怪しい勧誘
第1章 ようこそリドルチームへ
第3話 怪しい勧誘
好きなアイドルの曲が大音量で流れる。俺は目を閉じながら音のする方向に手を伸ばし、画面を適当に連打しアラームを止める。
ザーっと豪快な音をたて雨が降り続いている。これで3日連続の雨だ。
あの事件の翌日の朝、俺は母親にしんどいから休むと伝え再びベッドに潜り込む。もちろんしんどくない。きっと母親もそれに気付いているだろうが何も言ってこなかった。
何もしないまま時だけが流れ、昼の12時。さすがにお腹が減ってしまった。
「腹が減っては戦ができぬ」
と、ひとりごとを言いながらリビングにおりた。いったい何と戦うのか。このあともただ寝て過ごすだけなのに。
リビングに行くと母親がインスタントのラーメンを作ってくれた。俺はテレビをつけて食べる。しかしどれだけ番組を変えてもお昼のニュース番組であり、いつもであれば見れないはずのものである。ズル休みした時の昼番組は罪悪感を抱かせる。
部屋に戻りふと携帯を見ると2件のLINEが入っていた。1つは海利である。もう1つはLINEに登録されてない永愛という人からだった。プロフィールから見るに同じクラスらしい。恐らくクラスLINEから追加したのだろう。
海利のLINEは「大丈夫か(笑)」という内容だった。
「大丈夫じゃねーよ」そう言って返しておいた。
問題はもう1人。
「なんで来ないの」
そう1文だけ書かれてあった。クラスメイトが異性に触れられたことに対するお叱りを受けるのだろうと悟った。変に返すとめんどくさいので後で返信しようとそのまま眠りについた。
ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。
「うるせぇ!!」
謎のインタホーンの嵐に叩き起され不愉快の俺は玄関に向かった。リビングを見ても母親はいなかった。パートに出かけているらしい。玄関を開けたそこには見たことある女子がいた。永愛である。
「家まで来るなんてそんなに怒ってるのか。まぁ怒るのにも無理はないが」
「そんなことはどうでもいいです。あなたの能力は時を止める能力ですか?」
そうハッキリとした口調で俺に質問してきた。きっと就活では有利になるだろう、同時に意味のわからない質問なので就活では不採用だ。
「悪いが言ってる意味がわからない」
俺は正直に言ったつもりなのだが、それが永愛の機嫌を悪くさせた。
「とぼけないで! あなたは私たちの味方? 敵? どっちなの?」
味方? 敵? ああ、ほんとうに何を言っているのかわからない。ここであーあれねと濁したところで意味のわからない会話に合わせられる訳もなく終わるので、機嫌が悪くなる覚悟でもう一度、理解できないことを伝える。
「えーっと、大変申し訳ないのですが、本当に何もわからないです」
「ならなんで時間が止まった時あなたは動けたの?」
「なんでそれを知っているんだ」
「私も能力者だからよ」
ん? ここは異世界か? 理解が追いつかず何も言えないまま時が過ぎる。永愛の鋭い視線が痛い。
「白状する気がないなら無理やりさせてやるわ。今からリドルチームの本部へ行くわよ。1分あげるわ。準備しなさい」
俺は言われるがままに急いで支度をし、永愛と共に家を出た。家を出てからよくよく考えてみるとなんで素直に従ってしまっているのか分からなかった。