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追憶 大切な思い出

お読み頂き有り難うございます。


皆さんは忘れられない人はいますか?




「いやぁ~暇だなぁ~。今日も平和だ…」


ご近所さんの道具の手入れも終わり、誰もいない道具屋のカウンターでアキラは特にやる事も無く、ウトウトとしていた………



───────



────



──



「アキラ!アキラ!ってば起きて!」


「ん?なんだよ?シアか……帰ってくれ」


「いきなり帰ってくれって酷くない?」


「いきなり人の部屋に勝手に入ってくるって酷くない?」


「どーせ!アキラの部屋なんて誰もこないじゃん!」


「いや……来るんだけど…」


「えっ!嘘!アキラ彼女できたの?」


「………………ああ」


「言ってよ!それだったら!ごめん!もう来ないね!」


「ああ。…………嘘だ」


「は?」


「ただの嘘だ。彼女なんて出来てない。ただシアが勝手に部屋に来るから“誰も”じゃないだろ?」


「ふんぬぅぁぁぁぁ~~!」


シアの鉄拳が炸裂し眠りから目覚めたばかりのアキラはすぐに昏倒する。


このシアという女性は冒険者をしており、アキラをよくポーターとして使っている。シアは上級冒険者で実力もあり時期勇者パーティー候補と呼ばれている。


一緒に旅をしてからは、アキラとシアは意気投合して冒険以外でもよく一緒にいる様になり、アキラの優しさにシアは次第に惹かれていき、アキラもよく笑うシアに惹かれている。


