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だが、断る。

読んでいただいてありがとうございます。寒いですねー。そして、冬のオリンピック見てます。

 ドカっという音がしてこの場に最後に立っていた仮面の男が倒れ込んだ。口から血を吐いて倒れたのだが、命まで奪われたように感じるほど豪快に血を吹き出していた。だが、死んではいないし、ダメージとしてはそこまで深刻なものを与えていない。これでも一生懸命手加減したのだ。ナリスが本気を出せばこれくらいの連中ならその命を奪うことはあっという間に出来る。だてに大混乱の戦国の世で全国各地を渡り歩いていない。昨日の友は今日の敵状態だった当時の特技は忍び込んでの暗殺だ。正々堂々?何ソレ?美味しいの?と笑いながらのお仕事だったのはご愛敬だ。今となってはちょっとした黒歴史の一部となっているのだが、その姿を天の国から視ていた陰陽師の青年からは残念すぎると評されていたのも良い思い出だ。


「もう終わり?つまんないねー。精霊たちを使ってコレを復活させようとか考えてる集団ならもっと奥の手とか出してくれてもいーんだよ?」


 挑発もちゃんと忘れない。奥の手であの強めな兄ちゃんとか出してくれたらそれはそれで面白そうな展開にはなるんだろうが、ヤテの精霊が言っていたように2つの集団が手を組んでいただけならもうあっちの方は出てこない気がする。残ったこいつらはこちらに対して戦力を分散投入してくれるある意味大変やりやすい相手だ。どうやら指揮官がはっきりしていないようで、あちらこちらで幹部と思われる連中が連携とか考えずに指示を出していた。集団なら集団戦を得意としておいて欲しい。足の引っぱりあいの結果、戦力が戦力として機能していない。


「で、この中で一番のお偉いさんはどこのどなた?」


 足蹴にした男に聞いてもみるとすでに仮面がはずれて顔を顕わにしている年配の男がルカの方で捕まっている人間をチラリと見た。


「あ、あっちなんだ。じゃ、あんたにはもう用はないよ」


 ナリスは男のみぞおちを蹴り上げて気絶させると夜を片手にルカに捕まっている仮面の男に近づいた。


「ルカさん、これが偉い人みたいだよ」

「ふーん、じゃあ、僕の知り合いかな?」


 ここはイル族の図書館から繋がる場所だ。同じイル族である以上、顔を合わせたことのなに人間などいない。ウル家の人間である以上、イル族全員に一度は顔合わせをしているので顔を見ればどこの誰だかすぐに解る。


「失礼」


 軽くそう言ってルカが氷漬けになっている男の仮面を外した。

 仮面の下から出てきたのは、こちらも少し年配の男性だった。


「あらら、あんたか。ナリスくん、この人、図書館の館長だよ」

「どうりで堂々と図書館に転移の場所を設置できたわけだ」


 それなりに手間暇をかけなければ出来ない術式だったので、こそこそと仕込むのはバレる可能性があるとは思っていたのだ。だが、図書館を管理する人間ならば、休館日や人がいなくなった後に仕込むことも出来る。


「この集団は何を目指してるのかな?」


 ルカの問いかけに館長は憎々しげな目を向けた。


「……ウル家の落ちこぼれ。貴様のような存在をなぜ我らの神が許しているのか…貴様はとうの昔に死なねばならんかったというのに…!」


 憎しみのこもった口調で館長はルカにそう言ったのだが、ナリスは「真実知らないってすごいな」と小さく呟いた。少し接しただけのユーリでさえ、ルカはイル族の主神か蛇さんのどちらかだと推測しているのに、長年、ルカと接していて誰も何も気がつかないなんて、とちょっと残念に思ってしまう。


「ナリスくん、一応、僕もこそこそしてたんだから」


 考えを読んだようにルカが言った。


「あれ?顔に出てた?」

「バッチリ」


 ナリスの表情からだいたい考えてることはわかるったのだが、ルカだって一生懸命、こそこそと目立たないように一族の中で生きてきたのだ。隠しきれないブラコンはともかく、それ以外のことはけっこう綺麗に隠し通せたと自負している。まさか、アルマの愛し子が来るなんて思ってもみなかったイレギュラーな事態さえなければこれから先も死ぬまで隠し通す所存だった。


「で、あんたらの神様ってどなた?」

「小僧、そんなことを聞いてどうするのだ?例え我らの神の名を知ったところで貴様には何も出来ない」


 力強く館長はそう言った。


「ご挨拶?」


 館長の言葉に対するナリスの答えは疑問形だった。


「き、貴様!!ふざけているのか!我らの神に対して挨拶だと!!ひれ伏すしか出来ない虫けらのくせに!!」

「だが、断る!!ってゆーか、虫けらなんて久々に聞いたよ。あはははは、その虫けらに足蹴にされてるのってあんたらの方だけど」


 面白そうな顔でナリスがそう言うと、館長の顔がますます憎しみを増して睨み付けてきている。


「ちなみに、ボク、絶対にひれ伏さないよ?」


 本当にこいつらの言う神がこの世界の神として生み出された存在だとしてもナリスはひれ伏す気は一切ない。自分が頭を下げても良いと思っている神はけっこう数が少なくて貴重な存在だ。その中でも母はまた別口なのだが、ナリスは自分が認めた存在以外に真の意味で頭を下げる気はなかった。


「うるさい!我らの神よ、どうかご復活をー!!」


 ルカによってかっこよく飾られた抜け殻に向かって必死に言っているその姿は、ある意味、大変、哀れな姿でしかなかった。

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