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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部一章「百合葉の美少女集め」
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第75話「再試験勉強の続き」

「さてっ。出るところはだいたい分かったでしょ」



「おういえっ! ばっちりだぜ!」



「ありが……とぅー」



 昼休みが終わるギリギリになって。ようやく二人の課題テキストを閉じることができ、ひと安心。再試験で出る範囲で何が苦手なのか。どう勉強すれば良いのか予測を立てながら教える形を取ったので、一人でも勉強できそうだ。彼女のテキストは僕と咲姫と蘭子が手分けして書き込んだポイントメモでいっぱいだ。



「こんなにいっぺんに教えてもらってなんだけどさー。放課後でも良かったかもねー」



「ちょっと、教えてもらっといてその態度はないでしょ?」



 おちゃらけるようにツンと小突く。そんな仄香はやはりツッコミ待ちだったようでニシシッと笑う。



「今日は用事があるから、私はすぐに帰るが」



「わたしもぉ~」



「ほら。僕ひとりじゃあ二人を見切れないよ」



「そっかー残念っ」



 だなんて。大して残念そうな素振りを見せない仄香。終わったからって安心してるのかなぁと思うけれど。まだ油断はしないで欲しい。



「どちらにせよ、早めに終わって良かったじゃないか。善は急げと言うし」



「それっ! 有言実行ってやつよ!」



「ちょっと違うかなぁ」



「あれー」



 この調子じゃあすごく心配になるなぁ……。



「はいはいとにかく。分からないところは全部教えたし、今日は早く帰って勉強しなよ?」



「へーへー」



「……宿敵、テスト、滅スル……」



 どうも殺気立っているゆずりん。今は暗殺系の中二病なのだろうか。中二病なのは分かっているけれど、実を言うとあまり統一されたキャラが分からない子だったり。



 そうして放課後。咲姫と蘭子が早々と帰ってしまって、部室には仄香と譲羽が。何故かというと……。



「やっぱり勉強してるか見ててー」



「再試験勉強の……続キ」



 という事になってしまうのだった。



「何より、帰って仄香ちゃんと二人で勉強するの……不安……」



「うっ……。でも、それなんよなー。あたしら二人だと、すーぐ遊んじゃうから。勉強の監督役? して欲しいのよー」



「監督というより監視だね……。まあいいよ」



 「ほらほら早く」と僕が急かして、彼女らをさっさと勉強モードに切り替えられるようにする。二人とも、問題集を出して取り組みだしたから、僕は読書でもするかななんて、本を出して朝の続きを読み出そうとしたら……。



「あっ、エロ本だ」



「だーからっ。違うっての」



「エロ……本? 百合葉ちゃんもついに俗物に穢されたノ……ッ!? 悲しい……」



「ほらぁ! ユズにまで変な印象与えたー! やめてよねそういう言い方!」



 もう名誉毀損ってやつである。っていうか、百合漫画収集に勤しむゆずりんはエッチな百合本買ってたような?



「へへー。ごめんごめん。なんか条件反射でさー」



「全くもうっ。これは普通の小説だからっ。ほらほら早く、二人とも勉強しなさいっ」



「あーい」



「分カッタ……」



※ ※ ※



 意外にもあんまりサボらずに、問題集を繰り返し解く二人を合間合間で見て、ようやく僕が小説を読み終えたころ。本を机に置いて背伸びしていると、丁度二人も飽きてきた頃合いなのか、僕をジーッと見ていた。



「勉強……しないの?」



「いやぁ、さっきまで頑張ってたんだけどさー。ちょっと飽きてきてー」



「試験は明日なんだから……。勉強に飽きたからってやめるものじゃないよ……」



 呆れる僕。しかし、不満でもあるのか、譲羽は眠たそうに目をこすりうめく。



「もう、遅い時間……。帰ル……」



「あ、それもそうだね」



 確かに、窓の外に目をやれば、だいぶ暗くなっていた。そりゃあそうだよなぁ。小説の半分を読み切ったんだもの。時間を確認していなかったとはいえ、二時間弱はかかっただろう。彼女ら二人も、充分に頑張ったといえる。



「二時間もよく頑張ったね。さあ、帰ろっか」



 僕は少しでも彼女らをねぎらいたくて、二人の頭をなでなでする。



「オーケーオーケー!」



「うん……っ」



 ああ、流石は妹属性たち……。レズっぽいのが妙なモノだけど、なんだかんだ可愛がりたい子たちだなぁ。



「明日の午後のっ、昼休み! テステステイスティ~テスタロッサ! さあさあ飛ばすぜテスタロ太郎!」



「なんだって? テステス……テス太郎?」



「今に見てろぉテストテストテストテストテストォーッ!」



「ごめん、うるさいわ……」



 やっぱりノリだけで生きている娘だった。変に真面目な性格だからツッコんでしまいそうになるけど、彼女には自由に生きてもらった方が楽しいのかもしれない。



「それじゃあ百合葉ちゃん……。アタシたちこっちだから」



「しばしのお別れぞよ……」



「明日会えるからね? でも、体に気を付けて勉強するんだよ?」



「だいじょーぶだいじょーぶっ! 明日の朝から勉強すれば問題なしっ!」



「早起きして……ヤル!」



「それは寝坊しちゃうフラグだよ……」



「フラグフラッグ発生条件! そんな伏線へし折ってやるぜ!」



「早起きは……得意……」



「そっかぁ。頑張ってね」



 また返しがババ臭くて堅苦しかったかなぁと思っていればこの返し。僕はこの子らと居ると変に気を遣わなくていいから、思っている以上に彼女らが好きかもしれない。



 そうして、僕らは別々の方角に足を向ける。



「それじゃあね。また明日」



「おういえっ! サラダバー!」



「サラバ、ダー」



「ふふっ、さらばだー」



 楽しい子たちだなぁ。



 なんて、一人浮かれるように歩き出したとき、忘れていたことをハッと思い出す。



「小説、部室に忘れちゃったなぁ」



 全く、真面目な性格だと思った瞬間に抜けているものである。まあ、明日もあるし。もし明日取り忘れたって、読み切ったものだから。そのうち回収すればいっかぁ。



 そう気楽に考えて、僕は石ころ蹴っ飛ばしながら帰路についた。

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