巡り逢い
第1章 ようこそリドルチームへ
第4話 巡り会い
「あーーーっ! 痛い痛い痛い! たいむたいむ! おい、肉挟んでるから!」
「ちょっとうるさい。そんなに叫んだら私が虐めてるみたいに見えるじゃない」
「いや、みたいじゃなくて事実いじめみたいなもんだろ。てかなんで手錠なんかつけなきゃいけないんだよ」
「そんなのあんたが敵かもしれないからに決まってるでしょ。あとあんたみたいな変態が手を自由に使える状態にしたら何されるか分からないじゃない」
どうやら俺は予期せず永愛に敵視されているらしい。その理由はどうやらセクハラ男と言うものなら納得は行くが、何かよく分からない冤罪もかけられている。
強引に手錠をかけられるとそのまま、まさに連行されるかのように駅まで歩いた。
「もしかして、この状態で電車に乗るのか?」
「当たり前でしょ。危険人物なんだから。ほら、私の隣で痴漢されたらめんどくさいもの」
「そもそも痴漢はしないし、さっきからあの時のこと引っ張りすぎだろ。てか、こんな格好で乗った方が明らかに危険人物だろ」
永愛はめんどくさいなと言わんばかりに1つため息をつき、これ以上めんどくさいこと言うなと獲物を見つめる鷹のような目で見てくる。俺はこれ以上何も出来きまい。大人しくついて行くか。
電車に乗ると、やはり、周りから変人を見る目で見られた。しかも永愛は巻き込まれないように少し間隔を開けて座っている。
しかも部活帰りの高校生で電車はいっぱいであり、俺はあの時教室で起こった事件の時と同じくらいの辱めを受けた。
すれ違う時にJKに「やばっ」と呟かれる。これまでそこまではされないギリギリのラインで生きていたのに永愛のせいでその一線を越えてしまった。
20分くらいで永愛の言っていた場所に着いた。体感は1時間はあったが。そこは特に大きくもなく、小さくもなく、ごく普通の建物だった。永愛に連れられ中に入る。もちろん手錠は健在だ。
中に入ると廊下のような場所で奥にドアがある。コンクリートで造られており空気が少しひんやりして気持ちがいい。
突き当たりのドアを開けるとオフィスのような場所で4人ほどの大人がパソコンとにらめっこしている。
「あ、永愛ちゃん。やっほー。元気してたー?」
と、ドアを開けるなり若くて綺麗なお姉さんが明るく挨拶した。ちなみに補足しておくと胸は大きくもなく小さくもないちょうどいいベストサイズ。
「あー、みなみちゃん! 帰ってきてたの?」
今日一日の中でダントツ1番明るい声で返事する。年の差はあるようだが仲がいいらしい。
みなみちゃんと呼ばれる人が永愛と楽しく話をする中、やっと俺のことに気付いたようで、俺の話をし始めた。
「永愛ちゃん、何あの犯罪者面の男の子」
犯罪者面で悪かったな。
「犯罪者面じゃなくて、もう犯罪者なんですよ」
永愛がにやにやしながらこっちを見てくるがもう何も言い返すことは無い。
「へぇー、どんな罪? わいせつ行為?」
「わ! みなみちゃん正解! みなみちゃんが天才なのかあいつが性犯罪面に見えるのかどっちか分からないね」
「へへー、どっちもだよー」
過去に犯した罪は一生消えないということはこういうことかと実感した。
「名前は?」
と、みなみちゃんに聞かれた。みなみちゃんと呼んでいいのか分からないが。
「時空遥翔です。掛橋永愛のクラスメイトです」
「へぇー、私は西園寺みなみ。みなみちゃんって呼んで欲しいな。よろしくー」
と俺に近寄り握手を求める。散々嫌味を言われたことは恨んでいるがみなみちゃんの可愛さに負け握手を堪能する。手錠がなければもっと楽しめたのに。
そんな会話を聞いていた奥に座る1番偉そうな男の人が近寄ってきた。
「俺は鳴滝天音だ。永愛から話は聞いてる。そこに座れ」
みなみちゃんと違って冷たい対応で俺は緊張する。身長は俺と同じ175cmといったところだろうが、なんと言っても他の社員とオーラが違う。警戒した方が良さそうだ。
「早速本題に入るが、時空君は自分の能力に自覚がないと?」
「はい。俺はそもそも能力とかなんとかについて一切何も知らないです」
俺は正直に答える。鳴滝さんは頷き、永愛と違い俺の発言を真としてみてくれるようだ。
「俺が信用したと思うのはまだ早い。その真偽を見るために時空君に初仕事を与えよう」
なんと、心を読まれたか。どうやら信用はまだされていないらしい。
「え、事件に参加させるんですか?」
みなみちゃんと話していた永愛が大声で言う。ここに来てからテンションが高いな。
「まぁ人手も足りてないしな。猫の手を借りるくらいの気持ちだ。永愛、君が同行してくれ」
「はぁー。……分かりました」
渋々オッケーを出す永愛。さすがにこの只者ではないオーラを放つ鳴滝さんには反抗できないようだ。
そして俺はメモを渡される。場所とある人物の名前が書かれた紙。そして一緒にエレベーターの写真。
俺はなにかよからぬ事に巻き込まれるのではないか。そう本能的に察知した。