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伝説の銅鑼探し

ある日、私は女王に呼び出され、伝説の銅鑼を探すことを頼まれた。


「この銅鑼は災厄から守ってくれる神器です。何人もの使いを派遣したのだが、未だ一人も返ってきていない。絶望者の王国に災いが降り注ぐのを防いでくれ」


「どう探せばいいのですか。伝説の銅鑼はどのような形をしているのですか」


「まずフォーラー市に行きなさい。そこで導かれるでしょう」


フォーラー市は絶望者の王国最大の都市という。あまりに漠然としている。現実世界の依頼ならば「ふざけるな」と言いたくなるが、ここはファンタジー世界である。色々不思議なことも起きるだろう。導かれるということもあるだろう。気楽にいこう。面白いことがあるといいなあ。不思議とそのように考えることができた。


御前を退出すると、二人の少女が路銀や地図など旅の装備を渡してくれた。


「絶望者の王国には怪物が住んでいる場所もありますが、ここからフォーラー市への経路にはいません」


「もし戦いで負傷したら、無理をせずに街へ戻って旅館へ泊まってください。宿に泊まれば体力は回復します。でも毒は治りません。毒にかかったら教会へ行ってください」


フォーラー市は海沿いの城郭都市である。南側は海に面しており、三方を城壁で囲んでいる。東側はボール川が流れ、天然の堀になっている。北側と西側にはボール川から水を流して堀にしている。海岸には港があり、多くの船が停泊している。


私はボール川を渡って、フォーラー市に入った。ボール川は眠ったような穏やかな流れを保ちながら、最後には大洋へ抜ける。川の水は冷たく、氷水というより、肌をジリジリ焼く火のように感じられる。


底に沈む小石の一粒、一粒がはっきり見えるほど水が青く透き通っている。小さな魚が銀のダーツのように泳いでいるのが、水面からも見える。飛沫を上げている所々の滝は、水晶よりも輝かしい水を落としていた。河原には玉のような石がある。


フォーラー市は王国最大の都市だけあって、色とりどりの建物が並んでいる。とはいえ、高層ビルの林立する東京などと異なり、多くの建物は3階建て程度であり、景観に優しい。


通りには多くの人々が歩いていた。絶望者の王国は中世ヨーロッパ風の風俗であるが、人種は白人に限らず、黄色人種や黒人もいる。このため、私が歩いていても不思議に思われない。


公園にはクネクネした散歩道がいくつも延び、あちらこちらに彫刻を施したベンチが置かれている。散歩道には木陰が多く、しっとりと砂が敷き詰められていて、散歩するにも快かった。広場の舞台では大道芝居が演じられていた。軽業や歌もあり、踊りを披露する芸人もいた。


庭園は精緻な細工物の景色を見るようである。庭の中に小さな池を掘り、池の中に小さな島が築かれている。植物園は王国全土から集められた珍しい植物が、それぞれの生活環境に合わせたガラス張りの温室の中で大切に育てられている。


まず旅館に宿泊した。オーナーが笑顔で出迎えてくれた。玄関を入ったところに土産物やソファーを雑然と並べたロビーがある。ピカピカな道具から古ぼけた道具まで色々と展示されていた。旅館では休憩にぴったりの茶店もある。部屋にノートが置いてあり、これまでの宿泊客の色々な思いや感想が書かれていたが、どれもオーナー夫妻の人柄の良さや優しさが書かれていた。


旅館には伝説の銅鑼を発掘しようとする人々が泊まっていた。銅鑼は内陸部の銅鑼山に古代人が埋めたが、怪物が住むようになって発掘できないという。残念だなあ。しかし、私ならば掘り出せるのではないか。


銅鑼を発掘するものと知って私は、発掘道具を購入するために道具屋に行く。お店の中には陶器の様な白い肌の人が店の中を掃除していた。店内には珍しいものがいっぱいあり過ぎて嬉しい悲鳴が出てしまう。発掘道具を揃えて、さあ発掘に出発だ。


フォーラー市の城壁を出て、北に進む。城壁の外は畑が続いている。その先は森である。何だかよくわからないまま歩いていたら、結構奥の方まで来た。松の木ばかりが生えている森に出た。シーンとしている。鳥の鳴き声一つしない。その森をずっと探検したところ、斜面になっている山道を発見した。これが銅鑼山だろう。


私は銅鑼山を登った。高く聳え立つ峰が天に伸び、山脈は遠くまで連なる。木の梢に雲がかかり、薄もやの中から時折、猿の鳴き声が聞こえてくる。山頂から見下ろすと、小さな湖がキラキラ光った。


私は山の中腹の山塊斜面で発掘を始めた。しばらく掘り進めたところ、硬い岩盤に突き当たった。しばらく掘っていたところ、金属の箱が出てきた。ここに銅鑼が入っているのか。中を開けようとしたが、かみつき箱だった。あまりに突然だったから、かみつかれてしまった。血が噴き出す。叩いても中々放してくれない。散々だった。その日は、そのまま帰ることにした。


旅館に帰ったら、すぐに寝た。一晩寝たら、元気になり、怪我も治った。ロールプレイングゲームのHP回復と同じ仕組みである。しかし、誰もが旅館で一晩寝れば回復するというものでもない。フォーラー市には病院もある。病院の中には怪物にかじられた負傷者が沢山いた。怪物に襲われて逃げてきたという。


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