一緒に過ごす他愛ない日常が二人にとってなにものにも変えがたいモノになっていった。

一緒に旅をした事が出逢いだったせいか、どこか仲間というか友人というかお互いに惹かれ合っているにも関わらず、二人は想いを伝える事なく一緒の時を過ごしている。


「ん?ここは?」


「あっ!アキラ!起きた?」


「シア?…………ああ。ぶっ飛ばされたんだったな」


「あれ?覚えてた?おかしいなぁ?」


「おい!シア!やめろ!なに拳鳴らしてんだよ!また殴って記憶を飛ばそうとするな!」


「ふふふ。嘘だよアキラ。そんな酷い事しないよ!」


「いや!酷い事したからおれは気絶してたんだろ!」


「さっきのはアキラが悪いの!」


「ん?さっきの?……何で殴られたか記憶が無いな……」


「記憶ないの?」


「…ああ。まったく無い…」


「ワタシに好きって言ってたよ」


「えっ!ま…まじか…」


「うん。大好きだって言ってた」


「ま…まじか……全然覚えてない………あ~それなんだけどシア」


「ふふふ。嘘だよアキラ。そんな事言ってないよ!」


「………な…なんだよ…それ。ちょっと性格悪いぞ」


「だってアキラをからかうの楽しんだもん!」


「ははっ……人で遊ぶなよ」


「ふふふ。アキラで遊ぶのに人生かけてるからね」


「はぁぁ~。そんな事やってたらいつまでも彼氏できないぞ…」


「別に彼氏とか欲しがってないからいいよ~!」


「ふぅ~ん。……そう」


「なに?なに?興味ないふりして~。本当は興味あるくせに~。アキラだったら付き合ってあげてもいいよ!」


「おれはノリとかで付き合うとかは嫌なの、付き合いたい時はちゃんと告白したいんだよ」


「じゃあアキラがちゃんと告白してくれるの待ってるね!」


「いや別にシアに告白するとは言ってないだろ!」


「ふぅ~ん。……そう」


「そ…それよりなんの用事で来たんだ?」


「あっ!そうそう!秘境の噂を聞いてね旅に行こうと思うんだけどアキラもポーターとして付いてきてよ!」


「ああ。わかったよ」



──────────



──────



──


「はぁぁ~~。落ちつくぅぅ~~。良い場所だねぇぇ~~。海綺麗だねぇぇ~~」


「シア……ちょっとだらけ過ぎだろ」


「だってぇぇ~~。秘境の旅から帰って来たばっかりなんだからゆっくりしたいんだもん!」


「そう思って落ちつける良い場所を見つけたと思ったけど……こうもだらけるとは……」


「ふふふ。ワタシの為にアキラが頑張って良い場所を探してるの想像したら、なんか面白いね」


「いや…想像するなよ。あと思っても声に出すなよ」


「ふふふ。照れてるアキラも面白いね!」


空は天色に晴れ渡り、海はターコイズブルーに輝き、その境界がはっきりと解る。さざ波の音が聞こえてくる海岸線沿いのお店のテラスで二人はゆっくりと時を過ごしていた。


眩い太陽の光がシアの純真で無垢な笑顔を照らし、その綺麗な影を伸ばす。

かけがえのないシアの若く輝く笑顔をアキラが少し照れくさそうに微笑みながら見つめる……


「シア。この後はどうする?」


「ん~~。アキラに任せるぅ~」


「行きたい場所とか無いのか?」


「アキラに付いていくからいいよ。ブラブラするぅ~」


「…なんかテキトーだな……」


「ふふふ。だってアキラの事だからちゃんとデートコース考えてきたんでしょ?」


「ぐっ!……い…いや別に…」


「ふふふ。照れてる。照れてる。アキラは本当に面白いねー!ねぇねぇ………ワタシは告白されるなら夕方の浜辺がいいな~!」


「うっ!…………………へぇ~。そ…そうなんだ…」


「あら?あたっちゃった?ふふふ。じゃあ夕方楽しみにしとこぉ~!」


「あぁぁ~~!とりあえず色々と行きたいお店あるから一緒に歩くぞ!」


「は~~い!」


─────


──


「お買い物楽しかったね!」


「あ……ああ。そうだな」


「また一緒に行こうね!」


「…そうだな。また一緒に行こうな…」


夕陽が世界をオレンジ色に染め、夕方の浜辺の波打ち際をアキラとシアの二人は歩きながら言葉を交わす。


夕陽が波打ち際ではしゃぐシアを照らし、シアが純真無垢な笑顔をアキラに向ける……


「なあ!シア!」


アキラがシアに声をかける。緊張からか少し喉が渇く……


「なに?」


シアはアキラの目をじっと見つめたまま、笑顔を向け夕陽に照らされているからか頬が少し赤らむ……



「あのさ……これから先もさ……その…」


「……………………」


「…シアとずっと一緒に買い物に行きたいと思って!…」


「……………………」


「次はさ!…そのぉ……手を繋いで一緒に買い物をしたくてさ!」


「……………………」


「いっつも一緒に旅して危険な場所にいっぱい行ってるけど…」


「……………………」


「これからはさ!…安全な場所でもシアとずっと一緒にいたい」


「……………………」



「だから……その…」



「……………………」




「シア!大好きだ!その…おれと付き合って欲しい!」





「はい」





波打ち際で抱き合う二人を他の者から隠すように夕陽が二人を眩く照らし、重なり合う二人の影だけが姿を見せる。


「ねぇねぇ。アキラ」


「ん?な…なんだよ?」


「99点!」


「うっ!………人の告白に点数つけるなよ………因みに残りの1点はなんだよ?」


「告白するのが遅すぎる!」


「わ…悪かったよ」




「ワタシもアキラの事が大好きだよ」




────────────────




──────────




──────




──



「アキラ君!シアさんはきっと大丈夫だからね!捜索隊が探してくれてるから!」


「はい。わかってます」


「ま…まさかこんな事になるなんて…」


アキラとシアが付き合い始めて半年が過ぎた頃、シアは勇者パーティーに選ばれ魔王討伐を任命される事になった。そしてその足掛かりとして勇者パーティーは、魔王軍幹部四大魔将の一角【灼熱の魔将オリエンス】討伐へと向かう。

しかし討伐に向かって三週間後、突如勇者パーティーの足取りが途絶え、そのまま一週間が経っていた。


(くそっ!こんな事になるならポーターとして無理にでも付いて行けば良かった!くそっ!くそっ!)


「アキラちゃん!大丈夫だよぉ!シアちゃんはきっと戻ってくるよ!」


「…お婆さん………はい。わかってます。きっと戻ってきますよね」


(くそっ!…………くそっ!……くそっ!なにが魔王討伐だ……なにが勇者パーティーだ……そんな事やめて安全な場所でずっと一緒にいようって言えばよかった!くそっ!……おれは待ってる事しか出来ないのか?ただ…何処に行く?行ってどうなる?何ができる?…………おれはなんでこんなに無力なんだ……)


──────


────


──


それから数日が経ち勇者パーティーは捜索隊と一緒に戻って来た。


「おい!戻って来たぞぉぉぉぉ!」


戻って来た勇者パーティーは【灼熱の魔将オリエンス】にボロボロされ、戦線に復帰するのは難しい姿になっていた。


そしてシアは既に鼓動を止め、いつもの純真無垢な笑顔では無く、最後に愛する人に一目だけでも会いたいという想いを残したまま少し悲しい笑顔で瞳を閉じていた。



「おい!シア!シア!」



「アキラ君。すまない……シアが最後までオレ達を守って戦ってくれて………すまない。シアを…助けてやれなかった…」



「シア!おい!シア!いつもの冗談だろ?なぁ?からかってんだろ?おい!起きろって!シア!」



「アキラ君。…本当にごめんなさい。……ごめんなさい。……シアがいつも言ってました…守るって……アキラ君との日常をワタシが守りたいって………最後までアキラ君の名前を呼んで………絶対に守るんだって……それなのに……本当にごめんなさい…」




「シア!シア!……頼むよ…起きてくれよ……おれこれからどうすればいんだよ………シアがいない日常なんて……どうやって生きればいんだよ……いつもみたいに笑ってくれよ…シア……………シア…」




───────



────



──



道具屋の扉が優しい呼び鈴を鳴らしながら開かれる。


「…ん!?…?……いらっしゃいませー」


「店長!」


「あっ!リオさんお久しぶりです。新聞読みましたよ。凄いですね」


「ん?店長また涙が…え~と…ハンカチ…ハンカチ…あっ!あった!あの…どうぞ!」


「ははっ。すみません。使わせてもらいますね」


「店長…大丈夫ですか?」


「大丈夫ですよ。昔の夢を少し見てしまって。ははっ。そんな事で涙が出るなんて歳ですかね」


「悲しい夢だったんですか?」


「ん?どうでしょうね。まぁ半分半分ですかね」


「……今日はわたし……帰ったほうがいいですか?」


「いえいえ。そんな事はないですよ。リオさんが来た時の為に美味しいハーブティーがあるんですけど……………一緒に飲みませんか?」



「はい。一緒に飲みます!」



「…ありがとうございます。助かります…」





本気になった恋愛ほど上手くいかないですよね~、、、なんでだろ?


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いや~今日も平和だ、、、

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