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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部二章「百合葉の美少女落とし」
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第05話「王様ゲーム」

 心身ともに落ち着けてトイレから戻ってきた僕は、部室のドアを開ける手前、ふと手が止まる。



 何かが起こる予感……。



 先週といい今日といい、百合百合な事件の連続だから、そう思うだけかもしれないけれど……。直感がそう告げているのだ。わりと無視できないことかもしれない。



 もしさっきの続きで、生々しい話を続けられるなら堪ったもんじゃないなぁ……。そうだよ。あれは百合なんて綺麗で生優しいものじゃない。ただの変態、クソレズだ。



 まあ、みんなの好意をコントロールしようとする僕もクソレズなんだけどねっ。



 不安をいだきつつ、話し声そこそこに盛り上がっている様子の部室の前で一つ息を付いて。取っ手に手をかける。



「おかえりやさいっ!」



「……ただいまやさい?」



「略しておやさい!」



「意味が分からないよ?」



 ガラッと扉を開けた僕に早速よく分からないノリの仄香。彼女は間を空けることなく、手元に握った割り箸を見せつけ口を開く。



「へいゆーゆーちゃんっ! おーさまゲームしよぉーよ!」



「王様ゲーム?」



「せやで! 権力者争いだぜ!」



「キングオブ……ゲーム……」



 なんて手を挙げハイテンション。さっきのセクハラなんてすっかり忘れてしまったのだろうか? いや、僕はそれでいいのだけれど、彼女はいつも唐突なので脳の処理が追い付かなかったり。ところでゆずりん。『キングオブゲーム』じゃあ『ゲームの王様』になっちゃうよ?



 彼女が口にしたのは……"王様ゲーム"といえばあれだ。なんか……引いて……、王様が命令するやつだ……。記憶が曖昧あいまい模糊模糊もこもこだった。



「もう番号ふってあるから、やっちゃおうぜぇー?」



「準備出来てるの?」



「おういえっ! 完璧だぜ!」



 見れば机の上はだいたい片付いていて、新たに継ぎ足されたお茶と、そしてポテチやらポッキィやら広げられていた……仄香の前にだけグミの袋があるのは本人専用感がヒシヒシと伝わってくるので触れないでおこう。



「王様ゲームなんて、漫画でしか見たこと無いから楽しみぃ~」



「やったことは無いな」



 なんて、咲姫と蘭子も表情が曇ることはなく、やる気はあるみたい。うん。本当は美少女一人一人の攻略に一手打ちたかったけど、みんなとワイワイやるのも悪くないかもしれない。



※ ※ ※



「王様だーれだっ!」



 握っていた割り箸を仄香の声に合わせて、皆が一本ずつつまみとる。番号……は振られておらず、緑色が先に塗られているだけだった。



 それが何かの間違いじゃないよなと、まじまじと仄香をいぶかしげに見つめる。



「……で、どれが王様なの?」



「へっ? 赤に決まってるじゃん!」



「それ、仄香が持ってるからじゃないの……?」



 僕が言うと隠すこともなく、手元に残った割り箸を見せつけてくる仄香。



「赤といえばリーダーの色! つまりはおーさまは赤に決まってるじゃん!」



「それ、引く前に宣言しようねっ? ずるいとしか思えないよ……」



 確かに王様は赤いマントのイメージだけれども。



「となると。オレンジ、緑、青、紫の順で一から四なのか?」



「そうやでっ! 蘭たん賢い!」



「まあな」



「『まあな』じゃないよ……」



 でも色鉛筆の並べ順みたいでやっぱり気持ちは分かるんだなぁ。ピンクや紫の立ち位置によく困っていたりね。



「早く……始メル……」



 そこに机をバシバシ叩いて急かす譲羽。こちらも思いのほか楽しみなようだ。



「そんなら仄香でいいよもう……命令しなよ」



「最初だしな」



「お試しってことねぇ~」



「んよっし! 一番手だぁー」



 仄香は咲姫と蘭子の了承を受け止めると、命令を考えているのか黙り目を閉じて、間もなくそのまぶたをカッと開く。



「それならこの仄香様が愚民どもに命令を下してやるわっ! 奴隷番号二番とーッ!?」



「それ女王様だしなんか違う!」



「へへっ! ゆーちゃん、良いツッコミだ……ぜっ!」



「あ、ありがとう……」



 サムズアップする彼女。地面を鞭打つジェスチャーまでするもんだから、ツッコまずにはいられなかったのだ。



 だが、そこに蘭子が手を挙げ意見を申す。



「番号じゃなくて色で命令した方がよくないか?」



「あっ……。なんてこった、気付かなかったぜ……」



「早く気付こうね?」



 ワザとボケたり本気でボケたり、忙しい娘である。



「そんなら仕切り直していっくぞー? ピンクが黒にぃー?」



「ピンクも黒もありませんっ!」



「ジョーダンだよジョーダン。あたしをなめてもらっちゃあ困るぜ?」



「いや前例が多すぎるんだけど。アホノカちゃんだし……」



「んんんーっ!? このあたしをアホと申すかぁっ!」



 僕がボソッと言った言葉に過剰に反応し「むきーっ」と怒る仄香。いつも聞き流してるくせになんでこういうときばっか聞き取れるんだか……。しかしその横で。



「ハヤク……っ!」



 唇を尖らせゆずりんが膨れているのであった。そんなにゲームが楽しみだなんて、流石は我らがマスコットかわゆずりん。



「せっかく引いたんだから、早く始めた方が良いわよねぇ」



「おう……ゆじゅりんに怒られちまったしなぁ……」



 宥めることなくバッサリと告げる咲姫の言葉にも反省したのか、仄香はシュンとしょげる。しかし、またキリッとした表情に。



「ではいくぞよー? 命令はー……」



 そこで大きくためて。僕の顔を見てニヤッとしたかと思えば……?



「緑の人が王様にキッス!」

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