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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部一章「百合葉の美少女集め」
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第06話「奇行美少女」

 えっ、なにこの子…………。



 突然の声掛けに目を見合わせ、戸惑う僕と咲姫さき。太陽に透かしたハチミツ色の明るい茶髪に、後ろ髪の短さが相まって活発な印象だ。



 フレッシュシトラスの香りをまとっていて、しかし、それらのイメージを、ぴょいと軽く飛び越しちゃう勢いのハイテンションっぷり。無垢をすっとばしてアホにしか見えない元気っ子活発女子だ。



 決して小さ過ぎるわけではない身長の割に、全身が無駄なくスラッとしていて、しかも小顔のおめめパッチリなものだから、 読者モデルにでも居そうなほどの可愛さ。動物ならばチワワに例えられそう。



 でも初対面でこれとか頭がおかしそうだなぁ……と思うわけがないよねっ! 実にウェルカム奇行美少女! 僕たちだって登校早々に騒いでたからさ……仲間仲間っ!



 とは思いつつ、唐突すぎて二人とも会話のドッジボール――もといキャッチボールが返せないなと思っていると、



「オーウ、日本語通じてマスカ?」



「ごめん、通じてはいるよ」



 ラップ調だと思えば次は外人風? 実に変なノリの美少女だ。こういう変な子は大好きだよねっ。



「あ、自己紹介が先だったね! あたしの! 名前はッ!」



 そう言ってポケットからマジックペンを取り出す彼女。……えっ、手になんか書き始めたよこの子……っ。



「えーっと、保体委員の火野ひのさんだよね?」



「そうっです、けど! フライングネタばらししないで! ちょい待ちぃ!」



 火野さんのオーバーテンションについて行けずポカンとする僕ら。そうして「出来たっ」と、彼女は両手のひらをバッとこちらに向けてくる。



「"香仄かほの"……?」



「のーのー! あいあむ火野ひの仄香ほのか! バーニングファイヤーほのかっ! なんで逆に……って、あーッ!」



 そう。書いた本人がくるりと手のひらを回転させてしまったがために、文字が順序逆さまになっているのだ。ワザワザ手に書いた事も重ねて、アホの子で間違い無さそう。うん、かわいいね。



 そして手のひらをこちらに向けたまま、両腕をクロスさせ正しい字順に……んんんっ? 絵面が余計にスーパーアホの子で可愛いぞ?



「失礼っ! ほのかって呼んでねぃっ!」



 そしてチョキを閉じた二本指ポーズをくるっと回し、パチッと星が出そうな勢いのウィンクする。頭のネジぶっとんでるなぁ……関わらないでおこう……。



 というのは問屋が卸してもなんちゃら。美少女大好きな僕が許す筈がないのは明白中の明白なのだっ! 自ら寄ってくれるとは……飛んで火にいる夏の虫かなっ!?



「仄香って言うんだ、良い名前だね。藤崎ふじさき百合葉ゆりはだよ、よろしく。こっちは花園はなぞの咲姫さき



 テンションを戻し、僕は普通に挨拶。脳内のテンションで話したら僕まで変人になる……。美少女以外の変人はお断りだ。



 僕が言うと、いつの間にか隠れ様子を見ていた咲姫が、ニュッと僕の影から顔を出す。僕の右肩に両手を添えてくれてこちらも可愛い。いい香り。



「よ、よろしくぅ~ほのちゃん」



 早速愛称呼び。でもでもところで姫様、顔が引きつってますよ?



「おういえっ、"ゆーちゃん"に"さっきー"ねっ! よろしきゅう!」



 そんなことはいざ知らず、早速呼び方を決める彼女。うーん、コミュ力高いなー。



「ゆーちゃんもさっきーも、なんか小奇麗で美形って感じだね? もしかして貴族?」



「いやいや貴族って。むしろ二人とも外部入学生だよ?」



 というか、僕も小綺麗に見えるんだ……。良かったぁ、身だしなみ研究してから入学して~。



 なんて思っていたら……。



「お、お姫様だなんてそんなぁ~っ」



「咲姫?」



 そんなことは言ってなかったけど?



 対して「ほぉー!」と仄香。



「それだっ! さっきーはお姫様だっ!」



「うへへぇ~。わたしお姫様~っ」



 まんざらどころの話ではない、自己陶酔まっしぐらで、自身の両頬を手で包み、クネクネとしだすプリンセス咲姫様。無駄に可愛いからやめてほしい。凝視し過ぎて乱視になっちゃう――ああマズい、酔って来た……咲姫ちゃんの可愛さにねっ!



