6話
「ふう、着いたっと……」
周りを見渡してみるが、どうやら前回魔方陣が出た場所とは違うようだ。
石畳が敷かれ整理された道の上に俺は立っていた。
明らかな人がいる痕跡を見ると安心できる。
「違う世界かな……?いやでも場所だけ違う可能性もあるな」
とりあえず移動してみないとここがどういう世界かはわかりそうにない。
俺は適当な方向に歩き始めた。
「…ん?ここは公園……かな」
30分程度だろうか、ひたすら道を歩いていると、広場のような場所に着いた。
木や石で作られたアスレチックのようなものがいくつも見える。
「人が居れば話を聞けるんだけど…」
公園を観察していると、後ろから足音が聴こえてきた。
振り返ると、一匹の犬を連れた青年が立っていた。
恐らく公園に入りたいが、俺が入り口に立っているので退くのを待っているのだろう。
青年は少し迷惑そうな顔をしていた。
「ああ、すいません。どうぞ」
「いえ、どうも。……入らないんですか?というか、誰も連れてはないようですけど」
どうも彼は何もせずただ突っ立っていた俺のことを不思議がっているようだ。
まぁ公園に見たことのないやつがジーッと立っていれば不審者みたいなもんだろうから無理もない。
「いやぁ、実は僕もワンちゃんを飼おうか考えてまして。まずはこういう所で実際どういう感じなのかを確かめてみようかなぁって」
「ほ、本当!?あなた犬派なんですか!?」
彼は俺の言葉にえらく大袈裟に反応し、詰め寄ってきた。
「え、ええ、猫よりは犬派かなぁって。もし良かったら見てていいですか?」
「勿論です!嬉しいなぁこの辺りで犬派閥の人に会えるなんて」
このあたりでは犬派は少ないんだろうか。
いずれにしろ、初めて会う人がここまで協力的なのは運がいい。
犬を通じて仲良くなった後に、この世界について詳しく聞こう。
「じゃあさっそく初めますね。行こう、ケン」
「ワン」
青年は犬を連れてアスレチックのほうに向かっていった。
何かやってみせてくれるらしい。
もしかするとここはドッグランのような場所だったのかもしれない。
「いきますよ~」
青年に手を振り返すと、彼は犬を抱き抱えた。
犬種はわからないが、中型犬ほどのサイズなので小柄な彼は少しよろめいていた。
実際犬は本当に好きだから、どんな芸を見せてくれるのか少しワクワクする。
「よし!変形ーッ!」
「アオオォン!」
「え」
彼がそう叫ぶと、抱き抱えられた犬はぐねぐねとくねり出した。
犬は姿をどんどんと変え、最終的に1メートルほどの長さの剣へと姿を変えた。
……え?