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1375893回目の人生を終えました~死後の世界について~

作者: 円玄

 ふと、死後の世界について思ったので小説にしてみました。


 ここは……どこだろう?


 真っ暗だ。


 何も見えない。聞こえない。


 なんだかふわふわした心地だ。


 重力を感じない。


 確か、僕はあいつらのいじめに耐えられなくて、学校の屋上から飛び降りたはずだ。


 死んだのか? 死ねたのか?


 僕は、どうなったんだ?


 僕が状況を読み込めないでいると、頭の中に、優しく、穏やかな声が響いた。


『あなたは1375893回目の人生を終えました。お疲れ様でした』


137万……5893回目? 


 なにいってるんだよ。僕の人生はこれ一回きりだ。僕は、その一回を自分で終わらせたんだ。


 同じ声が、また、響く。


『次の人生を選んでください』


 次の人生?


 だから、なにいっているんだよ。僕の人生に、次なんてないんだよ。


 ズキッ


 っ! あ、頭が……い、いたい……


 なんだ……これ……


 痛みと共に僕の頭へたくさんの映像が流れ込んでくる。


 ピアノを練習している場面。


 サッカーをやっている場面。


 温かい目で子供を見守っている場面。


 孫の誕生を喜んでいる場面。


 その映像は、無数にあった。


 とてつもなく、多かった。



 これは……記憶? 誰のだろう?


『これは、今まであなたが歩んできた人生の記憶です』


 僕が……歩んできた……


『1375892回の人生の記憶です』


 …………


 …………………


 ……あぁ、思い出した。思い出したよ。


 僕は、1375893回の人生を過ごしてきたんだな。



 僕の母親は、僕の1374589回目の人生だ。


 僕の父親は、僕の1374187回目の人生だ。


 僕の親友は、僕の1368576回目の人生だ。


 僕の初恋のあの子は、僕の1360862回目の人生だ。


 僕を虐めていたあいつは、僕の135999回目の人生だ。


 虐めていたあいつの友達は、僕の1356821回目の人生だ。


 その友達の母親は、僕の1350431回目の人生だ。


その母親の初恋の人は、僕の1087412回目の人生だ。


 その人の小6のころの担任は、僕の768421回目の人生だ。


 その担任と街ですれ違った人は、僕の204223回目の人生だ。


 その人が過ごしていた街に住んでいたある人は、僕の8526回目の人生だ。


 そして、その人が虐めていた人は、僕の421回目の人生だ。




 この世には、たくさんの人がいて、たくさんの個性がある。


 だけど、その根本に、全部、僕という存在がいる。


 僕が僕を愛して、僕が僕に愛されて。


 僕が僕を拒絶して、僕が僕に拒絶されて。


 僕が僕を傷つけて、僕が僕に傷つけられてて。


 僕が僕に勝って、僕が僕に負けて。


 僕と僕から、僕が生まれて。



 ……僕が僕をいじめて、僕が僕にいじめられて。


 ――ああ


 なんて、歪な世界なんだろう。


 全部全部、僕なのに。


 体の大きさや性格がちがくても、それらは全部僕が送ってきた人生なのに。


 どうしてこんなにも違いが生まれるんだろう。


 歪だ。すごく歪だ。




 でも。


 だからこそ美しい。


 だからこそ面白い。


『次の人生を選んでください』


 あたたかい声が響いた。


 僕はまた、この歪な世界をつくるためにひとつの人生を生きる。


 今度は、楽しそうな人生を送りたいな。

 

 この話について活動報告にあげるので是非読んでいってください。

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