「なんかあんたら面白いわー。あたしもテンションマッチングだぜ? 上がっちまうぜっ?」



 言って、彼女は僕ら二人の手を握り持ち上げる。



「うちらの友情は永遠だぁー!」



「えっ、早すぎない!」



「早すぎたかー」



「せっかちねぇ」



「せっかちかー」



 交互のツッコミに対し仄香はアホっぽく口を開けて語尾を伸ばす。なんだよこの子……可愛すぎだよ……。



「まあどうせ仲良くなるんだから、そんな大差ないってー! 十中八九ってやつー?」



「……もしかして、五十歩百歩って言おうとしてる?」



「そうそれよ! そんなたかだか二倍になったくらいで変わんないってー!」



「それは変わりあるんじゃない?」



 呆れて物も言えなくなりそうだけど、可愛いので良しとする。



 しかしそんな彼女にいつまでも萌えている場合ではなく、強引なテンションを打開するため話を戻す事にする。



「とりあえず、僕らと勉強するんだっけ?」



 そう言うとカッと目を見開く仄香。



「えーっ! 何なにー! 自分のこと"僕"っていうのーッ!? ヤバイヤバーイ初めてみた! 実は女装男子なの!?」



 なんでそこツッコまれるの……。中学の時にも居たよね? 一人称が"ボク"とか"オレ"の女子。もしかして女子特有の排他主義に駆逐されちゃった? もしかして僕は絶滅危惧種? なんだ、希少価値じゃん。個性個性っ!



「僕は男じゃないよ、よく間違われるけど」



 男装ならいざ知らず、女装して女子校入学とか変態じゃ……男じゃないよッ!



「まあそのおっぱいを隠しちゃったら分からないかもねー」



 そう言いつつ両手をワキワキさせた仄香は……?



「あっ、馬鹿っ! 何やってんのッ!?」



「あーこれは偽乳にせちちじゃ無いですわー。女の子認定しましたっ!」



「やめな……さいッ!」



 ブレザーの間に手を差し入れ、むにむにぐいぐいと僕の胸を揉む彼女。手首を掴んで振り払おうとする。



「ひえ~っ! 両手掴まれちゃったー! 痴漢だぁーッ!」



「どっちがっ!? ねぇどっちがなの!?」



 正当防衛が冤罪になるなんてっ! ひどいっ! これが痴漢のでっち上げってやつかぁっ!



「全くもう、仕返しに揉み返してあげようかっ……?」



 彼女の腕を払い終えてそう言うと、それきたかと言わんばかりに唇をむふふと尖らせて、彼女は一歩前へ。



「いいぞよー? じゃんと来んしゃいっ!」



 ばーんと胸を張る仄香ちゃん。しかし、ブレザーの上からとは言え、そこに膨らみなど微塵も感じられず……。



「なんか……ごめん……」



「なっ……謝んないで! あたしが哀れに見えるじゃーんっ!」



「だって……無い胸を無理に張らせちゃって……ごめんね」



「くっ……揉んだのはこっちなのに、敗北した気分だぜ……」



 床に手を付き落ち込む仄香ちゃんであった。そんな中、羨ましそうに指先をくわえ見つめるお姫様。



「ど、どうしたの? 咲姫……」



「わたしも百合ちゃんのお胸を揉んでい~い?」



「駄目だよっ!」



 うわっ、セクハラ菌が伝染したよ……。辛いなぁ。



 ともあれ。一呼吸置いて、僕は乱れた衣服を整える。



「出会って早々セクハラとか何考えてんの……」



「でも嫌じゃないでしょ?」



「普通に嫌だよ」



「この子ならイケそうだなーって思ったんだー」



「どこのナンパ男だよ」



「もうこれは付き合うしかっ!」



「だからナンパ男かよ」



「ぐへへっ、オネーチャン何色のパンツ――」



「次は痴漢男かよッ!」



 はぁ~っと、あからさまにうんざりした溜め息をつく――と重ねるように仄香もハァーッと満足そうに一息。



「いやぁ~気が合いますなぁ」



「こっちは気が滅入ってるよ……」



 まあニッコニコの彼女にやれやれとは思いつつ、僕もノリツッコミだからなぁ。許されているように見えるけれど、普通の女子ならドン引きである。



 そう思っていると、



「ホント、うちら仲良く出来そうだね! ゆーちゃんっ」



 ……天使が居たんだ。ニカッと白い歯を見せ満面の笑みで呼ばれれば、男で無くてもキュン死する。ズキューンとハートの度肝を射抜かれる。ズキューンってなんだろう。



 ともかく、とんでもなくアホなようでも可愛さなら花丸満点なのだ。ああ素晴らしいかな、ハイテンション美少女。

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