表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部二章「百合葉の美少女落とし」
90/493

第07話「好きな人の話」

 窓の外はずいぶん暗く。しかし僕らはわいわい明るく。しんと静まり返った廊下を話も足も弾ませて歩いていた。



「蘭たんミスったから罰ゲームね! さっきのはいけないぞよー?」



「ほう。私がいつ、ミスをした?」



 仄香に言われとぼけるように首をかしげる蘭子。



「だって、あのとき机ぶつかんなかったら最後までいけたじゃーん! ほんまヤキ入れたろかー?」



さばきの……鉄槌てっつい……」



「いや二人とも怖いよ……」



 仄香と譲羽の、ただならない言葉に苦笑いの僕。蘭子は少し逡巡して、



「そうだな」



 短く返す。



 それを肯定と受け取ったのか、「うっしっしー」と仄香が怪しく笑い、譲羽もニタァっと笑みを浮かべる。流石に暴力ではないと思うけど。



 何が出てくるかな――と考えていれば、



「蘭たんは好きな人居ないのぉー?」



 などと、やはりそんな具合であった。しかし、その内容に僕は少しドキリとさせられてしまう。ポッキィゲーム後の流れとしては当たり前のようで、僕にとっては導火線に火が付きそうな爆弾だ。



「好きな人……か」



 蘭子は笑うように嘆息し、わざとらしい流し目で僕らを見やる。切れ長の瞳が際立きわだってさまになっているのがまた可愛いもの。



「当然、居るぞ?」



「おっ……? 来ましたなー! ドコのダレ!」



「ゴマ……ダレッ」



「何がゴマなの……」



 不安ながらもやれやれと譲羽にツッコむ僕だが、蘭子は気にするそぶりはなく。またもフッと鼻を鳴らす。



「みんなの横に居るじゃないか」



「えっ?」



 僕と咲姫の声が被る。



 ま、まさか……っ。



 ここで言っちゃうの……!?



 駄目だ! 君が言うと冗談では済ませないっ!!!



 その答えが違っていてくれというはやる気持ちに相反あいはんして、「そう」と、ことを繰り出す彼女の口の動きがゆっくりに見えて――――。





「私だ」



 ガクッと肩を落とし安堵あんどする。咲姫もまた、この流れに思うところがあったようで、静かにひと息をいた。



「なんだぁー、ただのナルシストかよぉー」



「ナルシストで何が悪い? 君は自分が好きじゃないのか」



「ま、好きだけどねー。かわいくてサイコーよっ!」



 まさか仄香まで ナルシスト宣言である。でも確かに、これだけ美少女が揃っているんだから、誰もがナルシストではないというのも変な話かもしれない。



「さっきーとか、超ナルシズムっぽいし好きな人居そぉーだよねー!」



 そこで話の矛先が向いた咲姫は、先ほどの見えぬ焦りは捨て去ったようで、のんびり「そうねぇ」と思い巡らせる。ナルシストは否定しないんだね……。



「わたしはねぇ~。やっぱり王子さまな人かなぁ~? かっこよくて頼りになってぇ~、それでときどきカワイイのぉっ!」



「カワイイ……ノ?」



 ニヤニヤしながら疑問に思う譲羽。レズを疑っているのだろう。百合厨として正しい反応だ。



「おおうっ!? それはまるでゆりはすのコトではないかぁーッ!?」



 案の定、次は僕の名が上がってしまった。ちょっとどぎまぎしながら「そ、そうかな……?」なんて。



「う~ん、頼りになるかどうかは怪しいかなぁ」



「そ、そうだよね……」



 がっくり心の中でうなだれる。確かに、僕はまだまだ余裕が無くて頼りないからなぁ。ちょっと傷つくけど、頼りになるイケメン女子というのは僕の目指す先であるから、その感想は深く心に刻んでおく。



「でも、最近ちょっと迷ったりねぇ。顔が良ければ、わたしがとことん甘やかして良いくらいかもぉ?」



「ヒモ製造機だーっ!」



「ダメ……ニンゲン……ッ」



「へ、へぇ」



 仄香と譲羽にツッコまれる始末であった。咲姫はどんな未来予想図をえがいているのか、足をスキップ気味に跳ねさせながら声を上擦うわずらせていたり。う~ん可愛い。



 でも、咲姫ちゃんに甘やかされる自分……というは、ちょっと違うかなと思った。やっぱり、こちらから尽くしたいモノ。返ってくるとすれば、最重量の愛があれば……って、これは考え方が咲姫と一緒で、下手したらヒモ製造機か。聞こえが悪かっただけで。



「好きな人が堕落しても良いのか?」



 そこに冷たく水を差すように、真面目な蘭子の一言。



「別にいいんじゃない?」



 しかし、おくすることなく、咲姫は微笑みを突き返す。



「どんなに間違っても、そこにホンモノの愛があれば……ねぇ?」



「ほぉーっ! 深いのう!」



「キモチ、わかる……カモ」



 そんなきっぱりと言い放った咲姫の考えを、仄香が褒め、譲羽もうんうんと頷く。



「好きな人と居られるなら……常闇とこやみのような地獄をう天明も……受け入レル」



「あーそれ言えてるかもねー。もしハンザイシャ相手でも、好きになったら分からんもんねー」



 と仄香も支持する模様。



「間違っていると自覚するのなら、それは否定し改善すべきことだと思うがな」



 だが、首を傾げた蘭子が、解せぬという面持ちで自分の中の正論を告げる。



「蘭ちゃんがそう思うならそれで良いんじゃない? 人それぞれよぉ~」



「む……確かにそうだが……」



 やはり納得は言っていな様子で。彼女は何か言いたげに口を開こうとするが、その言葉を飲み込みまた黙る。



 そんな口ごもっている間にも仄香の見開いた視線が僕の方へ。



「ゆーちゃんは? さっきから静かじゃん! なんかあるでしょー?」



 おっと。つい考え込んで黙っていたのがバレてしまった。思索に耽ると口数が減ってしまうのだ。僕の悪い癖。



「なに? 僕も言わないといけない感じなの?」



「みんなも話したんだから、そのくらいはねーっ! 愛の形ってやつをさぁ!」



「難しくないっ?」



 苦笑いしながら。しかし、仄香は折れないようで、



「やっぱ、考え方それぞれだしさー。どんなのか知りたいんだよー。好きなタイプとかでもさぁ!」



 さらに話は、より焦点を絞る"好きなタイプ"に戻ってしまった。この流れはいけないな……。



 そこで、妙な助け船……というかペリー来航レベルで新たな展開への幕開けをしそうな蘭子が口を挟む。



「百合葉が好きなタイプか……。当てて見せよう。黒髪ストレートロングで、切れ長の大きな目。高くて筋の通った鼻に、整ったフェイスライン……。おやっ……? 私の事じゃないか」



「自作自演ってか、茶番ってか……。自惚れにも程があるでしょ……」



「んっ……? 私が美人だって言う話をしていたんじゃあ無いのか?」



「そんな話はしてませんっ」



 まあ認めるけどね。そんな無理やりに自分の魅力をアピールしたがるナルシスト蘭子ちゃんホント可愛い。



 だがまだ強引に続けるのか、ワザとらしくフッと笑う彼女。



「ああ、分かる分かる。分かるぞ? 如何いかにして百合葉にセクハラをするかっていう話だろう?」



 そう言ったかと思えば、やがて背後に手が伸びてきて、お尻をポンポンっと触られる。



「無理やりセクハラの流れにするなっ! 馬鹿っ!」



 ナルシストな上にセクハラキャラまで追加されて……恐ろし子である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