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8話

武器コンの会場内では広々としていた場所に等間隔で小さな机と二人分の椅子が用意されていた。


「どうぞこちらでお待ち下さい。すぐにお相手もこられます」


どこに座ればよいのかとウロウロしていると、係員が奥の席に案内してくれた。


「武器コンは初めてでしょうか」


「そうです。もしよければ説明をしていただけませんか」


俺のお願いに係員はにっこりと微笑んだ。


「勿論です。これから様々なあなたの武器候補の方が座られます。時間は一組あたり5分となっています。気になる方がいれば番号をお控えください。全て終了した後に、相手もあなたの番号を指定していれば、再び交渉が可能です」


「なるほど……誰も俺を選んでくれなかった時は?」


「また次回お越し下さい」


そう言うと係員は引っ込んでいった。

中々シビアだな。

相手が動物とはいえ、ペットショップでの様にこちらに主導権があるわけではないのだから当然といえば当然か。

それにしても、武器を選ぶ基準というのはどのようにすれば良いのだろう。

今まで平穏な人生を過ごしてきた俺にとって、武器なんてのは遠い存在だった。

深く考えずにゲームのように選んで良いものか……


「失礼します」


「あぁはい、どう……ぞ……」


不意に美しい声が聴こえてきたので、俺は正面を向いた。

そこには美しい毛並みをし、慎ましく椅子に座る若い……豚がいた。


「はじめまして、イベリ子と申します」


「……はじめまして。」


豚かぁ……いや別にダメなわけではない。

幼いころに牧場へ行ってふれあったこともあるし、嫌いではない。

しかし戦いの相棒になるかと言われると話は別だ。

豚のベストな使い道はあくまで愛玩用もしくは食肉用だ。


「えぇと、イベリコってあれですよね……有名な…」


「まぁ、ご存知なのですか?実はそうなのです。私の父はかのイベリア家の長男ですのよ」


イベリ子はほほほと上品に微笑んだ。

肉質とかが凄いんだろうか。


「凄いですね。それで早速なんですけど、イベリ子さんはどういった能力を持ってるんです?」


犬が剣になるくらいだから、豚とはいえどんな武器になるのか想像もつかない。

案外強力だったりしてな。


「あ、そうですね。今お見せします……えい!」


ポンッと小さな煙があがり、イベリ子の姿は消えてしまった。

いや、よく見ると椅子の上に何かがある……豚鼻の形をしたマスクのようだ。


「よいしょ、これが私の特性です。いかがでしょう」


マスクは机の上に飛び乗り、俺に感想を求めてきた。

なんと言えばいいのだろう、マスク不足に苦しんでいた俺の世界でもこれはいらないと思う。


「……この姿だと何ができるんです?」


「よくぞ聞いて下さいました。この姿の私を装着すれば、どんなに遠くにあるトリュフも一瞬で見つけることができるのです。」


マスクは胸?を張って自慢げにそう言ってきた。


「そ、それでどう戦うんです?」


「え、戦う?」


「え?」


どうも噛み合っていないので詳しく話してみると、全ての動物が武器になるわけではないらしい。

彼女のように、武器以外の特性で人とともに生計を立てている動物もいるそうだ。

なぜ武器ではない彼女が武器コンに参加しているのかと聞いたが、彼女やケンのような者たちの総称を「武器」と呼ぶだけのことらしい。


「そうでしたか……バトル志望の動物をお探しでしたか」


イベリ子はしょんぼりとした顔でうつむいてしまった。

なんだか申し訳ないが、武器コンというのはこういうものなのだろう。


「すいません、でもきっとイベリ子さんにはもっといい人がいますよ」


「ありがとうございます。あなたも素敵な方に出会えると良いですね」


イベリ子は寂しげに微笑むと席を立っていった。

ひょっとすると名家出身で高級食材取り放題なんだから、彼女は好条件だったのかも知れない。

しかしあくまで俺の目的はバトルのできる武器だ。

これはあくまで勘というか、直感に近いのだが、この世界から帰るには武器と共に戦い、勝利しなければならない気がする。



それから2回ほど違う「武器」と話してみたが、そのいずれも俺の求めていた特性とは違っていた。

ひょっとするとケンのような奴らはレアなのかも知れない。

この世界は戦いとは無縁なのだろうか。


「はぁ……どうしたもんかな」


「おい、お前」


最悪の場合ドクのつてを使って武器を紹介してもらおうかな。

そうだな、それがいい気がしてきた。


「おい!」


「え?」


声に気づいて前を向いたが誰もいない。


「下だ、下」


「下……?」


言われた通りに下を見ると、小さな子猫が二足歩行で立っていた。


「俺様には分かるぞ。お前、戦いを求めているな」




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