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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部二章「百合葉の美少女落とし」
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《二章》第01話「薔薇の君VS白銀のプリンセス」

 百合ハーレム作りに対して意識を新たにした僕は、いつも通り教室の後ろからドアを開けて入る。クラスメイトから「おはよう」やら「ごきげんよう」やら挨拶を返しつつ、軽く雑談。とりあえず打ち解けているのかなと一安心。



 窓から覗く景色は今日も空模様のパッとしない、鬱々とぼんやり具合だった。雨が降りそうなわけでもなく、雲の切れ目に晴れ間が微かに見えるだけ。ここのところ、台風でも近づいているかのように微妙な天気が続いている。雨こそそんなに降らないけれど、そろそろ大きいのが一つ来そうなものだ。



 さて。百合ハーレムの次なる課題は個人の繋がりの深さだ――と。それなら今日は美少女たちと何が出来るか考えながら、机の横に鞄を掛ける。今日も放課後の行く先は部室になりそう。



 立ったままクラス内を見渡すも珍しく咲姫も蘭子も見当たらない。僕がいつもより早く着いたせいかな。



 そこで、僕に気づいたのか、「おはようよう!」と近付いてくる仄香と譲羽。いつも通りのペアだ。この二人も早めの登校みたい。



 と、思っていれば……。



「はいっ! 春は朝のパンツめくりっ!」



「馬鹿っ! やめなさい!」



 僕は急いでスカートを押さえてパンツめくりを阻止する。今日の僕は下にハーフパンツを穿いているから大丈夫なんだけどね……。それにしたって、朝からなんてセクハラ娘なのだ……。



 ってか、春以外だとどうなのだろう。たぶんなんにも考えていない発言だと思うけど、他にもセクハラが用意されていたらちょっと怖いもの。



「うー、ハーフパンツかぁ……。朝はゆりはすおパンツを拝まないと運気が上昇しないんだけどなぁ。残念だなぁ」



「そんな運気なら上昇せんでいいわ……。今日は外は寒いからね」



「ねー。暖房は要らないにしてもねー」



「膝掛け……必須……」



 なんてセクハラは差し置いて四方山話よもやまばなし。よもやまってなんかかわいいよね。



 そんな、三人で残念に窓の外を眺めていると。



 後ろに何か気配を感じたと思えば……突然、胸元のブレザーとカーディガンの中へ伸びてきた手。



 疑問を覚える――あいだ、にも……っ。



 むにっと……!?



「――ッ!? 痴漢ッ!!!」



 びっくりしてその手を掴もうとすれば、予測済みといわんばかりに避け引いていく痴漢の手。顔をひきつらせながらその犯人を見てやろうと振り向く。



「やあ百合葉、良い朝だな」



「全然よくないよ!? アンタも朝っぱらからセクハラしちゃうようになったのっ!? 天気だって思いっきり曇ってるよっ!」



「私は百合葉に会えるだけで心晴れやかになるからな。実質快晴だ」



「知らんがッ!」



 セクハラしといて爽やかに何だというのか。自分に酔いしれるように、ファサッと横髪を払う。昨日とは打って変わって妙に全開。しかし、その優雅さとは裏腹に、胸を揉むのが雑でちょっと痛かったり。なるほど、仄香は意外とベテランだったのかぁ……いや、やめて欲しいんだけどさ。



 んんー。もしかしてこれが彼女の言っていた"本気"? お馬鹿にしか見えないんだけど、お馬鹿なキザナルシストイケメン女子とか可愛すぎでしかない。



 とはいえ、こう毎朝セクハラされるのは堪ったもんじゃないなぁ。僕の胸は鶏肉みたいに安売りしないよ? 国産のプリチーなむねにくだよ?



 そんな僕らを見ていた仄香。怪しく笑いながら距離を詰めてくる。



「へっ……。セクハラはあたしの専用特許せんようとっきょだと思っていたのに、ライバルが現れちまったようだな……」



「"専売特許せんばいとっきょ"ね。てかアンタ専用じゃないし」



 僕にとっては敵が増えただけなんだけど。



「さぁさぁ、蘭たんに朝のお乳を搾らせたんだからー、あたしにもヤらせなさいっ!」



「僕は牛なの!?」



「君は散々揉んできただろう。もう、このおっぱいは私の物だ」



「んんーっ!? ウチが先に揉んだんですー。ウチのものですー。所有権ですー」



「ならば強引にでも放棄させなければな」



「おー、やるかー?」



「どっちのモノでも無いわっ!」



 なんて、この二人はバチバチ火花を散らしている――ように見えて実は楽しんでいるみたい? 仲違いの心配は不要かも。いや僕の貞操が不安だよ……。



 後ろから「渡さない」と抱き寄せる蘭子。横から「よこせぇーっ」と引きはがそうとする仄香。この間にも蘭子はちゃっかり僕の胸を揉んでいるのだから、油断ならないものである。力が強すぎて払いのけられないし。痴漢と何も変わんないよ……。美少女だから許しちゃうんだけどさ……。



 そんな風に、ドタバタ教室左後ろで騒いでいたところ。教室前方のドアを開けて、爽やかに銀色の風を纏った咲姫が現れた。歩きながら、ニッコリといつものプリンセススマイル。ポニーテールをゆらゆらと揺らす。



「ごきげんよぉ~う、蘭ちゃん? まだ夜には早いけれど。おさかんなオオカミさんは駆除が必要かしら」



「ごきげんよう咲姫。見ての通り、陽光ようこうあふれる晴れやかな朝だが。チワワはリードにつながれて散歩でもしたらどうだ?」



「ん~? わたしにとっては薄ら寒い朝かなぁ。北国育ちで感覚が鈍ってるんじゃないの? シベリアに帰ったらぁ?」



「ほう。こんな魅力的な美女二人を前にして、心が温まるの間違いじゃないのか? この情熱的な熱で火傷しない程度に暖を取っているんだな」



「片方は心が猛吹雪だと思うんだけれどぉ~? さむぅ~いっ」



「んっ?」



「うふふ~」



「……」



 昨日の今日とは言え、なんでこの子らは朝から噛み付いてるの? 寒いどころか強火で焼き付いちゃうよ? 僕は背筋が寒いよ?



「おおーッと!? ついに、このクラスの二大巨頭! "薔薇の君"VS(バーサス)"白銀のプリンセス"がっ! 今ここに戦いの火蓋ひぶたを切ったのかぁーっ!!!」



 そこに空気を読んでか読まずか、相変わらず楽しさ重視の仄香であった。しかし、テンションを上げる彼女と違って、流石に笑う二人の顔が敵意向きだしなのには感づく。僕がドロドロ修羅場で煮込まれる前に、抜け出さないと。



 と思っていれば、スッと現れたマイフェアリー譲羽ちゃん。良かった。君のマスコットパワーでこの戦火を納めてくれ……。



 お互いに牽制けんせいし、今にも飛び散りそうな視線の花火を向けあう二人の間に、譲羽は恐れることなく割って入り、そして彼女は僕の前に。見上げるゆずりん。



「どうしたのユズ。ま、まさか僕の胸を揉みたいとか言わないよね……?」



「それもあるけど……」



 そこで一度言葉を区切る彼女。それもあるのか……。



「愛でるなら……アタシに……シテッ」



 この子もこの子であった。

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