしろくない」と一喝されて終わった。
エレベーターの前まで来ると異変にすぐに気づけた。そこにはエレベーターの人が乗るところのかごのようなものが無かった。
「明らかに普通の事件ではないな...」
「当たり前でしょ。普通の事件なら高校生が関与出来るわけが無いでしょ。もう少しその出来損ないの脳で考えてみたら?」
そこまで言わなくてもいいだろ。とは言えずに心の中で言う。
とりあえず俺たちは手がかりを集めるべく、エレベーターに付けられていた監視カメラの映像の確認に向かった。
「では、ながしますね」
駅員がそう言うと映像が始まる。そこには中年と思われる男性と若い女性が乗っていた。そして数秒後、急に砂嵐の画面に変わり映像が途絶えた。
「なるほど。これは不可解ですね。リドル事件と見て間違いないでしょう。目撃者などはいますか?」
「目撃者という程では無いですが、エレベーターが来るのを待っていた人が1人居ます。今取調室にて事情聴取がされています」
「その目撃者の人に質問をしたいのですが」
そう言って俺たちは取調室に向かうことになった。
取調室に向かう途中に状況を整理することにした。
「一昨日の午後6時24分、駅のエレベーターが忽然と消えた。まぁ被害者がいなかったのは不幸中の幸いと言ったところね」
「は? 被害者は2人だろ。中年の小太りの男と若い女性が乗ってただろ」
「あんた何を見てたの? エレベーターの中は空だったわ。ついに服装だけじゃなくて頭もイカれたの?」
「誰も乗っていなかった......? 俺は本当に幻想を見ていたのか?」
ここ最近時間が止まったり、意味のわからないチームに勧誘されたりで疲れが溜まっていたからこれは精神的なものなのか。
俺は監視カメラの映像については1度忘れることにして、事情聴取に集中することにした。