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4話

早速クランは俺にレアガチャの回し方を説明してくれた。

レアガチャはノーマルのようにガチャガチャが配置されているわけではなく、どこにいても石を天へ捧げることで回せるらしい。


「俺と最初に出会ったところでガチャを回していたのは何か意味があったんです?」


「あーあれね、あそこで回すと私が狙ってたやつが当たりやすいって噂があったのよ。当たんなかったけどね」


クランは恥ずかしそうに頬を掻いた。

どの世界でもそういうオカルトは存在するようだ。


「まぁ私のは良いから、さっさと回しなよ」


俺は彼女に急かされながら、教えてもらった動作を再現した。

持っていた石を空に向けて掲げると、石はキラキラと輝きながら消滅し、天から一枚の薄い封筒のようなものが落ちてきた。


「……これだけ?」


封筒を振ってみると、カサカサという音が聴こえる。


「……クフ」


妙な笑い声がするので振り向いてみると、クランは殴りたくなるほどのにやけ顔でこちらを見ていた。


「あ~、ドンマイドンマイ。そん中にカードが一枚入ってるから。……まぁ白だからただのレアだろうけど……フヒヒ」


クランは俺がガチャを外したことへの悦びを顕にしながらも、この封筒について説明してくれた。

カードにはレアリティというものがあり、金や銀の封筒に入ったカードは他のカードよりも強力な効果がついている。

ちなみにレアガチャではレアリティが高い順から金、銀、白が当たるようになっており、ノーマルでは黒と茶の封筒が当たるらしい。

ただ白の中にも強力なカードは存在し、クランは前回のガチャで雷を纏った斧を手に入れたらしい。

いいじゃないか、そういうカッコいい武器は男の憧れだ。

ワクワクしながら封筒を開けて中のカードを取り出してみると、カードには細長い筒が描かれていた。


「これは……なんです?」


「あ、いいじゃない。わりかし当たりよそれ」


カードをクランに見せると彼女は俺の肩を軽く叩いた。


「それは聖なる髪の息吹きで害悪なる蟲を倒す武器でね……名を御鬼慈恵屠(ゴキジエイト)と言って」


「それただの殺虫剤ですよね」


よく絵を見たらこれまんまゴ○ジェットだわ。

スーパーに行ったら700円で買えるわ。


「これは強力だから間違っても人の顔に向けて発射したりしないでね、失明するから」


裏に書いてある注意書きのやつだろそれ。

彼女からすれば便利アイテムで当たりなんだろうが、現代日本に住む俺にとってはガッカリだ。


「あーなんかもっといいの欲しいなぁ。もっかい回せないですかね?」


「分かるわ、その気持ち。あなたも沼にはまったのね」


クランは満面の笑みで俺にサムズアップをしてきた。

そこまででは決してない。


「大丈夫。今までガチャをしたことがないってことは、ミッションをしたことがないってことでしょう?教会が教えてくれるミッションを達成すればまた石が手に入るわ」


彼女に連れられて教会へ入ると、巨大なガチャガチャの石像の前で大柄な男性が祈りを捧げていた。


「単発を称えよ……」


一言で分かるやべぇやつだ。


「おーい神父様~」


「あぁクランさん、どうされました?それにそちらの方は?」


神父は微笑みながら俺のほうをちらりと見た。

クランは俺たちが教会に来た理由と、俺の簡単な紹介を済ませた。


「なるほど……分かりました。今週のあなたのミッションはこちらに書かれています。頑張って下さい」


ミッションの内容は、ノーマルガチャを10回しろとか、1日に何キロ歩けだとか、比較的簡単な物だった。

俺はクランに協力してもらいながら、ガチャ一回分の石を集めた。


「いやぁ、けっこう時間かかっちゃったわね」


「ええ、そのかいがあればいいんですけど」


クランは額の汗をぬぐいながら俺に微笑んだ。

それにしても、俺がガチャを回すためにここまで協力してくれるなんて、なんていい人なんだろう。

この世界で最初に会ったのがこの人で良かった。


「大丈夫、当たるわよ。気楽にいきなさい」


彼女は明るく俺に微笑んだ。

そのおかげでこちらの緊張もほぐれ、気分が楽になった。


「じゃあ……いきます!」


俺が石を空へ掲げると、フッと石が消えるのと同時に、光輝く封筒が手元に落ちてきた。

これは……金色だ。

ということは、一番のレアが当たった!


「やりました!クランさん!……あれ」


大喜びで彼女にハイタッチをしようとすると、彼女は泡を吹いて倒れていた。


「き、金……最後に出たのは今の王族が5年前に出したもののはず……あわわわわ」


どうやらこの世界の運営は相当の糞らしい。


「じゃあ早速中身を確認しましょう」


「そ、そうね。噂じゃ金カードの種類も伝説級から大外れまであるって話だし、早く!早く開けてみせて!」


クランはゾンビのように這いながら俺の足にしがみついてきた。


「じゃ、じゃあ……開けますよ」


俺が封筒を開けようとすると、目の前が急に眩い光に包まれた。

俺は思わず目を瞑った。

流石は金のカード、中々の派手な演出に笑みが溢れる。


「……おかえり」


「……ただいま」


目を開けると、そこには自室で寝転がって漫画を読む友人の姿があった。

……俺の異世界は?






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