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7話

「じゃあさっそくこの木を斬ってみせますね~」


「ちょちょちょっとまった!」


剣を振りかぶる青年を俺は慌てて止めた。

脳の回転が追い付いていない。


「け……剣じゃん!ケンが剣じゃん!」


「そういうイジメみたいなの止めてください、この子も気にしてるんです」


じゃあもうちょっと名前考えてやれ。

それよりも、今のは何だったのか。

手品には見えなかった。


「どうなってんの……それ。さっきの犬なんだよな」


「当たり前でしょう。これが見たかったんじゃないんですか」


青年は俺が戸惑っているのを不思議そうにしていた。

俺は彼にこの変身する犬に関しては何も知識がなく、初めて見たと説明した。


「そんな人いるんですね。どの国でも普通にあるものと思っていましたよ」


「ああ、前にも似たようなことを言われたよ。それで、これはどういう仕組みなんだ」


じっくり話すため、俺たちは広場にあるベンチに座った。

犬は剣の姿から元に戻り、俺には興味なさげに寝そべっている。


「さっきのは君がこの子に魔法をかけたわけ?それともこの子の持ってる能力?」


「魔法かぁ。初めて見る人にはそう見えるんですかね」


彼はクスクスと笑った。


「あれがケンのもう一つの姿なんです。能力といえばまぁそうかも知れませんが、元々そういう生き物なんですよ」


犬と剣両方になれる生き物……まさにファンタジーだ。

しかし魔法なのかという俺の疑問を笑っていたあたり、ひょっとするとこの世界に魔法はないのかもしれない。


「なるほど……」


「でも、知らないならどうして犬に興味を?そう言ってましたよね」


青年はそう俺に問いかけた。

当然そこは疑問に思うだろう。

同好の志だと思っていた人がまったくの素人だったのだから。


「あーいや、噂は聞いていてさ、ただ実際に見たことはなかったもんだから好奇心でね」


「そうですか。それでどうです?パートナー、欲しくなりました?」


「そりゃあもちろん!」


こんな面白い話を放っておくなんてありえない。

俺は主人公がモンスターを使役して戦う小説を思い出した。

たいていこういうのにはチート級のやつが一体いて、偶然そいつを味方にできるのだ。


「実は結構憧れてたんだよこういうの」


「よかった。じゃあ早速向かいましょうか、パートナーとの出会い場に」


なんかもうちょっと言い方なかったんだろうか。


「まずパートナーを組むためには、国が企画している武器コンに参加します。ここがその申し込み所です。ここではあなたみたいにまだタッグを組んでいない人や、訳あって解散したために再度パートナーを探している人もいます」


青年(名前をドクと言い、途中で自己紹介を互いにした。)は俺に、相方となる動物を探すためのシステムを説明してくれた。

例えるなら動物と人間との合コンのようなものらしい。


「何か気を付けたほうがいいこととかあるかな。例えば……こうしていれば印象がいいとか」


登録用紙に記入しながら、俺はドクに尋ねた。

収入の欄もあるぞ……本当に合コンみたいだ。


「そうですね、一般的に私たち人間側は3高と呼ばれる条件を理想としています」


「ああ、それなら俺も知ってる」


少し古い気もするが、聞き慣れた用語を聞くと安心する。


「具体的に高性能、高火力、高血統です」


一つも合ってなかった。


「ごめんやっぱ俺の知ってるのと違うわ……何高血統って」


「やっぱり良い血統のほうが箔が付くじゃないですか。子供の頃言われませんでした?雑種の子とは遊んじゃいけません!って」


団地の子供みたいに言わないで欲しい。


「反対に向こうは高身長、高学歴、高収入を理想としているそうです」


動物のほうがそっちを求めてるのかよ。

ドクの側に立っていたケンは「まぁねぇ~」と言いたげなムカつく顔をしていた。


「ということはドクは結構それに当てはまってたのか、若いのにやるな」


「いやぁそれほどでもないですよ。年収とか銀貨5枚分くらい鯖読んでましたし」


犬が相手でも見栄は張るものらしい。

横でケンが愕然としているのだが大丈夫なのだろうか。


「武器コンに参加の方はこちらをお取りくださーい」


スタッフであろう男が入口で参加者に首輪を配っている。


「あれは?」


「相手の言葉を理解することができる道具です。どちらか片方がつければ意思疏通はできるので、まずは自分がつけます。その後交渉が成立すれば、相手にかけてやるんです」


なるほど、会話のできない犬やら猫やらとどうやって交渉するのかと思ったが、流石は異世界。

便利な道具があるものだ。


「これでいいのか?どうだ」


「はい、お似合いですよ。ペット感出てます」


出たらダメだろそんな感じ。


「まぁすぐに外すんだからいいけど。じゃあ行ってくる」


「頑張って下さいね」


『男ならもっとドンと構えてろ若造』


二人(?)に見送られ、俺は武器コン会場へ足を踏み入れた。

……というかケンの声渋っ。








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