ループ
その日の夜、郵便受けに一通の手紙が届いていた。差出人の名前はなかった。不思議に思いながらも部屋に戻って、手紙を読んだ。
『前略
この前はとても楽しかったよ!ありがとう! それと、謝ってくれて嬉しかった!私の方こそごめんね! また遊ぼうね! 敬具』
読み終えてから少し考えてみた。あの時、羅美が入れたのではないとすると誰が入れたのだろう。羅美が嘘をつくとは思えない。では一体誰が――
その時、私はある可能性に気付いた。いや、考えないようにしていたが、気付いてしまった。
私は急いで家の中を探し回った。そしてあるものを見つけた。それは写真立てだった。その中に一枚の写真が入っていた。私はそれを裏返した。
そこには小さな文字でメッセージが書かれていた。
『いつまでも一緒だよ?大好きだよ?』
「なんで……」
私はその場に座り込んだ。全身から力が抜けていくような感覚に襲われた。
「どうして……」
視界が滲んだ。頬を涙が流れた。
「なんでお前なんだよ……」
私は声を上げて泣いた。
それから数日経っても、羅美と話す事はなかった。彼女はいつも通り明るく振る舞っていたが、どこか無理をしているように感じられた。二人はお互いに避け合っているようだった。目が合うと、決まって彼女は目を逸らす。そんな日々が続き、ある日のことだった。
「ちょっと良い?」
「ん?」
廊下に出た瞬間、羅美に声をかけられて驚いた。
「何?」
彼女は真剣な表情をしていた。何か重要な話があるのだろうと察した。彼女は俺の手を掴んで歩き出した。
「おい、どこ行くんだよ?」
「いいから」
そのまま引っ張られて行くと、建物の裏に連れて来られた。
「こんな所まで来てどうした?」
「……」
彼女は何も言わずに俺を見つめていた。
「言いたい事があるなら言えよ」
「うん……」
彼女は大きく息を吸った後、口を開いた。
「私達別れましょ」
「……は?」
突然の言葉に頭が混乱した。
「どういう意味だ?説明しろ」
羅美は俯いて首を振った。
「嫌だ。ふざけるな」
「だって……」
私は彼女の両肩を掴んだ。
「ちゃんと説明しろ!」
羅美は泣きそうな顔になった。
「だって……もう疲れたんだもん」
「……っ!」
私は言葉が出なかった。
「私……あなたの事が嫌いなわけじゃないよ?でも、やっぱり無理なんだと思う。あなたと一緒にいても楽しくないし、ドキドキしないの。一緒にいたら自然体で居られないっていうか……。それにさ、私が好きなのって、こういう風になる前の君なのよね。今の君はなんか違う気がするの」
「なんだよそれ……」
「私は君の事を好きだけど、今はただの友達としてしか見れない。だから付き合えない。ごめんね」
そう言って彼女は走り去って行った。私はその場に立ち尽くしていた。
それから私はどうやって家に帰ってきたのか覚えていない。気が付いたらベッドの上で仰向けになっていた。天井を見ながらぼんやりと考えた。
(羅美にフラれたか)
ショックではなかった。むしろホッとしていた。これでやっと解放されたと思ったからだ。だが、胸の奥にはぽっかりと穴が空いたような喪失感があった。
次の日、彼女が話しかけてきた。
「おはよう」
その笑顔を見てドキッとした。今までと変わらないように見えた。
「あぁ、おはよ」
私は平静を装って挨拶をした。その後も普通に会話ができた。
「ねえ、この後暇?」
「ん?別に用事は無いけど」
すると彼女は笑みを浮かべて言った。
「じゃあさ、これから遊びに行かない?」
「ああ、分かった」
羅美と駅前のショッピングセンターに行くことになった。道中は特に何を喋る事もなく歩いた。しばらく歩いていると、不意に立ち止まった。
「ここで良いかな?」
「ん?ああ」
そして彼女は振り向いて言った。
「私ね、君の事が好きだったの」
「……」
私は驚いて何も言えなかった。
「いつからか分からないんだけど、気付いた時には好きだった。最初は自分でもよく分からなかったんだ。でも最近になってようやく気付けたの。それでね、昨日の事で思ったんだ。私の気持ちは偽物だったんじゃないかなって。本当の気持ちはきっと―――」




